混乱のゴイチ王国に到着
ズライリー海賊団のペイリーとリビとの戦いを終えて数時間が経過した。傷を負ったカイトたちの前に島が見えた。ケアノスはタブレット端末で島を調べ、休んでいるカイトたちに声をかけた。
「皆、ゴイチ王国に到着したわよ。降りる準備をして」
この声を聞き、カイトたちはすぐに上陸の支度を始めた。数分後、ゴイチ王国の港にヴィーナスハンドを停泊させた後、ラージュは怪我をしたカイトたちを病院へ送り、ケアノスはペイリーたちをシーポリスへ連行した。
「この程度の傷なら、数日もあれば治ります」
と、病院の先生がラージュにこう言った。病院の先生はカイトたちの様子を見て、驚く様子を見せながらラージュを見た。
「あなたは素晴らしい医者です。怪我をしてすぐに応急処置を行ったと言いますが、このレベルはプロの医者でも通用します」
「ありがとうございます。海賊家業を行う以上、大怪我を負う可能性がありますので、医学はちゃんと学ばないといけないと思いまして」
「腕もいいが、考えも素晴らしい。人間、いつどこで大きな怪我を負うか分からないからね。生きていく以上、怪我を負わないという可能性はないから」
病院の先生は看護婦にカイトたちをベッドに運ぶように伝え、再びラージュと話をした。
「しかし、有名なピラータ姉妹の海賊団がこんな混乱の最中のゴイチに来て何をするつもりだい? まさか、ズライリー海賊団を倒しに来たのか?」
「その通りです」
「ほう。海賊と言われているが、話通り義賊行為を行うのか。まぁ、悪い海賊よりはましだね」
「奴らを狙う理由は、ブラッディクローに関係しているからです」
ラージュの話を聞き、病院の先生は短い返事をした。それから病院の先生はカイトたちの方を見て口を開いた。
「まだ戦いを続けるというなら、今は休みなさい」
「はい。そのつもりです。すみません、私の大事な人をよろしくお願いします」
ラージュはそう言って頭を下げた。病院の先生は頷いてこう言った。
「うむ。任せなさい」
ケアノスは捕らえたペイリーたちを、シーポリスに連行し、報酬金を手にしていた。
「しかし、ズライリー海賊団の一部を倒すとは、流石ピラータ姉妹だ」
「我々シーポリスでも苦戦する相手だ。やはり、サマリオさんの知り合いだけあって、すごい実力だ」
シーポリスの戦士はケアノスを見て、目を輝かせてこう言った。だが、ケアノスはうつむいてこう言った。
「勝てたのはギリギリでした。セアンとライア、カイトは負傷して、コスタも片目をやられました。今、病院へ向かって治療を受けています」
ケアノスの言葉を聞き、シーポリスの戦士は動揺した。そんな中、シーポリスの情感が現れ、ケアノスに頭を下げた。
「ピラータ姉妹の三女、ケアノスさんですね。お話は聞いております」
「どうも」
上官が現れた後、ケアノスは慌てて頭を下げた。上官はケアノスを客間に案内し、ソファーに座るように促した。
「いろいろと話をしたい。時間は大丈夫かね?」
「はい。ラージュが戻って来ていないので、合流するまでは大丈夫です」
「そうですか。では、話を始めましょう」
と言って、上官はコーヒーを一口飲んで口を開いた。
「あなた方がここに来たのは、やはりズライリー海賊団がブラッディクローとつながっているからですね」
「話は聞いています。ブラッディクローを狙っていると。しかし、ズライリー海賊団が奴らに繋がっているとしても、まともな情報を得るのは難しいでしょう」
「知っています。私たちが倒した奴に話を聞きだそうとしても、奴らは何も言いませんでした」
「話をしたら報復として殺される。それがブラッディクローの掟ですからね。どんな悪党も、自分の命が大事というわけですな」
上官はため息を吐き、ケアノスを見て話を続けた。
「これから、どうするつもりですか? もし、ズライリー海賊団と戦うなら、できる限りの情報を教えます」
「お願いしてもいいですか?」
「ええもちろん。奴らは強い。今ここにいるシーポリスでは立ち向かうことができません。どんな手を使ってでも、奴らを倒したいのです」
