セアンの本気
苦戦するセアンを見て、カイトは驚きを隠せなかった。今までセアンと共に戦い、敵に押されたことはあったが、深い傷を負うことはなかった。そのセアンが、二度の攻撃を受け、窮地に追い詰められているのだ。
「セアン!」
「他人より自分の心配をしたらどうだ? ほら、気を抜いていると死んでしまうぞ!」
と、ペイリーはこう言ってレイピアを抜いた。ケアノスが持っているレイピアと似たような形だが、禍々しいオーラを感じていた。
「何だ……そのレイピアは? 変なオーラが出ているぞ」
「刺されば分かるさ。さぁ、こっちも戦いを始めようか!」
ペイリーはにやりと笑いながらレイピアを構え、カイトの方に向かって走って行った。
海に落ちそうになったセアンは、落ちる最中に船の壁にあったロープを掴み、落下を防いだ。そしてそのまま体を一回転させて上へ飛び上がり、元の場所に着地した。
「ほう。これだけの傷を受けてもまだ動けるのか」
「鍛えたからね。それに、今までいろんな奴らと戦って来たからね」
セアンはイチタにこう言うと、深呼吸した。
「呼吸を直しても状況は変わらないぞ。リラックスしたつもりか?」
「いろんなことをやってみないと分からないよ。さーて……後でラージュに叱られることを覚悟しないと」
と言って、セアンは魔力を開放した。この戦いでセアンは何度か魔力を使ったが、今解放した時のセアンの魔力は今までと比べて倍以上の強さだった。
「な……何だ、この魔力は! こんな魔力を持っていたとは……」
「雑魚相手にこれだけの魔力を使いたくなかったけど……これ以上やられるのは嫌だからね!」
そう言った直後、セアンの姿が消えた。突如消えたため、イチタは動揺した。だがその直後に腹に激痛を感じた。
「ガアッ!」
「見失ったでしょ。かなり油断していたよ、あんた」
セアンの声が聞こえた。激痛を耐えながらイチタは下を見ると、そこにはカトラスを構えたセアンがいた。その姿を見て、セアンは猛スピードで自分の近くに接近し、一閃を与えたとイチタは把握した。
「グッ……この女!」
「こんな近くで大きな斧を使えると思う? やってみなよ。カモーン」
セアンはにやりと笑いながらこう言った。この言葉を聞いたイチタは怒りながら大斧をセアンに向けて振り下ろそうとしたが、刃が振り下ろされる位置はセアンからずれていて、攻撃をしても無駄だと把握した。
「クソッ! 位置が悪い!」
「おっと。蹴りを入れるのは私の方だよ!」
セアンは右足で蹴りを放ち、イチタを蹴り飛ばした。後ろに吹き飛んだイチタは反撃のつもりで大斧を投げたが、セアンは飛んでくる大斧に向かってカトラスを振り下ろした。頑丈な大斧がカトラスで斬られることはないだろうと思ったイチタだが、すぐ直後に予想外の光景を目にすることになった。
「な……そんな……俺の斧が……」
イチタは二つに分かれる大斧を見て、言葉を失った。分厚く、いくつもの鉄や鋼を重ねて作った大斧のため、簡単に壊れるだろうとは思っていなかったからだ。それが、チーズがアツアツのナイフで斬られたかのように二つに斬られてしまったのだ。
「さーて。覚悟はできた?」
セアンはハンドガンをイチタに向け、発砲した。飛んでくる弾丸を見て、イチタは素早く動いて回避しようとした。しかし、セアンはイチタの動きを予測して発砲していたため、イチタの行動は無駄となった。
「グフッ!」
脇腹に弾丸が命中したイチタは、悲鳴を上げながらその場に倒れた。だが、セアンが来るだろうと考えたイチタはすぐに立ち上がり、迫って来るセアンに向かって格闘の構えを取った。
「へぇ、格闘技でもやるつもりなの?」
「やるしかない! くたばれ!」
接近したセアンに向かってイチタは右のストレートを放った。セアンはしゃがんで右のストレートを回避し、カトラスを上に付き上げてイチタの右腕を刺した。
「ガアアアッ!」
「慣れないことをするから。さーて、まだまだ攻撃は終わらないよ」
セアンはハンドガンを構え、イチタに向かって発砲した。近い状態のため、イチタは弾丸を回避することはできず、弾丸を受けることしかできなかった。
「ぐ……ウウッ……」
攻撃を受け続けたイチタは口から血を吐き、片膝をついた。もう戦えないだろうと思ったセアンは攻撃を止め、後ろに下がった。
「大人しくしてよね。これ以上暴れるなら、何をしてもいいよね?」
「うるさい……お前は俺が殺す!」
と言って、イチタはセアンに向かって飛びかかった。セアンはため息を吐き、カトラスに風の魔力を溜めた。
「しょうがないね。それじゃあさっき言ったとおり、海に落として終わりにするよ!」
「やれるものならやってみろ! 小娘ぇ!」
イチタは左の拳をセアンに突き出そうとした。だが、その前にセアンはカトラスを振り下ろした。カトラスが振り下ろされた瞬間、強い風が刃となってイチタに襲い掛かった。風の刃を受けたイチタは悲鳴を上げながら海に向かって吹き飛び、そのまま落ちて行った。イチタが海に落ちたのを見たセアンは息を吐いた後、その場に倒れた。
「あー……久しぶりに暴れた、傷ついた……もう動けない」
と言って、カイトとライアの戦いが早く終わるように願った。
セアンとイチタの戦いが終わった。ライアとラグはそう思い、戦いの手を止めた。
「イチタの野郎……あれだけ暴れて海に落とされるって……」
「セアンが無事だといいけど。それより、さっさとあんたを倒さないと!」
最初に動いたのはライアだった。両手のナイフを持って体を回転させて、ラグに斬りかかった。ライアの動きを察したラグは鎌の刃を盾代わりにし、ライアの攻撃を防いだ。
「グッ! いきなり攻撃するなよ!」
「海賊の戦いにルールはないよ!」
ライアは蹴りを放ち、その勢いでラグから離れた。
「メスガキが……ふざけやがって……」
距離を取るライアを睨みながら、ラグは鎖鎌を構えた。
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