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逆転

ベタな展開を避けようとしたら、

ベタな展開から逃れられませんでした。

でも王道、好きなんです。

さっきよりも顔色が良くなった時雨を見て、

今、俺は安心している。


けど…


あれ……?

さっきまで看病していたのは俺で、

体調が悪かったのは時雨じゃないのか…?


状況が読み込めず、ぼーっと目の前にいる

時雨を眺めていると、時雨の白くて細い手が

こちらに伸びてきた。


「わぁ…やっぱり熱あるよね……。ごめんね。

俺が雨降ってても公園にいたから……。」


時雨の冷たい手が気持ちいい。

でも、助けたはずの時雨に俺が世話をされているのは

なんだか恥ずかしい…。


「時雨……。」

「ん?」

「――なんで……?」


自分の声が想像の3倍酷かった。

が、そんなことは今どうでも良い。

ベッドの傍に座った時雨を見上げる。


「『なんで?』は、こっちの台詞だよ、花火。

起きた時、びっくりしたんだから。

なんか体があついなって思ったら、

びしょ濡れの花火が、熱っぽそうな様子で

俺のお腹の上に倒れてて……。

一瞬、何が起きたのかわからなかった。」


「え……!?俺、寝てたのか…!?!

時雨を枕にして…!!?えぇ……?」

「そうだよ。ぐっすりだった。」

「うわぁ……。」


情けない……!

いくら体力が無いとはいえ、

情けなさすぎるぞ俺…!!!


「ごめん……。」

顔の体温が一気に上昇していくのを感じる。


蚊の鳴く様な声で謝った俺を見て、

時雨は「顔、さらに赤くなっちゃったね」と

言って、くしゃっと笑った。


「今、ちょうど晴れてるから、

近くの薬局にお粥買ってくるよ。

体温計とか解熱剤はある?」


立ち上がって、玄関に向かう時雨の背中を

目で追いかける。


昨日から降り続いていた雨は、

俺が寝ている間に収まっていたみたいだ。


カーテンの隙間から差し込んだ夕日が

ちょうど時雨の横顔を照らしている。


久しぶりに見た時雨の笑顔がとても眩しくて、

俺は時雨の質問に答えるのに、

数秒間の時間が必要だった。

気持ちと体力が追いつかない子って可愛いですよね。

でもそれが自分の身に起こると、可愛いと思えないのは

なんでなのでしょうね…。

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