上官は立ち上がり、資料を机の上に置いた。分厚い資料を見て、ケアノスは動揺していたが、上官は読んでもいいとサインを送った。
「これが、今現状の情報です。役に立つか分かりませんが……」
「ありがとうございます。どんな情報でも欲しいと思っていました」
ケアノスはそう答え、資料を読み続けた。その時、シーポリスの戦士が上官を呼びに来たので、上官は失礼と言って立ち上がり、客間から去って行った。それから数時間、ケアノスは資料を読んでいた。
ケアノスは資料を読み終え、大きく息を吐いていた。肩と首を回しながら外を見ると、もう暗くなっていた。
「いつの間にか夜になっていたのね」
「あなた、真剣になると時間の経過を忘れるから」
と、後ろからラージュの声が聞こえた。ケアノスは驚きながら、ラージュの方を振り返った。
「ラージュ。セアンたちは病院に入院したの?」
「数日で退院できると言っていたわ。私は大した怪我じゃなかったから、すぐに解放された」
と言って、ラージュは体に巻かれた包帯をケアノスに見せた。ケアノスはすぐに服を着るように促し、シーポリスの施設から外に出た。宿に向かって歩く中、ラージュはケアノスに話しかけた。
「それで、何か情報は手に入ったの?」
「ええ。今の状況と、この島のことについていろいろと知ることができたわ」
ケアノスはそう言って、立ち止まった。
「まず、この町はブルベリと言って、少し距離はあるけど、ゴイチ王国の城下町ってなっているわ」
「城下町。ああ、高い所から城が見えるのね」
「高台に登ったの?」
「ええ。病院から出てすぐに町を探索したわ。少し距離があったけど、城が見えたわ。本当に奴らが暴れているのかと疑うくらい、綺麗な城だったわ」
ラージュの言葉を聞き、ケアノスは話を続けると言って言葉を続けた。
「今、奴らは行方不明のロベリー王女を探している。王様を倒したのはいいけれど、まだ王女がいるから安心できないってわけ」
「王様を倒したなら、そこで城を乗っ取ればいいのに」
「王女が塀を率いて、城を取り戻しに来るって考えていると思う。だから、確実に城を乗っ取るためには王女を倒したいと思っている」
「だから、暴れていないのね。だからこの町が無事なのね」
「無事……とは言えないみたいね」
ケアノスは周囲を見てこう言った。一部壁や天井が破損している建物、戦いがあったと思われる火の跡、壁の一部には血が飛び散った跡が残っていた。それを見たラージュは、ため息を吐いた。
「戦いが終わったけど、その傷が残っているってわけね」
「ええ。早く奴らを倒してブラッディクローの情報を手にしたいけど、今はセアンたちの完治を待ちましょう。それしかできないわ」
話を終え、二人は急いで宿に向かった。
深夜、シーポリスの牢屋にて。気を失っていたペイリーとタウクが、欠伸をしながら目を覚ました。
「あれ? どこだ、ここは?」
「俺たち、何でこんな所にいる?」
「ピラータ姉妹にやられたのよ」
呆れた表情のリビが、目を覚ました二人にこう言った。ペイリーとタウクはすぐに自分の状況を察し、周囲を見て自分たちの部下が同じように牢屋の中にいることを察した。
「シーポリスに連行されたのか。情けないなぁ、俺」
「クソッ! 早くこんな臭い所から出なければ!」
ペイリーは立ち上がり、周囲を見回した。牢屋には窓がなく、壁も床もコンクリートでできていて、地面を掘って脱出することもできず、壁を破壊して脱出もできない状態だった。
「クソッたれが!」
何もできないことを知ったペイリーは、苛立ちのあまり壁を蹴った。タウクはため息を吐き、横になった。そんな中、外から悲鳴が聞こえた。
「誰か来る」
リビはそう言って、耳をすました。足音が聞こえたからだ。その足音は徐々に近づいてきて、次第に足音の主が姿を見せた。足音の主は上下黒い服装で、黒い帽子をかぶっていた。顔は黒いサングラスと黒いマスクが付けられていて、素顔が分からなかった。だが、リビはあることを知った。その人物の右手には黒い剣が握られていて、刃部分には血が付着していた。
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