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わっちの彼ピは、最強ヴィラン  作者: 紙緋 紅紀
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空手ヤンキー芸人編

またまた、わっちは、あのしょうもない男について、語らなあかんことになってもうた。

ほんま、自分では、どないしたらええか、まるでわからんから、誰でもええから聞いてほしい。

例え、それが人間じゃなく、自宅で育ててるサボテンが、相手やとしても。

なぁ、聞いてや、サボちゃん。

あいつ、あれから、とんでもない事になってん。

あいつて、あの天条のおっさんやで。

あのおっさんな。10年以上、家に引きこもって、小説書きなる為、ただひたすらに小説、書いてたもんやから、慢性的な運動不足で、今は、30mダッシュもできへん身体らしいねん。せやのにな。バラエティ番組に出るたんび、出るたんび、俺は、昔は、スポーツできたアピールがエグいねん。

そしたら、番組としても、当然、それ掘り下げることになるやろ。天条の今の運動能力が、どんなもんか、番組で検証することになってん。

検証の方法は、天条が高校時代、サッカー部に入ってたので、天条率いる芸能界サッカー経験者チーム対サッカー女子日本代表でミニゲームの試合をして、どっちが勝つかで見ようという事になった。

サッカー女子日本代表に勝つぐらいやったら、天条の昔、俺は、すごかったんだぞアピールも一応、番組としては、認めてやろうというそういうテイで、実際は、負けるであろう天条を笑いものにする為に組まれた試合やった。

天条は、でも、その番組の期待を裏切った。

番組サイドが想定していた展開を、全て、ぶち壊した。

元鉄壁のサイドバックでバリバリのディフェンダーだったという天条は、ラフプレーを連発し、現役のサッカー女子日本代表選手ほぼ全員の足を踏んだんや。

たかだかバラエティ番組で現役の日本代表にケガを負わせてしまったのではないかと、現場の空気は、凍りついたらしいけど、現役の女子サッカー選手達は、やられっぱなしで気が済むわけがなく、試合を続行した。

結果を言うてまうと、その試合のスコアは、2ー4で芸能人チームの勝ちやった。しかも、芸能人チームの4得点は、全て、ディフェンダーの天条によるものやった。

天条は、勝利者としてMCにコメントを求められると、普通なら敗北した相手チームを尊重するところで、こう言いよった。

「まぁ、フルコートやったら、ともかく、ミニコートやったら、話になりませんね。女子と男子やから。体格が違う。やっぱ身体が大きい方が有利ですわ。プロとかアマとか関係ない。女子が男子に同じ競技で勝とうやなんて無茶ありまっせ。まぁ、相手が悪かったですね。クイーンが、いくら集まっても、所詮は、キングには、勝てんちゅーことですわ。身の程を知れってカンジ」

この発言でサッカー女子日本代表に火がついた。天条は、ONエア後、国民全員の敵になりよった。

テレビ局が、求めていても、近年、コンプライアンスで手に入らなかったヒール役の誕生やった。

天条率いる芸能人チームとサッカー女子日本代表の対決は、女子の天条に対するリベンジというストーリーが加わり、番組内で数字の取れる人気定期コーナー化した。

その後、天条は、様々な女子アスリートと対決するキャラとして、芸能界での立ち位置を確立しよった。

アンチが圧倒的に多かったけど、どの時代にもヒールには、コアなファン層が付きよる。

天条は、嫌いな芸能人第一位に輝き、好きな芸能人でもトップ10入りした。

そんな感じやさかい、わっちは、どの番組に出ても、天条と顔を合わすことが多なった。

番組によっては、天条がわっちのことを好きと言ってるからと、天条のバーターみたいな扱いで呼ばれることもあった。

そのたんび、わっちと彼ピの関係は、悪化していき、ついにこの間、別れ話を切り出された。

わっちは、別れたくなかったが、別れんといてなんて、すがりつくことなんて、わっちのキャラ的に絶対に無理やから、考える時間がほしいとだけ言って、返事を待ってもらっている。ほぼ別れるの決定や。

