再会
初投稿、小説初心者です!
何卒よろしくお願いいたします!!
雨除けのために着ているカッパに、大粒の雨が打ちつけられている。
むわっとした空気の中、歩くたびに雨が浸透していく足元が気持ち悪い。
運悪くバイト帰りの道中で壊れたチャリを引きずって、
俺、佐藤花火は大学進学を機に借りたアパートへ帰っているところだ。
朝の天気予報で、そういえば今日は集中的に雨が降る時間があるって言ってたな。
まさか、それが俺の帰る時間とドンピシャとは…。
我ながらついてないなぁ…。
そんなふうに己の不幸を呪っていたが、急に目の前の状況に意識が引っ張られた。
アパートの駐輪場に誰かがうずくまっている。
こんな雨の中で、一体誰が!?
多分、ここの住人じゃないよな。
体格的に男…か…?
重かった足が、一瞬さらに重くなる。
昨今の物騒なニュースが脳裏にちらつく。
少し迷ったが、うずくまっている男に声をかけた。
「あの、、大丈夫ですか?」
バッと効果音が付きそうな勢いで、うずくまっていた男が顔をあげる。
男はここに来る前から雨に降られてしまっていたのだろう。
駐輪場には屋根があるのに、男の髪は濡れていて、額に張り付いた黒髪に
何故だか目が離せなかった。
「花火くん……?」
このまま雨とともに消えてしまいそうな白い肌、髪と同じ真っ黒な目。
シャツから透けて見える体のラインから察する、モデルの様にしなやかな体。
どこをどう見ても、俺にこんな美しい知り合いはいないはずだ。
だが、俺の名前を呼んだ澄んだ声には聞き覚えがあった。
男の声が引き金となって、小学生時代の記憶が俺の頭の中を駆け巡る。
「え…。時雨!?」
そう呼んだ俺の声に、目の前の男は目を一瞬見開いて、
そして当時と変わらない控えめな笑顔を浮かべて頷いた。
「久しぶり。」
さっきまで気にならなかった雨音が、急にうるさく感じた。
でも、中学ぶりに聞いた時雨の声は、そんな雨音に馴染むように、
俺の耳の中に静かに入ってくる。
「えっと……。
とりあえず、俺ん家ここだから……上がってく?」
なんでここにいるの?とか、今なにしてるの?とか、
色々聞きたいことがあったからか、俺は咄嗟に
数年ぶりに再会した同級生を家に誘ってしまった。
今思うと、俺はこの時から時雨に惹かれていた気がする。
時雨がゆっくりと立ち上がる。
俺の視線は足元の位置から、斜め上を見上げる位置まで移動して、
大人しくて、教室の隅で縮こまっている印象だった彼が、
会わないうちに俺の身長を余裕で越していることに気付いた。
時雨も大人になったんだな…と同級生に抱くには少しおかしな感想が浮かんだ。
雨に濡れて不快だったはずの足の感覚が、気にならなくなっていた。
最後まで読んで下さり本当にありがとうございます!!
まずは書ききることが目標です。あたたかく見守っていただけると嬉しいです。