新人オリエンテーション
神隠し、悪魔憑き、オーパーツ・・・
古来より人は、説明のつかない出来事を心霊や妖怪の仕業と見做してきた。
だが、技術が進歩すれば必然的に、それまで説明することができなかったものはありふれた自然現象、化学反応の産物へと姿を変えるものだ。
幽霊の正体見たり枯れ尾花。
諸君、人間は常に未知を恐れる。
だが忘れてはならない。
未知を整理し、解明してきたのもまた、同じ人間であるということを・・・
そしてそれこそが我々《事象記録整理機関》・・・通称ERMAの仕事であると。
「相馬さん、あの人事部長、今年も同じ話してますね。」
毎年新人に実施されるオリエンテーションの会場。
会場の外の通路で隣を歩く五木はそう話しかけてきた。
俺が入社して約10年間で数多の現象が説明出来るまでに科学技術は進歩したというのにあの人の話は一向に進歩していないな、と返しつつ、足早に自らの仕事部屋へと向かう。
「えっ、2年前の入社の時も同じ話でしたけど10年間も変わっていないんですか。職務怠慢じゃないんですか、それ。」
ともかくここまで同じ流れなら、と俺と五木はここ数年間代わり映えのしないオリエンテーション後のことを考える。
例年通りであれば、新人が各部署を回り、どういった仕事をするのかということを見学するのだろう。
そして俺たちが所属する部署の題材は毎年決まって同じもの・・・
「多分、今年もあれだろう。」
「ええ、《牛の首》ですね。」
俺たちは顔を見合わせて互いに苦笑いを浮かべ、《記録整理課》と書かれたプレートを掲げた扉を開けるのだった。