彼ピは、交際を続けたかったら、芸能界辞めて、俺の嫁になれとまで言っていて、かなり、本気や。

彼ピとも別れたないし、芸人も辞めたない。

わっちは、頼りになる先輩芸人に相談してみることにした。

「そんなん、マネージャーに言って、天条と同じ現場の仕事、全部、断ってもらえばいいだけじゃん」

と先輩芸人のヤンキー兄弟というコンビの椎馬(しいま)族長(芸名)は、簡単そうに言った。

椎馬さんは、元ヤンキーで頼りになる芸歴3年上の先輩やが、ネタを相方の椰子(やし)総長に全面的に書いてもらってるだけあって、少し頭の足らんところがある。ちなみに、椎馬さんと椰子さんは、兄弟ではない。

「それがそうもいきませんねん。天条のやつ、いろんな番組にしょっちゅう出とるから、あいつと同じ仕事、全部、断ってたら、わっちの仕事が激減してまうんですわ。ブレイク2年目の大事な時期やから、それは、やりとうてもできませんのじゃ」

「んー、ようは、もうテレビで天条にヒロ子のこと、好きと言わせないようにすりゃいいんだろ?そんなん、お前があいつに嫌われるような事すれば、いいだけなんじゃね?」

「それ、もうやりましたわ。あいつ、目の前で、尻かこうが、屁ここうが、ゲップしようが、かわいいねとしか言いませんねん」

「お前にぞっこんLOVEなわけか。他の女、好きになるように、当ててみれば?」

「それも、もうやりましたわ。この間、わっちと天条と今日本明日香でカラオケに行って、わっちより明日香のこと、好きになるように、仕向けたんですけど、あんな若い子と付き合ったら、犯罪者やて、天条の奴、明日香に見向きもしはりませんねん」

「ちょっと待てよ!天条、今日本明日香とカラオケ、行ったの!?」

「はい。行きましたけど?」

「マジで!ふざけんなよ!俺でも握手会でしか会ったことないのに!あいつ、マジでふざけんな!マジ、殺してぇ!絶対、あいつ、今日本明日香とやってんじゃん!ふざけんなよ!」

「ちょっとなんでそうなりますん?天条、明日香のこと、まるで相手しなかったんですよ?」

「そんなん、オメェの知らないところで、やってるに決まってるべ!あいつ、とんでもない変態なんだから!俺なら、カラオケまで行ったら、ぜってー、やってっし!」

「明日香、そんな尻軽ちゃいますて」

「あー、ふざけんなよ!マジで!」

椎馬さんは、その後、ふざけんなよ、マジでを16回以上、言った。

「ヒロ子、俺、今度、たまたま、例のスポーツバラエティで、天条と一緒になんだわ。俺、そこで、あいつ、ボコるわ」

「ちょっとやめてくださいよ。そんなことしたら、椎馬さん、芸能界にいてられなくなりますよ。暴力沙汰なんて、一発アウトですやん」

「ばーか。番組内では、殴らねぇよ。人のいないところ、狙って、ボコるんだよ」

「余計、あきませんやん。悪質性、増してますやん」

「大丈夫だよ。先に上手くアイツの方から、殴らせっから。俺が今まで、正当防衛で何人、病院送りにしたと思う?顔も殴らねぇし。フルコン空手名物、ボディめった打ちを、あいつに喰らわしてやるよ。あいつが泣き入れたところで、もう、お前に関わるなって、約束させっから。つか、芸能界自体、辞めてもらうか。あいつ、調子乗り過ぎだし」

そう笑う椎馬さんを見て、わっちは、不安しかなかった。

後日、わっちもその椎馬さんが、天条をボコると言っていたスポーツバラエティ番組に出ることが決まった。

いつもの天条率いる芸能人チームとサッカー女子日本代表とのミニコートでのフットサル対決で、天条チームが勝ったら、わっちがご褒美として天条にキスすることが、わっちの了承なく、すでに決まっていた。

結局、その収録では、女子日本代表選手達が勝ってくれたから、わっちは、天条にキスせんで済んだけど、もし、してたら、その時点で彼ピとの破局は、間違いなかったやろう。

収録が終わって、手筈通り、椎馬さんが天条を椰子さんとわっちも連れて、飲みに行こうと誘う。

天条は、わっちが参加すると聞き、二つ返事でOKした。

4人でテレビ局の駐車場に向かい、わっちは、心臓がバクバクやった。

事の成り行き次第では、わっちも椎馬さんの共犯と見倣され、芸能界を追放されるんやないかという悪い想像しか働かんくなって、後悔したが、椎馬さんと椰子さんは、天条を連れて、どんどん先を歩いて行くし、もう後戻りは、できそうもなかった。

