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第四十五話
旅館に戻ってきて、ぐだぐだやっていると、ふと隼人は小便をしたくなった。便所は一階にしかない。
階段をとんとんと降りて、エントランスロビーに来ると、旅館の若い従業員がなにかが入った紙袋を持ち上げていた。
従業員を六秒程見つめて、背格好や立ち方等を覚える。便所で思い浮かべて、腕の太さ、膝の曲がり方、背中の曲がり方、微細な揺れ幅なんかを見て、だいたいの大きさや重さを考察してみる。
「あの木箱か」
ビーチで見た箱根寄木細工の木箱と大きさに関してはおそらくほぼ同じ。問題は大きさ。木箱というのならば勿論中身がある。中身に関しては不明のX。
「なーんか臭うぜ。プンプンだぜ……」
解決してみっか!
と、隼人は勇んで部屋にもどった。隼人は昨日の晩に舞い上がって「みんなで推理ゲームしたらおもしろくないか!?」と探偵なりきりグッズをたくさん持参していた。そのうちの一つ、虫眼鏡を取り出した。
「俺は名探偵……名探偵すぎて困っちまうくらいに」
さあ、探偵タイムの始まりだ──