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水の刃と雷の刃


 戦いの準備をしているタウクはペイリーの魔力を察し、ペイリーの船を見た。


「ありゃま。本気を出しているよ。結構追い詰められているみたいだねぇ」


 そう呟くと、リビが部屋に入って来た。


「わお。いきなり入ってこないでよ。驚いたよ」


「なかなか来ないので、また煙草でも吸いに行ったのかと思いました」


「行かないよ。叱られた後で煙草を吸うなんて、そんなことする度胸は俺にはないよ」


「そうですか。それより早く準備をしてください。ペイリーがやられそうですよ」


「分かっているよ。今のあいつは本気だ。本気を出さないと倒せない相手と戦っているようだねぇ……」


 そう言って、ペイリーは準備を続けた。




 ペイリーの両手に発した雷の刃を見て、カイトはため息を吐いていた。


「俺はもうあんたと戦いたくないけど」


「悪いがそうはいかない。戦いを始めた以上、どっちかが死ぬまでやるものだ」


「俺はあんたを殺すつもりはない」


「そうか。だが、優しい心を俺は持っていない。俺はお前を殺すつもりだ。行くぞ!」


 ペイリーは叫び声を上げながらカイトに接近した。攻撃が来ると察したカイトは刀を構えて反撃しようとしたが、それより先にペイリーが雷の刃を振り下ろした。先ほどのように雷を切ろうとしたカイトだったが、ペイリーが握っている雷の刃は、まるで鋼鉄の剣のように固かった。


「か……硬い……どうしてだ?」


「当たり前だ。俺の雷の刃は本物の剣のように固い。だから……」


 ペイリーは左手の雷の刃を振り上げ、カイトに向かって振り下ろした。鋭い雷の刃はカイトの体を一閃し、深い傷を与えた。


「本物の剣のような切れ味を持っている。どうだ? 雷の刃の切れ味は?」


「グアアッ! クッ……クソッ!」


 近くにいるペイリーを蹴り飛ばそうと思い、カイトは右足を動かした。しかし、カイトが蹴りを使うことを予測したペイリーはカイトの右足を突き刺した。


「蹴って俺を飛ばそうとしたのだな。甘い。そんな考え簡単に見抜くことができる!」


「グウッ! ウッ……」


 強すぎる。カイトは心の中でペイリーが強いと再認識した。どうしようかと思ったが、セアンもライアも先の戦いで負傷し、援護もできない状況。ここで頼れるのは自分だけである。


 カイトは左手をペイリーの前に突き出し、大きな魔力の塊を作り出した。


「何をするつもりだ? 何をやっても無駄だぞ」


 ペイリーはこう言ったが、それより先にカイトはその魔力の塊を破裂させ、自分とペイリーを吹き飛ばした。


「グアアアアアアッ!」


 カイトは悲鳴を上げたが、ペイリーから距離を取ることができた。一方、ペイリーは吹き飛んだ際に全身を床にぶつけ、ダメージを負っていた。


「グッ……魔力の爆弾を爆破させて、距離を取ったのか……荒い方法だな……グフォッ!」


 ペイリーが嗚咽すると、先に立ち上がったカイトが刀を構えていた。


「これで終わりにするぞ!」


 そう言って、カイトは刀に魔力を込め、水を発生させて凍らせ、巨大な刃を作った。それを見たペイリーは大声で笑い、急いで立ち上がった。


「フハハハハハハハ! それがお前の全力のようだな! なら……俺も全魔力を使って戦わないといけないなぁ! 相手が全力で来るなら、こっちも全力で立ち向かう。これが俺なりの礼儀ってもんだ!」


 ペイリーは両手に魔力を発し、二本の巨大な雷の刃を作った。そして、カイトに向かって走り出した。


「これで決着をつけるぞ、小僧! 死ぬのはお前だ!」


「勝つのは俺だ! 勝たなきゃ先には……進めない!」


 二人は叫び声を上げながら、巨大な刃を振り下ろした。刃が振り下ろされた瞬間、周囲に木片が舞い散った。戦いを見ていたセアンとライアは飛んでくる木片や鉄くずを目から守りながら、この後の様子を確認した。


「どう……カイトは? 戦いに決着はついた?」


「えーっと……あっ! カイト!」


 セアンの目には、刀を右手で持っているカイトの姿が映った。その前には、倒れているペイリーの姿があった。カイトはセアンとライアの方を振り返ると、静かに微笑み、その場に倒れた。




 セアンとライアは急いでカイトの元へ向かった。倒れたカイトは気を失っていて、胸から腹にかけて大きなバツ印の傷ができていた。


「どうしよう。結構傷が深いよ!」


「落ち着いて、持っているだけの魔力をカイトの治療に使おう! 出血なら止められる! ライア、急いで!」


 セアンはライアにこう言うと、急いでカイトの出血を止めるために魔力を開放した。ライアも急いで魔量を開放し、カイトの治療を行った。その際、二人はもう一つの海賊船を見つけた。


「嘘でしょ……こいつらの仲間が来たってわけ?」


「発砲音が聞こえる。コスタが攻撃しているみたいだけど……」


「すぐ援護には行けないね」


「うん。カイトの傷の手当てをしないと……あいつらのことは、ケアノスたちに任せよう」


 二人が会話をしていると、その船から強い魔力を感じた。その魔力は、カイトが戦ったペイリーよりも強い魔力だった。


「嘘! カイトが戦った奴よりも強い奴がいる!」


「これまずいよ、早く治療しないと! ケアノスたちが危ないよ!」


「焦ったらダメ。焦ったら逆に状況が悪くなる!」


 と、ライアに言ったセアンだったが、焦りのせいで魔力の調整を失敗し、風の刃を発してしまった。


「アギャアアアアアアアアアア!」


「あ! ごめんカイト!」


「焦っているのはセアンの方だよ! もう、カイトに傷を増やさないでよ!」


「ごめん! 本当にごめん!」


 そう言った後、セアンは集中してカイトの治療を始めた。


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