「あ〜、そういやぁよお、天条よぉ、お前、催眠術が使えるって、ヒロ子から、聞いたぜぇ」

と椎馬さんは、椎馬さんと椰子さんの車の間に入り、四人が監視カメラの死角に入ったところで、天条に言った。

あきらかに絡んでる口調だった。

「今まで、それで何人の女性芸能人とヤッたんだよ?催眠術、使えんなら、やりたい放題だろ」

椎馬さんは、下卑た笑いを天条に向けた。

「神は、そんなことをする人間にギフトは、与えない」

天条は、冷たいともとれるすました顔で答えよった。

「あぁ?神だぁ?ギフトだぁ?」

椎馬さんは、完全にヤンキーモードに入り、顔を歪めた。

天条は、まるで、動揺していない鼻につく表情で、

「俺の持つ催眠術の力は、努力や技術で手に入れられるレベルを完全に越えている。天から授かったギフトととしか言いようがない。それを私利私欲の為に無闇やたらに使うのは、俺の流儀に反する。だから、女を性奴隷にする為に、今まで、この能力を使ったことはないし、これからもそんなことはしない」

と一定のリズムで淡々と言った。

椎馬さんも椎馬さんでヤンキーモードを崩さない。

「そうは、言わずよぉ。俺にも、その能力を使って、女性芸能人と一発やらしてくれよぉ。頼むよぉ、天条ちゃ〜ん。できれば、アイドルがいいなあ。そうだ。今日本明日香とやらしてくれよぉ。お前がヤッた後でいいからよぉ」

「あの、これ、なんの時間ですか?」

椎馬さんが、絡んだまま、一向に車に乗る気配を見せないので、さすがのにぶちんの天条も不審がりはじめた。

どうやら、飲みに行く気などなさそうだ、と――。

「だからよぉ、天条よぉ、俺に女とやりたいだけ、やらせろっつってんだよ!おわかりぃ〜!?」

椎馬さんは、ぐいと天条に顔を近づけ、ギョロ目で威嚇した。

「……だから、そんなことには、能力は使わないと言っている」

天条は、少し小声になった。

それを弱気と受け取った椎馬さんは、

「あぁん!?俺のお願いが聞けねぇってのかよ、おっさん!俺に逆らうと痛い目、見るぞぉ!それでも、いーんか!」

と一気に言葉で攻めたてた。

天条は、無言になる。

「おい、お前が本当に断りたいなら、断っても、いーんだぜ。その場合、誠意を見せてくれなきゃな。俺は、女とやり放題を諦めるから、お前は、ヒロ子のことを諦めろ。それで、お互い、対等。フェアって、ことにしようぜ」

