仇敵の影
無事にボロミーロ海賊団を倒したカイトたちは、身柄をシーポリスに送るために近くのツイス島に立ち寄っていた。現地のシーポリスはカイトたちに賞金と共に感謝の言葉を送っていた。
「ありがとうございます。こいつらはあまり強くないのですが、ポイズンダウンが厄介なので我々では対処ができなかったのです」
「強い毒性の武器だからね。ちょっとでも刺さったら痛い目見るからね。ま、こいつらの脅威もこれでおしまいね」
と、ラージュはウインクをして役員にこう言った。それからシーポリスの建物を出て、セアンは周囲を見回した。
「今日はこの島で休むとしますか。もう夜遅いし」
「賛成。宿賃もあるしね」
「ライア、贅沢はあまりできないからね。晩御飯は宿の安いメニューで済ませるわよ」
「分かっているよ。その前に食材を買うお店を決めないと。どこか安い店はないかなー」
ケアノスとライアが会話をする中、コスタは近くの店のテレビを見て呟いた。
「酷い……ゴイチ王国に海賊団が攻め込んだって」
コスタの言葉を聞き、テレビの内容が気になったカイトとセアンは映像を見た。そこにはニュースキャスターが映っていて、ゴイチ王国の状況を知らせていた。
「昨日発生したズライリー海賊団のゴイチ王国襲撃事件についての続報です。ゴイチ王国のロベリー・ゴイチ王女とその護衛が行方不明になっています。ズライリー海賊団の襲撃の際に逃げ出したと思われますが、それからの行方が分からなくなっています。現地のシーポリスが捜査に当たっていますが、ズライリー海賊団もその身柄を狙っているため、ゴイチ王国の各地でシーポリスとズライリー海賊団の激しい戦いが繰り広げられています」
「へぇ。国に喧嘩を売る海賊団もいるのか。やられる可能性もあるのに」
「それだけ武力に自信があるってことだね。でも、どうしてこんなバカなことをしたのかな?」
「ズライリーの連中に聞かないと分からないわね。ニュースは宿屋でも見られるから、早く行きましょう。外で見るより、中で見た方がいいわよ」
ケアノスにこう言われ、カイトとセアンは急いで宿を探した。
数分後、カイトたちは島の宿屋の部屋にいた。荷物を置いてひと段落する中、ラージュが口を開いた。
「私たちがボロミーロと戦っている時に酷い事件があったものね。まさか、変な海賊が国に喧嘩を売るとは考えてもいなかったわ」
「現地のシーポリスが頑張っていればいいけど」
「そうだね。サマリオもこの事件を解決するために動いているのかな」
「かもしれないな。シーポリスも大変だな、各地の争いを止めるためにも働いているだろう?」
「うん。サマリオも前はいろいろな場所の戦いを止めたって話してくれたよ。とても大変な仕事だったみたい」
そんな話をしていると、ライアが人数分のココアを持ってきた。
「とにかく休もう。店の人が言っていたけど、夕方にはご飯ができるって。用意ができたらチャイムが鳴るみたい」
「そうか。分かったよ」
カイトは時計を見て、今が夕方に近い時刻であると察した。
「じゃ、俺はそれまで休んでいるよ。鍛えてばっかりだと体が壊れる」
「だね。膝枕いる? 今ならあるよ~」
セアンが太ももを指差してこう言ったが、カイトは照れながら大丈夫と言った。
それから数時間後、カイトたちを呼ぶ声がした。夕飯ができたと察し、下のロビーへ向かった。ロビーはすでに他の宿泊客が座っており、誰もがゴイチ王国の事件を話のネタで扱っていた。
「皆ゴイチ王国の話をしているね。他の話をする人を探すのが難しいよ」
「それだけ大きな事件ですもの。見て、いつも放送するドラマの再放送が特番に代わっているわ」
ケアノスはテレビを見てこう言った。テレビではゴイチ王国の事件のことを流しており、時折現場の映像が流れた。城下町らしき場所が映っているのだが、爆撃があったのか周囲の建物は半壊しており、黒い煙が上がっていた。それと、キャスターが話している途中で何かが飛んでくる音が時折聞こえ、それと同時に爆発音も響いた。
「戦いは続いているみたいだな」
「酷い状態だね……」
セアンは小さな声でこう言った。カイトはセアンの言葉を聞き、サビナのことを思い出した。もしかしたら、ピラータ姉妹はサビナの過去のことを思い出し、暗くなっているのだとカイトは考えた。だが、彼女らを元気付ける言葉を見つけることはできなかった。そんな中で、店主が料理を持って来た。
「元気がないようだけど、とにかくうまい物でも食べて英気付けなよ。どんな暗い過去があったか俺には分からないけど、いつかはいいことがある」
「ありがとうございます」
ケアノスはお礼を言って、料理を受け取った。それからピラータ姉妹は美味しい料理を食べ始めたためか、元気を取り戻していった。カイトは心の中で、店主にお礼を言った。すると、突如テレビの映像に映るキャスターが慌てながらこう言った。
「速報です! ズライリー海賊団の詳細が判明しました! 奴らはあの極悪海賊、ブラッディクローに関する組織であると分かりました!」
この言葉を聞き、ピラータ姉妹は一斉に立ち上がり、テレビの前に駆け寄った。だが、キャスターはこれ以上詳しいことを話さなかった。セアンはコスタたちを見回し、口を開いた。
「今の聞いた?」
「うん。ズライリー海賊団の連中がブラッディクローとつながっているって」
「奴らを捕まえれば、ブラッディクローに関することを聞けるかもしれない」
「チャンスが巡って来たね。ブラッディクローの奴らのことを知ることができる!」
「ええ。明日にでもゴイチ王国へ向かいましょう」
そう話すピラータ姉妹にカイトは近付き、声をかけた。
「なぁ皆、その話は部屋でしてくれ。周りを見ろ、皆注目しているぞ」
カイトの言葉を聞き、セアンはロビーにいる人たちの視線が自分たちにあると知り、失礼しましたと言いながら席に戻った。
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