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その烈風は何を切り裂く


 本気になったライアの姿を見て、ラグは激しく動揺した。だが、すぐにこんな小娘が本気を出して何を恐れると自分に言い聞かせ、気持ちを切り替えながら鎖鎌を構えた。


「フン。何も怖くないぞ。その位の魔力なら、俺だって解放できる。つまらない見栄を張るな」


「口だけなら何でも言えるわよ。お喋りはここまでにするわ。なんか変なのがいるし」


 ライアの言葉を聞き、ラグは後ろを振り返った。そこには、別のズライリー海賊団の船があった。


「フフフ。俺たちの仲間が来たようだな。お前たち、運が悪い。この状況じゃあどうしようもないな」


「できるわよ。私たち姉妹とカイトを甘く見ないことね」


 と言って、ライアは高く飛び上がった。ラグは新しい鎖鎌を取り出し、ライアに向かって分銅を投げた。しかし、ライアの周りには風が発しており、飛んで来た分銅を吹き飛ばしてしまった。


「なっ!」


「今の私にはそんなものは通用しないよ。私の風はあんたより強い!」


 ライアはラグの後ろに着地し、素早くラグに向かって走り出した。その時のライアの姿を追えなかったラグは、ライアのナイフの一閃を受けてしまった。


「グフッ!」


 強烈な一撃がラグを襲った。それと同時に、体が動くほど強い風が襲った。ラグは体が倒れないように踏ん張って態勢を整え、ライアの姿を探した。


「どこだ……どこから来る!」


「教えてもいいけど、目で追えないよ」


 ライアの言葉が聞こえた。声のした方をラグは向いたのだが、それより先にライアが動き、ラグを一閃した。


「ガハァッ!」


 二撃目の斬撃を受け、ラグは大きな悲鳴を上げた。倒れそうになったが、再び踏ん張って倒れることはなかった。しかし、強烈な痛みがラグを襲い、立っているだけでも精一杯の状況だった。


「グ……こんな……ことが……あって……たまるか……」


「殺さないようにて加減するから、さっさと倒れてよ。まだ他の奴との戦いがあるから」


 と、ライアはラグを見下すような目でこう言った。その目を見たラグは怒りを覚え、魔力を開放しつつ立ち上がった。


「見下すなよ、小娘が! 次の一撃でお前を葬ってやる!」


「やれやれ。もう諦めた方がいいのに。もっと酷い目を見るよ」


 ライアはため息を吐いた後、身構えたラグを見た。構えを取らないライアを見て、ラグは不思議に思った。だが、まだライアはラグを見下す目をしていた。それが気に食わなかったラグは叫びながらライアに向かって走り出した。


「そのムカつく目を俺に見せるな! 腹が立つ!」


「呆れるほど単純なおっさんだね」


 ラグは勢いを付けて鎌をライアに向かって投げた。ライアは飛んで来た風が纏ったナイフを振るって破壊し、素早くラグの近くまで移動した。


「早い……」


「もう終わり。死なないように加減はするから、安心して倒れてね」


 と言って、ライアはナイフを振るった。攻撃をした後、ライアは魔力を抑えてナイフをしまった。それと同時に、ラグの腹から血が流れ、ラグの体はゆっくりと倒れた。




 新たなズライリー海賊団の海賊船では、ヴィーナスハンドに向けて大砲の用意をする船員の声が響いていた。


「相手が俺たちに気付いた! 早く大砲の支度をしろ!」


「何かが飛んで来た……ウワァッ! ライフル弾だ!」


「コスタか。あいつは腕のいいスナイパーだと聞く。おい! 銃を使える奴は応戦しろ!」


「無理です! この船にある狙撃銃じゃあヴィーナスハンドまで届きません!」


「クソッ! このままじゃあ何のためにここに来たのか分からないぞ!」


 大砲の用意を仕切る船員は、苛立ちのあまり壁を蹴った。その直後、コスタが放ったライフル弾が大砲の中に命中し、大砲が大爆発を起こした。


「うおおおっ! あいつら、大砲を撃って爆発させて、船を破壊しようとしていやがる!」


「このままでは、接近する前にこっちが沈没します! ああ、ペイリーさんの船から煙が!」


「まずい! 全滅する! 誰か、助けてくれ!」


 コスタの攻撃を受けたのと、ペイリーの船に煙が発生し、船員は逆に追い詰められていると考えた。しかし、一人の男が煙草の煙を吐きながらこう言った。


「静かにしろ。こういう時、慌てても何も解決しないぞ」


 そう言ったのは船員の兄貴的存在であるタウク。タウクの言葉を聞いてその場で立ち止まった船員は、タウクが次に何を指示するか待った。


「相手がスナイパーライフルを使ってこっちを撃っても、大砲の中に入る確率は低い。滅多に当たらないと思え。ペイリーのことは無視しろ。あいつのことだからどうにかするだろう」


「はっ……はぁ……」


 船員は予想外の言葉を聞いたため、動揺した声で返事をした。タウクは再び煙草を吸い、煙を吐いて言葉を続けた。


「こっちがやるのはぶっ飛んだ大砲で発した火の消火だ。それは早く消せ。それと、大砲の中に弾を詰めるな。また爆発する。ペイリーはまだ戦っているみたいだし、こっちはゆっくり動けばいい。あとは、バリア発生器でコスタのライフル弾を防げ」


「わ……分かりました! 全員、命令通りに動け!」


 タウクの言葉の後、船員は指示通りに動いた。タウクはその場に座り直し、新しい煙草を一本手にした。しかし、横にいた女性がその煙草を取り上げた。


「もう吸わないの。これから戦いがあるのに、体がぶっ壊れるわよ」


「戦いがあるから吸いたい。戦いが始まるギリギリのギリギリまでリラックスさせておくれよ、リビ」


 タウクは寂しそうな目でリビと呼んだ女性を見つめたが、リビは何も言わず煙草をしまってしまった。


「ケチ」


 去っていくリビを見て、タウクは小さくこう言った。


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