悪を斬れ、水の刃よ
セアンは倒したボロミーロの船員を縄で縛りながら、カイトとマスカポーレの戦いを見ていた。そんな中、ケアノスがセアンの元にやって来た。
「セアン。そっちはどう?」
「全員倒したよ。あまり強くなかったよ。で、カイトの方はどう?」
「マスカポーレは厄介な槍を持っているわ。でも、使う本人はあまり強くない。カイトがそれに気付けばいいけど」
と、ケアノスはカイトを見ながらこう言ったが、セアンは欠伸をしながらケアノスにこう言った。
「大丈夫だよ。創造の力の時もそうだし、ロガンのジジイの戦った時もカイトが活躍していたし、カイトが勝つよ」
セアンの言葉を聞き、ケアノスは少し安堵した。カイトを信じて待つ。ケアノスは心の中でそう決めた。
カイトは飛んでくるポイズンダウンの矛先をかわしながら、マスカポーレに攻撃を仕掛けようと考えていた。しかし、マスカポーレの攻撃の速度はそれなりに早く、少しでも気を緩めばポイズンダウンに刺されて死んでしまう。
「ハッ! 威勢だけか? クソガキ! 今すぐ土下座すれば許してやるぞ」
「うるさいな。豚みたいに太った野郎が!」
豚と太った野郎の言葉を聞き、マスカポーレは激怒した。
「黙れ! 誰が豚だ! 誰が太った野郎だ! 俺はスマートだ!」
マスカポーレは感情に任せ、ポイズンダウンを振り回した。言い過ぎたと思ったカイトだったが、この状況が戦いを終わらせる近道になるのではと思った。ポイズンダウンは魔力によって変わった動きができ、長さを変えることができる。なら、相手の魔力がなくなれば弱くなるのではないかとカイトは考えた。
「オラオラオラァ! さっさと死ね、クソガキ! 失礼なガキは、さっさと死んだほうが世のためになる!」
汚いマスカポーレの言葉が飛んで来るが、意味のない暴言だと自分に言い聞かせながらカイトは攻撃をかわした。しばらくすると、ポイズンダウンが急に縮みだした。
「うぐっ! ま……魔力が……」
と、苦しそうに呟きながらマスカポーレは片膝をついた。感情に任せて攻撃を行った結果、マスカポーレは大量の魔力を失ったのだ。自分の予想が当たったと思いながら、カイトは刀を持ってマスカポーレに近付いた。
「隙あり!」
「んなっ!」
カイトの声を聞き、マスカポーレはポイズンダウンを使ってカイトの一閃を防御した。だが、魔力がなくなったマスカポーレが手にするポイズンダウンは防御をするのに役には立たず、刀によって二つに斬られてしまった。
「ああ! クソッ! 俺のポイズンダウンが!」
接近したカイトを睨みながら、マスカポーレは残り少ない魔力を開放し、ポイズンダウンを毒状にさせた。
「最後の一撃だ! 毒に侵されて死ね!」
マスカポーレはポイズンダウンを伸ばし、カイトに攻撃を仕掛けた。攻撃した後でうまく動けないカイトは、飛んでくるポイズンダウンを見てまずいと思った。しかし、危機感を持ったためか、両腕は反射的に刀を振り下ろし、目の前のポイズンダウンを斬り落とした。
「なっ! 何だと! 動けない中で剣を振り下ろしただと!」
「体が勝手に……」
カイトは自分の手を見て、勝手に体が動いたことを驚いていたが、今は驚いている場合じゃないと気持ちを切り替え、魔力を開放した。
「勝負は俺の勝ちだ。覚悟しろよ!」
「この野郎! 勝手に勝利を宣言するな! まだ勝負は終わっていない!」
そう叫んだマスカポーレだが、カイトの魔力を感じ、自分との魔力の差を察して言葉を失った。
「急に黙ったな。だけど、行くぞ!」
カイトは刀に魔力を注いだ。それに合わせ、刀の刃から勢いよく水が飛び出した。水は徐々に刃の形に形成された。それをみたマスカポーレは、攻撃を受けないように後ろに下がろうとしたが、腰を抜かしたため、上手く動くことはできなかった。
「な……あ……止めて! 降参するから!」
マスカポーレの言葉を聞かず、カイトは叫び声を上げながら水の刃を振り下ろした。
離れた場所からセアンとケアノスはカイトの水の刃の攻撃を見ていた。
「ありゃー、ボロミーロの船が半壊するかも」
「強い魔力。戦いが終わった後でばてなければいいけど」
二人がこう言った直後、激しい音と共に船が壊れる音が響き、周囲には木の破片が飛び散った。
「すごーい。あれを受けたら一発で倒れるね」
「そうね。さて、カイトの元へ行きましょう」
二人はこの一撃で戦いは終わったと思い、カイトの元に向かった。戦いが終わったカイトはその場で倒れており、大きな腹の音を鳴らしていた。
「あー……腹減った」
そう呟くと、セアンとケアノスがカイトの元に到着した。
「お疲れ。派手にやったねー」
「マスカポーレも気を失っているみたい」
ケアノスは気を失っているマスカポーレを見て、こう言った。その後、セアンは魔力を失ったカイトを起こし、肩を担いだ。
「動けないでしょ? 私がアシストするから」
「ああ……ありがとう」
「セアン、誰か呼んで。こいつ、結構重いの……」
と、ケアノスはマスカポーレを起き上がらせながらこう言った。セアンはライアを呼び、ケアノスのサポートをするように伝えた。その時、ライアはカイトの状況を察した。
「あの一撃を放った時に結構魔力を使ったのね」
「ああ……そのせいで腹ペコだ」
「ヴィーナスハンドに戻ったらご飯にするから。それまで踏ん張って!」
「分かった……ご飯楽しみにしているぜ」
と、カイトは微笑んでこう言った。
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