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わっちの彼ピは、最強ヴィラン  作者: 弥馬田 ぎゃん


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19/30

最強ヒーロー集結編 謎の少年

「やめてよ〜」

と女子のようなソプラノを駅のホームに響かせる男子中学生。その気弱な声を聞けば、誰しもその少年が泣きに入ってるとわかる。

少年は、同じ中学の制服を着る自分より背丈の大きい少年ら3人に自らのリュックを奪われ、そのリュックを公衆の面前で踏まれていた。

が、同じ駅のホームにいる大人達や学生達は、誰一人として、それを咎めない。奇異の目を向けるも誰も止めに入りは、しない。

皆、いじめだと認知していながら、助けない。自己責任だろと――。自分と関係なければ、誰がどこで傷つこうとも、それは、人々にとって、関係のないことなのだ。

人は、正義の為には、戦わない。

不良少年達3人は、それだけで悪ふざけを終わらせるつもりは、当然、なく、泣いている少年のズボンを公衆の面前で降ろし、携帯で動画を撮り始める。

「は〜い、今から、こいつのパンツを降ろしま〜す」

不良少年の3人のうち、1人が少年を後ろから羽交い締めにし、1人が撮影、1人がパンツを降ろしにかかる。

人々は、さすがに、やりすぎだろという目を向けるが、やはり、誰も止めはしない。

不良少年達は、中学生だったが、身体の大きさからいって、成人男性とさして変わらず、見た目も一発で不良とわかる髪型、着こなしをしていて、不穏な空気をあたりにまき散らす部類の人間だった。

誰も関わり合いたくない。そんな雰囲気が蔓延していた。

ヒーローは、どこか。ヒーローなどいない。

気づけば、パンツを降ろされそうになっている少年は、強く拳を握っていた。その拳は、自分を羽交い締めしている不良の顔面に吸い込まれ、パンツを降ろそうとしている不良の顔面には、全くの無意識に右膝が飛び込んでいた。

泣きべその少年は、不良の1人に鼻血を出させて、自らの身体を解放させ、目の前のパンツを降ろそうと屈んでいた不良には、一撃をお見舞いし、歯をぶち折っていた。

「テメ、何するだ!?」

何するだ!?のクソも何もない。単なる自己防衛。

しかし、不良少年達よりも当の攻撃をした泣きべそ少年の方が、ひどく動揺していた。

!!といった驚きの表情で「僕は、何を?」と自分が何をしたのか、目の前で何が起こったのか、理解していない。

「ふざけんなよ、この雑魚が!!」

と歯を折られた不良が泣きべそ少年に殴りかかる。

ひっ!!と泣きべそ少年は、身を縮まらせる。が、いくら、待っても、パンチは、飛んでこない。

恐怖で目を瞑っていた少年は、恐る恐る目を開けた。

すると、殴りかかろうとしていた不良は、殴りかかろうとしているポーズのまま、一時停止ボタンを押されたように止まっていた。いや、ただ単に止まっているのではなく、今も殴ろうとはしているのだが、ぶるぶるぐいぐいと必死に力を込めても、それ以上、空中で止まって、拳が進まないのだ。

「どうなってやがる!?」

それだけではない。

少年の後ろで鼻血を流している不良も、少年を後ろから、蹴飛ばそうとしていたのだが、足が空中で止まって、少年の背中に届かない。しかも、足が空中で止まったまま、何かに引っ張られているように、剥がれず、戻せないのだ。