椎馬さんは、舌を出して、笑い、天条の肩に手を置き、パンパンと叩いた。

「ヒロちゃんの事となんの関係が」

と天条が言いかえそうとすると、椎馬さんは、

「俺に逆らうってんなら、俺を殴り倒してみろやぁあ〜!」

と怒鳴りつけた。

天条は、顔が赤くなり、ブルブルと震えだす。

「あかん!椎馬さん!」

刺青の輩三人の時と全く一緒やと、わっちは、感じた。

天条は、

「膝をつけ」

と椎馬さんに命令し、椎馬さんは、かくんと地面にいきなり膝をつき、「あれ?」

と困惑した。

「頭を垂れろ」

と天条が言うと、椎馬さんは、土下座の体勢になり、それ以上、動けなくなった。

それを見て、天条の後ろにいた椰子さんは、天条に襲いかかろうとしたけど、天条は、

「お前は、そこを動くな」

と言って、椰子さんと目さえ合わせず、椰子さんの動きを止めてしまった。

「何をしたんだ?」

土下座をしたままの椎馬さんは、声が震えていた。

「これが俺のギフトだよ」

と天条は、答えた。

「催眠術か?」

「のようなものだよ」

「早く解きやがれ!」

「命令できる立場かな?」

椎馬さんに天条は、余裕満面の笑みを漏らしていた。

勝ち誇っている邪悪な笑みの面構えやった。

「お前、卑怯やぞ。ケンカで催眠術なんて、使うなよ。男として恥ずかしくないんか」

と天条の後ろで襲いかかるモーションで固まっている椰子さんが言う。

天条は、それで笑みを崩すことは、なかった。

むしろ、バカにするように、

「お前らは、スーパーマンに空を飛ぶな。目からビームは出すな。銃で撃たれたら、ちゃんと死ね。と言うのか?」

と言った。

椎馬さんと椰子さんは、現状に頭が追いつかず、返す言葉が出てこないようやった。

自分達は、いったい、何をされているのか?自分達の前にいる男は、何者なのか?

何も催眠術のかけられてないわっちまでも、恐怖が走り、凍りついたように、その場を動くことができず、自由に喋ることすら、できない。

「まぁ、俺は、空は飛べないし、目からビームは出ないし、銃で撃たれたら、ちゃんと死ぬから、スーパーマンより、だいぶフェアな存在と言えるけどね」

そんな言葉でわっちらは、全然、安心などできない。救いのない未来が、ただ茫洋と広がっている気さえ、わっちは、した。

「いつになったら、俺らを元に戻す気だ。催眠野郎」

土下座したまま、そこまで言える椎馬さんを見て、わっちは、チャレンジャーやなと思た。

けど、

「犬になれ」

と天条が言うと、

「わん、わん、わん」

としか言えなくなった。

そんな相方を見て、椰子さんは、

「どないしたら、俺らを解放してくれるんや。なんでも、するから、教えてくれ」

と泣きに入った。

「どないもせんでええですよ。そうやな、……二度と俺に逆らわんと約束してください。約束するだけで、守らんでええですから。リベンジ野郎を踏み潰すのも、楽しいし」

「わかった。二度と逆らわん。マジで二度と逆らわんから、椎馬を早く元に戻してくれ」

「わん、わん、わん」

「椎馬さん、元に戻って、ええですよ」

「はっぁっはっあ、あっあっ、あ、ふっ、普通に喋れる。普通に喋れるぞ」

椎馬さんは、砂漠で何時間かぶりに、水をもらった旅人のような顔をしてはった。

「で、どうしますぅ?椎馬さん、まだ、俺とケンカ、続けますぅ?」

「え?あっ、あの……」

椎馬さんは、しばらく、プライドがせめぎ合っているようやったが、

「すんませんした。二度と逆らわんので、動けるようにしてください」

と勢いのなくなったぼそぼそ声で敗北を受け入れた。

天条が

「よろしい」

と言って、手を叩くと椎馬さん達、ヤンキー兄弟は、動けるようになった。

椎馬さんは、立ち上がり、逆に椰子さんは、力なく座り込んだ。

「じゃあ、ヒロちゃん、飲みに行こうか」

と天条は、何事もなかったようなあっけらかんとした口調で言った。それが余計に不自然で、仕切り直ししきれていなかった。むしろ、その場にいる天条以外の全員が、天条に畏怖を感じた。

こいつは、本当に人間か?人の感情が、わからんのか?

「誰が行くかい!」

とわっちは、なんとか言えたが、今から考えれば、恐ろしいことやった。

天条は、いつでも、その気になれば、催眠術でわっちを無理矢理に従わせる事もできたんやから。

天条は、「あっそ」

と言って、

「またね」

と言って、去って行った。

わっちは、ああ、そうか。また、こいつと会わんといけんのか。と思た。

こいつのいてる世界で生きていかないけんのかと――。

わっちがそう思てる間に天条は、ひょこひょこと戻ってきて、ヤンキー兄弟に

「今日のことは、オフレコで、喋ったら、どうなるか、わかるよね?」

と満面のスマイルを作って、言った。

かくかくとヤンキー兄弟が、恐怖で首を縦に振ると、改めて、天条は、満足そうに帰って行った。

なぁ、サボちゃん。わっち、もう、あいつと関わりたないんやけど、どないしたら、ええと思う?

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