守るために強くなると
セアンは賞金首の海賊団が近くにいると聞き、外に飛び出した。ケアノスは飛び出したセアンを見てため息を吐き、カイトの方を向いた。
「仕方ないわね。話はあとにして、今は賞金首を倒しましょう。カイト、早く敵を倒しましょう」
「ああ」
カイトは刀を持ち、ケアノスと共に外に飛び出した。周りを見ると、ヴィーナスハンドより一回り大きい海賊船が右側にいた。発砲音が聞こえるため、すでにセアンとコスタが戦いを始めているとカイトとケアノスは察した。
「手を出すのが速いわね。もう戦いが始まっているわ」
「性格上、手っ取り早く手を出しそうだけど」
「そうね。でも、相手は大きいわね。敵もたくさんいるだろうし、こっちに来るかもしれないわ」
ケアノスがそう話しているが、敵の海賊団の一部がカトラスを持ってヴィーナスハンドに侵入した。
「ヒャッハー! 一番乗り!」
「ピラータ姉妹の海賊船か。小さい船だな」
「さくっと捕まえてお楽しみと行こうぜ!」
敵は大声を出しながらカイトとケアノスに襲い掛かった。ケアノスはため息を吐き、素早くレイピアを手にして敵に攻撃した。
「あなたたちみたいな野蛮人の力じゃあ、私たちに勝てませんよ」
敵はケアノスの言葉を聞きながら、その場に倒れた。騒動を聞きつけたライアとラージュが部屋から出て、侵入してきた敵を見つけた。
「あら。こっちに来たの? 度胸があるわね」
「ええ。敵はかなり数が多いみたいだし、船に乗り移ることを考える奴もいるわ。数は多いけど、敵の力は強くないわ」
ケアノスの話を聞き、ライアとラージュは少し話をして、ケアノスにこう言った。
「ここは私とライアに任せて。カイトとケアノスは先走ったセアンのフォローをお願い」
「ちゃんと守るから安心して!」
「じゃあお願い。カイト、行きましょう」
「おう」
その後、カイトとケアノスは魔力を開放し、敵の海賊船に向かって高く飛び上がった。
敵の海賊、ボロミーロは侵入したセアンの相手をしていたが、セアンの方が強く、大苦戦していた。
「船長! 我々じゃあセアンを倒すことはできません! 絶対無理!」
「もうダメだ。おしまいだ~」
セアンとの圧倒的実力差を感じ、ボロミーロの船員は戦意を失っていた。だが、船長のマスカポーレは戦意を失っていなかった。
「諦めるな! たかが小娘一人、俺たちの手にかかればあっという間に倒せるだろうが!」
「あっという間に倒されるのはこっちですよ」
「見てください。戦いが始まって十分もかからないうちにほとんどの船員が倒されたのですよ。あ、また二人倒された」
船員はセアンの攻撃で悲鳴を上げながら宙に舞う仲間を見て、マスカポーレにこう言った。マスカポーレは唸り声を上げながら考えた。そして、船員にこう言った。
「一度ヴィーナスハンドから逃げる! 仲間の救護を第一に動け! 全滅したらおしまいだ!」
「逃げるって? そうはさせないわよ!」
と、上空からケアノスが現れ、マスカポーレに蹴りを与えた。上から降って来たケアノスを見た船員は、大声を上げてその場から逃げた。逃げる船員を見て、ケアノスは少し呆れた。
「参ったわね。敵はもうやる気がないみたい。そんな敵を相手に戦っても意味がないわ」
「やる気がないのは船員だけだ。そろそろ降りろ!」
踏まれていたマスカポーレは、上にいるケアノスに降りるように叫んだ。が、ケアノスはその言葉を聞いたが、動くことはしなかった。
「敵の言うことを誰が聞くものですか」
「このガキ~。生意気な~」
マスカポーレは感情に任せ、全身に力を込めて無理矢理立ち上がった。ケアノスは転倒する前にマスカポーレから離れ、様子を伺った。
「やる? 私、容赦はしないわよ」
「見下すなよ。俺の武器を見て同じことを言えるか?」
そう言って、マスカポーレは紫色の槍を手にした。槍の先端には何かが塗られていて、液体のような物が床に落ちて行った。
「知り合いの鍛冶屋が作った特製の槍、ポイズンダウン。魔力を込めればこいつの先端が毒になる優れ物だぜ」
「毒になっているというのね。厄介な……」
ケアノスがこう言うと、マスカポーレは槍を突き刺そうとした。が、ケアノスは攻撃をかわし、マスカポーレに攻撃をしようとした。
「攻撃か。無駄なことを!」
そう言って、マスカポーレは魔力を開放した。それに合わせ、ポイズンダウンの全体が紫色に変色し、伸びたのだ。
「なっ!」
「フハハハハハ! ポイズンダウンは先端が毒になるだけじゃないぞ! 槍全体を毒にして、自由自在に動かすことができるのだ!」
全体が毒になったポイズンダウンは伸び始め、ケアノスを突き刺そうとした。だが、カイトが現れてポイズンダウンの先端を斬り落とした。
「カイト」
「ケアノス。こいつは俺がやる。一度、変な動きをする敵と戦って、自分がどれだけ戦えるか試してみる」
ケアノスはカイトの言葉を聞き、レイピアを鞘に納めてこう言った。
「分かったわ。でも、カイトがピンチだと思ったら援護に入るからね」
「ああ。頼む」
ケアノスに返事をした後、カイトは刀をマスカポーレに向けた。余裕の態度を取るカイトを見て、マスカポーレの怒りは更に爆発した。
「このガキが! 俺を甘く見るなよ? このポイズンダウンで刺しまくって穴だらけにして、毒の力で確実にぶっ殺してやるからな!」
「やってみろよ、おっさん!」
そう言って、カイトはマスカポーレに襲い掛かった。
この物語が面白いと思った方は、ブックマーク、評価、いいねをお願いします。皆様の評価が自分の励みとなります。よろしくお願いします。感想、質問、レビューもお待ちしています。




