タウクとの激闘!
ヴィーナスハンドに残っているコスタたちは、カイトたちの戦いが終わったことを察した。だが、なかなかカイトたちが帰ってこないので、何かあったと考えていた。
「カイトたち、帰ってこないわね」
「何かあったかもしれないわ。気になるけど……今はあいつらをどうにかしないと!」
ケアノスはタウクたちの船を見てこう言った。一方、タウクは船の外に出て、部下にこう言った。
「相手さんが遠距離で戦いを挑むなら、俺は接近戦を挑むぞ」
この言葉を聞いたリビは声を上げて驚いたが、タウクは続けてこう言った。
「狙撃手は一人。こっちは多数。一人の狙撃手が多数の相手を撃つのは不可能。だけど、俺としては部下を失いたくはない。だから、俺一人があの船に乗り込む。お前らは相手の狙撃手が困るようなことをしてくれ」
「一人で大丈夫ですか? あいつらは海賊と言っても、義賊でシーポリスとのつながりがあるピラータ姉妹ですよ。一人一人の力はとんでもなく強いですよ」
リビがこう聞くと、タウクは笑いながらこう言った。
「一人だから大丈夫。俺の技、結構周りに被害を及ぼすから、仲間を巻き添えにしやすいのよね」
「そうですか。じゃ、頑張ってください。死にそうになったら必ず戻ること」
「分かっているよ。おい、船をヴィーナスハンドに近付けろ」
会話後、タウクはヴィーナスハンドに接近するように部下に命じた。タウクの船はゆっくりとヴィーナスハンドに近付き、中にいるケアノスやラージュの姿を確認できるくらいの距離になった。その距離になった直後、タウクは船の端に立った。
「それじゃあ行ってくる。援護よろしく」
と言って、魔力を開放してヴィーナスハンドに向かって飛んで行った。コスタはタウクの接近を察し、スナイパーライフルでタウクを狙い撃ちにしようとしたが、タウクの部下が煙幕や閃光弾を使い、コスタの邪魔をした。
「ウッ……これじゃあ狙えない!」
コスタはタウクが来ると察し、急いでケアノスとラージュに向かって叫んだ。
「敵が一人ヴィーナスハンドに乗り込んだ! 急いで倒して!」
「急いで倒してか。悪いけど……俺は雑魚じゃないよ。ちゃちゃっとやりますか!」
タウクはそう言うと、二本の竹串を服の裏から手にし、コスタに向けて放った。二本の竹串はコスタの右目、そして左肩に命中した。
「キャアアアアアアアアアアアアアア!」
「コスタ! あんたよくも……」
ラージュは鬼のような形相でタウクを睨み、大剣を振り上げようとした。だが、それより先にケアノスがレイピアを構え、タウクに攻撃を仕掛けていた。
「ラージュ、あなたはコスタの治療をお願い。早く治療をすれば、コスタの右目は治せるはず」
「ええ。分かったわ。ケアノス、そのキザ野郎をコテンパンに、穴だらけにしてやって」
「もちろんそのつもりよ。コスタに酷い傷を負わせて……絶対に許せない!」
「絶対に許せない? アニメのヒーローみたいなあほらしいことを言っちゃってまぁ!」
ケアノスの言葉を聞き、ラージュは急いでコスタの元へ向かったが、タウクは一本の竹串を手にし、ラージュに向けて投げていた。その動きを察知したケアノスがレイピアで竹串を突いた。
「これ以上私の姉妹に手を出したら、ハチの巣にするわよ」
「おー、怖いねぇ。ハチの巣になるのは流石に勘弁してくれよ」
ケアノスの言葉を聞き、タウクは笑いながらこう言った。
ケアノスはレイピアを構えたまま、タウクを睨んだ。これまでの動きでケアノスはタウクの攻撃方法を少しだけ把握した。
タウクの武器は服の裏にある竹串。焼き鳥で使うような串だが、先端は尖っていて、服のふくらみを見て多数用意されているとケアノスは考えた。
「さーて、一対一の状況だね。でも、戦法としては遠距離の俺が有利のようだねぇ」
「関係ないわ。すぐに終わらせるから。覚悟しなさい」
「すぐに終わらせるか……そう言うと、戦いは長引くものだよ」
タウクはそう言ってケアノスに向かって左足で蹴りを放った。ケアノスは蹴りをかわし、レイピアでタウクの左足を貫こうとしたが、靴が変だと思い、攻撃を止めて後ろに下がった。
「あら残念。意外と勘がいいのね」
タウクがこう言った直後、靴のつま先部分から鋭利な棘が現れた。ケアノスはそれを見て、ため息を吐いた。
「つまらない小細工をしてあるのね」
「小細工をしないと、裏の海の世界では生き残れないからね。あんたらも知っているでしょ?」
「まーね」
ケアノスはそう言って、素早くタウクの懐に接近し、レイピアで腹を突き刺した。タウクは激痛を我慢しながらケアノスを突き飛ばし、貫かれた個所を魔力で治療した。
「グフッ! 非情な攻撃をするねぇ。可愛い顔をしているくせに、やることは恐ろしい」
「次は心臓にでも突き刺してやろうかしら。次に攻撃されたい箇所があるならば、遠慮なく言えば?」
「悪いけど、大事な体を穴だらけにしたくないよ」
「穴だらけになったら、ピアスでも付ければいいじゃない」
「俺はピアスにカッコよさを感じないよ。俺はアクセサリーでカッコよさを補おうとは考えていないからね……」
タウクは竹串を手にし、ケアノスに向かって投げた。ケアノスは竹串をかわし、タウクに接近してもう一度レイピアで突き刺してやろうかと考えていた。しかし、タウクから魔力を感じ、ケアノスは周囲を見回した。
「気付いたかい? 竹串は投てき攻撃以外にも使えるのさ。火の魔力を込めて投げれば……火災の原因にもなる」
「しまった!」
さっき投げた竹串が後ろの壁に刺さり、先端から火が発していた。ケアノスが察したのは、火の魔力を込めて竹串を投げれば、突き刺さった箇所から火が出ること。タウクの目的はヴィーナスハンド。火の魔力を利用してヴィーナスハンドを燃やそうと考えていたのだ。
「さてと、これからどうする? メガネの美人ちゃん?」
不敵な笑みで、タウクはケアノスにこう言った。
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今回の話からバトルシーンを派手にしようと、少しエグイ描写を書いたり、建物を破壊する描写などを増やしました。




