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その大剣使いは怒りで荒れ狂う


 タウクによって片目を負傷したコスタは、ラージュの手当てを受けていた。


「コスタ、痛みはある?」


「ちょっとだけ。でも、うっすらとラージュの姿は見えるわ」


「分かった。眼帯を用意するからそれを付けて」


 ラージュは救急箱から眼帯を取り出し、コスタに渡した。


「どこかの島に着陸したらちゃんと手当てしましょう。それまで、これで傷付いた目を守って」


 と言って、ラージュは机の近くに立てかけてあった大剣を手に取った。それを見たコスタは慌てて尋ねた。


「ねぇ、どこに行くの?」


「後から来た船をぶっ潰すわ。コスタをこんなひどい目に合わせたから、お仕置きしないと」


 そう答えて、ラージュは外に出た。




 リビはケアノスとの戦いで敗れたタウクを見て、ため息を吐きつつ部下にこう言った。


「一度逃げるわよ。あいつはもう捕まった」


「え、いいのですか?」


「この状況で奴を助けに行くのは難易度が高いわ。だったら、逃げて後から取り返す」


 リビは部下にそう伝え、早急にこの場から逃げることを告げた。しかし、ヴィーナスハンドから強い魔力が接近してくるのを感じ、大声で部下にこう言った。


「早く逃げろ! 何かが来る!」


「はっ、はい!」


 部下たちは慌てて船を動かそうとするが、その前にラージュが大剣を振り下ろしながら船の上に着地し、周囲にいた部下を吹き飛ばした。


「逃さないわよ、あんたたち」


 怒りのあまり、鋭い目となったラージュは周囲を見回した。まだ強い魔力を発しており、その分迫力も増していた。リビの部下はその迫力に押され、戦意を失っていた。


「だ……ダメだ、勝てる気がしない」


「逃げよう!」


 部下たちは急いで海に向かって走って行ったが、その前にラージュの大剣が部下を一閃し、海へ落していった。


「あら。喧嘩を挑んで来たのはそっちよ。勝てないから逃げるの? そんなのはなしよ」


 と、ラージュは周りの部下を見下すような目でこう言った。その目と言葉を聞いた部下たちは怒り、武器を持った。


「ふざけるなよ、アバズレ女! お前なんかこの剣でぶった切ってやる!」


「俺たちを見下したこと、後悔させてやる!」


「行くぞ、お前たち! たかが一人のアバズレにやられるわけにはいかない!」


 部下たちは各々の武器を持ってラージュに襲い掛かった。部下の一人が片手で剣を持って、高く飛び上がりつつラージュに斬りかかった。その部下を見て、ラージュは呆れたようにため息を吐いた。


「はぁ、そんな動きをしたら隙だらけなのに」


 小声でこう言って、大剣の握り手の下の部分にある尖った飾りを部下の方に向け、腹に向けて突いた。攻撃を受けた部下は嗚咽しながら後ろに倒れ、苦しそうな表情をした。そんな中、別の二人がラージュに向かって襲い掛かった。


「二人なら」


「どうだ?」


「変わらないわよ」


 ラージュは大剣を大きく横に薙ぎ払い、襲い掛かった二人に攻撃を当てた。攻撃を受けた二人は悲鳴を上げながら海に向かって吹き飛んだ。その時、別の部下がラージュに接近した。