「なんなんだよ!?これは!?」

動けない不良二人を放って、携帯のカメラを向けたままの不良にぐんぐん近づいていくいじめられっ子少年。

「え?え!?なんで!?」

しかし、それは、いじめられっ子少年の意思によるものではない。

いじめられっ子少年は、気づけば、「うわぁあ!!」と驚きながら、携帯を持った不良少年に殴りかかっていた。

不良少年は、当然、それを避けた。はずだった。

パンチを避けたはずだったが、不良少年の顔面は、強制的にいじめられっ子の拳に吸い寄せられ、(あご)にクリーンヒット。

不良少年は、白目を剥き、がくっばったりと倒れる。

それを見て、歯の折れた不良は、事態の異常さに気づき、逃げようと走り出そうとしたが、足が地面から離れず、びくとも動かない。

その間にいじめられっ子少年が、ずんずんとした足取りで戻って来る。

いじめられっ子少年は、また、泣きべそをかいた。

「違うんです。これは、僕じゃないんです。僕がやってるんじゃ」

「じゃあ、誰なんだよーっ!!?」

叫ぶ不良にいじめられっ子は、殴りかかる。不良二人は、自ら、顔面でそれを迎えにいき、ボコボコになる。

逃げようにも、足が動かないし、パンチは、避けられない。

やりたい放題に普段、いじめている少年に殴られ続けた。

後半は、少年は、手を出さず、何故か、不良二人同士で殴り合っていた。

当然、彼らの意思ではない。

拳が勝手に動き出し、拳が勝手に相手の顔面に向かっていくし、自分の顔面は、相手の拳に吸い寄せられる。

力尽きた不良3人は、互いに吸い寄せられ、ひとかたまりに集まる。

いじめられっ子少年は、何が起きたか、わからず、茫然(ぼうぜん)としている。拳が痛い。人を殴ると殴った方も痛いのだ。

そんな4人を眺めながら、反対側の駅のホームのベンチに座り、指揮者がタクトを振るように、指を動かす学ラン姿の中学生がいた。

彼の名は、佐藤(さとう) (みのる)。いじめられっ子少年と同じ中学で、いじめられっ子少年と同じ卓球部だ。

「さぁ、仕上げといこうか」

佐藤 実が大きくオーバーに指を振ると、倒れて気を失っている不良少年3人は、立ち上がり、ゾンビのように歩き出す。

そして、駆け込んできた電車の方へと吸い込まれるように、空中を飛び、向かっていく。

その時、

「それは、やり過ぎとは、思いませんか?」

と佐藤 実に声をかけたのは、いつの間にか彼の隣のベンチに座っていたエージェントチャールズだった。

瞬間、不良少年達3人は、電車に向かって、アタックするところだったが、急激なスピードでホームへと吸い寄せられ、戻り、着地し、九死に一生を得る。

「おじさん、ずっと、そこで見てたの?」

佐藤 実は、ゲゲゲの鬼太郎のような髪型からギョロ目を覗かせ、チャールズに訊いた。

「ええ、ずっと見てましたよ。佐藤 実さん」

「あちゃー、見つかっちゃったかー。上手に隠れてるつもりだったのにな」

そう言う佐藤 実は、少しのこどもっぽさも見せない口調をしていた。血の通っていない感情を読み取れない喋り方。

「おじさん、日本語、上手いけど、どこの人?ロシア?アメリカ?僕、やっぱり、解剖とか実験とか、されちゃう系?」

佐藤 実は、危機感をまるで感じてない声の響きで訊いた。それだけ、自分の能力に自信があるのだろう。何が来ても、大丈夫というカンジ。

「そんなことは、いたしませんよ。私は、あなたの能力を高く評価し、スカウトに来たのです」

エージェントチャールズは、そう言って、佐藤 実に名刺を渡した。

「USAエージェントチャールズ?」

「今夜、予定がなければ、その名刺に書いてある連絡先に電話して、東京に来てください。あなたの望んでるものをお渡しします」

「僕が望んでるもの?そんなものないよ。いったい、何を渡すというのさ」

佐藤 実は、少し感情の波を覗かせ、チャールズに訊いた。

チャールズは、

「そんな強力な能力を隠して、生きていると、さぞや、人生に退屈していることでしょう。今夜、東京に来れば、あなたの退屈な人生がひっくり返る出来事が待っていますよ」

と答えた。

佐藤 実のまだ幼い好奇心に賭けた。他にチャールズに交渉材料は、なかった。なにせ、すでに敵側に情報が漏洩している可能性があり、時間的猶予もない。

「天条誠人か。ラスボス戦ね。あと、10年、経ったら、挑戦しようと思ってたけど。まっ、今でも、いっか」

佐藤 実は、映画を観に行く予定を別の日に変えるような気軽さで言った。

こうして、佐藤 実が天条誠人抹殺作戦に最後のメンバーとして加わることとなる。


最強ヒーローチーム ついに結成へ

ヴィランとヒーローの戦いが、いよいよ始まる。

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