アジッドゼリーの攻略法
ラージュは攻撃を避けるため、後ろに下がった。しかし、リビはこうなることを予測して、アジッドゼリーを使ってわざと足場を溶かしていた。ラージュはその策にはまり、動けなくなってしまった。そして、アジッドゼリーによる一閃を受けてしまった。
「うぐっ……うう……」
攻撃を受ける寸前、ラージュは魔力を開放して周囲にバリアを張っていた。だが、アジッドゼリーはラージュが張ったバリアを溶かし、剣先がラージュに命中していた。
「あらまぁ。少しだけ攻撃を受けたみたいね」
リビは笑いながらこう言った。攻撃を受けたのは剣先だけだが、一閃を受けたラージュの服は徐々に溶け、肌が見えてしまった。その上、剣先は少しだけラージュの肌に命中していたため、傷が広がった。
「ぐう……」
「自慢のお肌を汚して悪いわねぇ。でも、こうなる運命なのよ。あんたは私に勝てない」
勝利を確信したリビは、アジッドゼリーをラージュに向けてこう言った。その時、ラージュは魔力を開放してリビと共に周囲のボロボロの床を吹き飛ばし、足元の確保をした。
「グッ! ふざけた真似をするわね!」
吹き飛んだリビは態勢を整え、ラージュを睨んだ。しかし、ラージュの姿は消えていた。ラージュが何かをすると思い、リビはアジッドゼリーを構えて周囲を見回した。
ラージュはマストの裏に隠れていた。アジッドゼリーの一閃を受けて広がった傷の手当てを行っているが、まだ溶解液が皮膚に付着しているため、なかなか治らなかった。そんな中、ラージュはアジッドゼリーの対策を考えた。
冷静になり、ラージュはアジッドゼリーの強さを思い返した。魔力を使えば溶解性のある液体を出すことができる。その上、普通の剣と同じように使うことができる。そう思うと、アジッドゼリーは魔力を使わなければただの剣ということを把握する。
次に、ラージュはどうやってリビに魔力を使わせないようにするか考えた。ラージュはリビの魔力を探知するが、リビの魔力を強く感じた。この魔力が底切れになるには、まだ当分戦わなければならない。そう思い、魔力切れを狙うのは止めようと考えた。
その次に考えたのは、アジッドゼリーが出す溶解液の対策。溶解液に触れれば何でも溶かしてしまい、傷を受けたら溶解液のせいで傷が広がり、手当てが難しい。避けるのはできるが、難しい。ならどうするとラージュは再び考えた。
しばらく考えると、後ろのマストが音を立てた。ラージュはその場から離れ、折れて倒れるマストから避けた。
「かくれんぼはここで終わりよ。さぁ、骨も肉も血も、アジッドゼリーで溶かして消してあげるわよ」
リビは勝利を確信した笑みで、アジッドゼリーをラージュに向けて振るった。溶解液が再びラージュに向かって飛んで来たのを見たラージュは、反射的に魔力で風を発した。
「うっ! 強い風!」
風を受けたリビは、倒れないように態勢を整えた。その時だった。ラージュが放った風は溶解液を跳ね返し、リビの服に付着した。
「あ! ああああああ! 何で……」
この光景を見たラージュは、焦るリビを見てにやりと笑った。反射的に起こした行動で、アジッドゼリーの対策法を思いついたのだ。
「いいことを思いついたわ。あなたはもう、私に勝てないわ」
服に付いた溶解液を振り払いながら、リビはラージュの言葉を聞いた。その言葉を聞いたリビはラージュを睨み、こう言った。
「何を言っているの? 何かを企んだみたいだけど、私のアジッドゼリーには勝てないわよ」
「じゃあやってみなさいよ。そのへんてこな名前の剣で攻撃してみなさいよ」
と、ラージュは両手を広げてこう言った。その口調と態度を見たリビは怒り、強い魔力を開放した。
「ならお望み通り攻撃してあげるわよ! 死んでも後悔しないで、挑発したあなたが悪いのよ!」
叫びながら、リビはアジッドゼリーを大きく振り回した。剣先から、大量の溶解液がラージュに向かって放たれた。それを見たラージュは大剣を構え、風の魔力を開放した。