「攻撃の隙が大きいぜ、アバズレ姉ちゃん!」


「アバズレって言わないで。私はそんなに尻軽じゃないわよ」


 ラージュはその部下に向かって大剣を振り下ろした。予想外の速い速度で大剣が振り下ろされるとは思ってなかった部下は、この攻撃を受けて呟いた。


「嘘だろ……こんな力が……」


 そう呟くと、その部下はゆっくりと倒れた。その直後、発砲音が聞こえた。ラージュは狙撃手が自分に向かって銃を撃ったと判断し、高く飛び上がり、柱に乗り移った。


「柱にいるぞ!」


「撃ち方止め! このまま撃つと、マストが折れる!」


「クソッ! 船を傷つけるわけにはいかない」


 狙撃手のグループはマストにいるラージュを見て、悔しそうに叫んでいた。ラージュは柱から狙撃手の近くに移動し、暴れようと考えたが、マストの上には見張りがいた。


「このままお前を撃ち落としてやる!」


「あら、まずい」


 ラージュは魔力を使い、マストの上に移動した。見張りは接近してきたラージュを見て、すぐにカトラスに持ち替えて斬りかかった。


「どうだ! この素早い剣が相手なら、その物騒な武器は使えないだろう!」


 見張りは素早く攻撃をすれば、ラージュが大剣を使う暇がないと考えた。しかし、その考えはすぐに無駄だと知ることになった。


「悪いわね。大剣以外でも攻撃方法はあるわよ」


 ラージュはそう言って左手を前に出した。見張りは何をするつもりだと思ったが、その直後に強い風が見張りを襲い、海に向かって吹き飛ばした。


「残念でした」


 と、ラージュはにやりと笑ってこう言った。その後、ラージュは大剣を手にし、魔力を開放した。


「さてと、このままこのマストをぶっ壊しますか!」


 魔力を察したリビは、狙撃手に向かって大声で叫んだ。


「マストの上にいる奴を撃て、早くしろ!」


「でも、マストが……」


「このままだと奴がマストを破壊する! いいから早くしろ!」


「はっ、はい!」


 狙撃手はリビに言われた通りにラージュに向かって銃を撃った。だが、ラージュの周囲には風が発生しており、飛んで来た弾丸を吹き飛ばしてしまった。


「無理です! 風が邪魔して弾丸が届きません!」


「クソッたれ!」


 狙撃手が泣き言を叫んだ時、ラージュはジャンプして大剣を振り上げた。


「これでぶっ壊す!」


 その後、ラージュは大剣を力強く振り下ろした。大剣の刃はマストの上の中央にめり込み、そこからマストが二つに裂けた。そして、大剣の刃は船の床に到着し、激突と同時に激しい強風が周囲を襲った。




 戦いを終えたカイトたちは、息を荒げながらヴィーナスハンドに戻っていた。


「も……戻った……コスタ!」


 カイトは眼帯を付けて座っているコスタを見て、動揺した。セアンはすぐにコスタに近付き、話しかけた。


「目に傷を負ったの? 一体誰がやったの?」


「ケアノスが倒した。ラージュが治療してくれたから大丈夫。まだちょっと痛いけど」


「そう……この戦いが終わったら、すぐに近くの島に行くからね」


「ありがとう」


 コスタがこう言うと、ケアノスとライアが後からやって来た。


「ふぅ……やりすぎだよ、ケアノス。この人、完全に気を失っているよ」


「別にいいわよ。コスタの目をやったの、こいつだから。この位やらないと私の怒りが収まらないわ」


 ケアノスとライアの話を聞き、コスタの目を傷つけた奴がいると察したカイトとセアンは、気を失っているタウクに近付いて踏み始めた。


「この野郎! この野郎!」


「ムカつくから俺からも一発蹴ってやる!」


「痛いなもう。酷いことをするねぇ」


 殴られた衝撃で、タウクは目を覚ました。セアンはタウクの胸元を掴み、持ち上げた。


「キザ野郎。もう一発殴ってやろうか?」


「別に構わないさ。俺みたいな雑魚を殴っても何も変わらないよ」


 この言葉を聞き、ケアノスは動揺した。急いで外に出て、タウクの船を見た。


「今、ラージュが暴れているけど……」


「俺はあの船の副船長的なポジション。あそこにはまだ、俺の愛しの船長がいるぜ」


 そう言って、タウクは小さく笑った。その後、カイトとセアンの拳がタウクの顔面を襲い、ライアの蹴りがタウクの急所に命中した。




 ラージュの一撃で、リビの船は半壊した。部下のほとんどが海に落ち、浸水したのか船も沈みかかっている。リビはため息を吐き、首を回し、両肩を回した。


「あんた、やりすぎよ。私を本気にさせたわね」


 と言って、大剣を持っているラージュに近付いた。リビの魔力を感じ、ラージュはリビこそがこの船の船長であることを察し、にやりと笑った。


「あら、私とやる気? これだけ暴れたけど、まだまだ私は戦えるわよ。おばさん」


「部下と比べないでほしいわ。私は強いわよ、アバズレ女」


 二人は互いにこう言うと、睨み合いを始めた。


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 今回から文字数を増やしました。バトルシーンも建物を破壊するような描写を多くしました。その分、迫力のあるシーンが表せるようになった……と、自分は思っています。

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