「そんなに溶解液を出していいの? この船もろとも、あなたが溶けちゃうわよ!」
ラージュはそう言って、大剣を振り回した。大剣から強い風が発し、大量の溶解液がリビに向かって跳ね返った。
「嘘! 風で跳ね返されるなんて……」
リビは跳ね返ってくる溶解液を見て、驚いていた。驚きのあまり、動くことができないリビはそのまま跳ね返って来た溶解液を浴びてしまった。
「きゃあああああああ!」
「動かないで。その液体を吹き飛ばすわ!」
ラージュは再び魔力を開放し、強風を発した。それにより、リビに付着した溶解液が吹き飛んだ。溶解液を浴びたリビは肌がただれ、服のほとんどが溶けてしまった。魔力は大量の溶解液を使った時に消費してしまい、戦うこともできない状態となってしまった。
「そんな……」
「戦いは私の勝ちね。大人しくするのをおすすめするわ」
ラージュは座り込んだリビに近付き、こう言った。大剣を構えているため、まだラージュは戦うことができるとリビは察した。
「分かったわ。大人しくするわ」
「それが一番」
と言って、ラージュは大剣をしまった。
戦いが終わった後、ケアノスは操舵室でヴィーナスハンドを動かしていた。
「えーっと、ゴイチ王国まではあと少しか……」
近くにあるモニターで周囲の地図を見て、目的地のゴイチ王国まであと少しであることを知った。
「皆、あと少しでゴイチ王国よ。着いたらすぐに病院に直行するから」
「ああ、頼む」
と、ラージュの治療を受けているカイトが返事をした。
「また大きな傷を受けたわね、カイト」
「皆を守らないといけないからな」
「ありがとう。でも、それで傷を受け続けて死んだら意味がないわ。私たちも強いから、心配しなくてもいいわ」
「ああ。イツッ!」
傷に痛みが走ったカイトは、痛そうな顔をした。そんな中、セアンがカイトに近付いた。
「まだ傷が痛むみたいだね。早くゴイチ王国に到着しないかな」
「到着しても、すぐに治療できるかどうか分からないわ。思い出して、今あそこはズライリー海賊団のせいで大変なことになっているのよ」
「そうか……病院は今大変だよね」
「病院どころか、色んな所が大変よ」
と、ライアの肩を借りて歩いてきたコスタがこう言った。コスタの言葉を聞き、セアンは腕を組んで悩むような声を出した。
「そうだよねぇ。そう簡単にことは進まないか」
セアンはそう言うと、ベッドの上で横になった。
治療を終えた後、ラージュはヴィーナスハンドの下にある牢屋に向かい、捕らえたペイリーやタウク、リビに会いに行った。
「あと少しでゴイチ王国に到着するわ。そこでいろいろと話してもらうわ。でも、その前にズライリー海賊団のことと、ブラッディクローについて話をしてもらうわ」
「悪いわね。私たちは口が堅いわ。シーポリスが相手でも何も話さないわ」
リビは鼻で笑いながらこう言った。ペイリーとタウクはまだ気を失っているため、言葉を返さなかった。ラージュはため息を吐いた後、近くにあったナイフをリビに突き付けた。
「じゃあ私が相手なら何か話す? 言っておくけど、私の取り調べはシーポリスよりも恐ろしいわよ」
「ナイフ一本で脅すつもり? そんな物を突き付けられても何も言わないわよ」
「そう。これでも?」
そう言って、ラージュはリビの左の手の甲にナイフを突き刺した。リビは悲鳴を上げたが、ラージュはナイフを動かし、リビの傷を広げた。
「何か言いなさい。でないと、傷が広がるわよ」
「そんな拷問で答えるわけがないわ。傷が広がるならそれで結構。それに……私たちは拷問に屈したら……殺されるからね……」
「あっ。そう」
何を言っても無駄だ。そう思ったラージュは残念そうに呟いた。
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