裏切り者のロガン
ガイコツが手にしていた日記帳を奪って読み始めたコスタとライア。その日記には、ガイコツたちがリティーヒの部下であったこと、そしてシーポリスに追われてこの洞窟に逃げ込んだことが書かれていた。そして、日記はまだ続いていた。
俺たちはシーポリスの野郎から逃げるため、洞窟に逃げ込んだ。船に積んでいた財宝も全て持って逃げたが、重くて動きにくい。生きるために捨てようと思ったが、船長に殺されるから捨てることはできない。もう、こんな時でも宝の方が大事なのかよ。
逃げる中、洞窟にいるモンスターが俺たちを襲った。俺たちは数ある海賊の中でも強い部類に入っていると思うが、キリサキフィッシャー、エスデレートカマキリなどの凶暴でおっかないモンスター相手には敵わない。一応倒せるが、奴らは奇襲してくるため、そのせいで多数の仲間が死んじまった。今は休めるスペースがあるため、そこで休んでいる。
この部分の日記を読み、ライアはコスタにこう言った。
「昔からキリサキフィッシャーとかいたみたいだね」
「湿気があるし、奴らにとってはここがいい住処みたいね。エスデレートカマキリがいたのは驚いたけど」
「あいつは固いし強いし、それに食べられないから嫌いなのよねー」
「同感。虫を食べるのは少し気が引く」
「俺たちは食べていたぞ」
と、ガイコツがこう言った。二人は引いたような目でガイコツを見た後、次のページを開いた。
シーポリスの奴らはまだ俺たちを追ってくる。道中にある仲間の死体を見て、俺たちが奥に逃げたと判断して追ってくるようだ。大したこともない洞窟だと思ったが、ここはいくつもの分かれ道がある。それを使えば奴らから逃げることができるが、下手したら迷子になっちまう。面倒だな。
宝を持って逃げる中、不意に船員の一人が声を出した。確か、手に入れた宝の中に死んだ後の怨念を強くさせる宝石があったと。死んだ後どうなるか俺たちが知ったことではない。今はとにかくシーポリスやモンスターから逃げたい。今日も仲間が逝っちまった。ああ、よく話をしていた奴も逝っちまった。奴と飲む酒は上手かったのに、チクショウ。
怨念を強くさせる宝石。この部分を見て、コスタはあることを思った。
「もしかして、この洞窟が罠だらけの理由ってこの宝石のせいじゃない?」
「かもしれないね。宝を求めてくる奴らを殺しまくるから、きっとリティーヒの怨念が強くなったのよ」
「それで、俺たちが骨になって蘇ったのか」
と、ガイコツがまたも話に割り込んで来た。コスタは魔力の弾丸を使ってガイコツに向けて発砲した。ガイコツが悲鳴を上げた後、コスタはガイコツを踏んでこう言った。
「うるさいから話に割り込まないで」
「すみませんでした」
ガイコツが謝った後、二人は再び日記を読み続けた。
この洞窟は深い。深すぎる。この洞窟に逃げ込んで三日目だ。道はまだ続く。食料も水もなくなりそうだ。倒したキリサキフィッシャーの体を焼いて食べているが、奴らの体は固く、食えたものじゃない。エスデレートカマキリも焼いて食べようとしたが、奴の体を火であぶった瞬間に墨となって消える。周りの奴らは空腹と渇きで頭が混乱し始めている。幻を見ている奴もいる。船長も最初は気を張っていたが、死んでいく仲間や混乱する仲間を見て激しく動揺している。こんな船長の姿を見るの、初めてだ。
そんな中、新入りのロガンだけは何故か余裕だ。まるで、こうなることが予測していたように準備をしていた。本当にこいつは怪しい。問い詰めたいのだが、そこまでする体力が俺にはない。
ロガンが余裕なのを知り、二人は怯えるガイコツに近付いて話をした。
「ねぇ、ロガンってどういう奴か知っている?」
「知っているさ。小太りの剣士だ。戦っている時の姿を見たことはないが、大した腕じゃないだろう。それと、機械類には強かったな。あまり目立っていない奴だった。俺たちが死んだのは……五十年前だったかな? もう五十年も前だから奴もクソジジイになっているか、どこかで死んでいると思うぜ」
ロガンのことを聞き、ライアはコスタにこう言った。
「きっと、リティーヒの海賊団が全滅したのはロガンって人のせいだよ」
「そうね。とりあえず、日記を読みましょう。何かが分かるはず」
二人はそう話し、日記を読むのを再開した。
やっぱりそうだった。俺の予想通り、ここまでの出来事は全てロガンのせいだった。奴はシーポリスに俺たちの居場所を流し、襲撃してくるように頼んでいた。理由は宝。俺たちがシーポリスとドンパチしている間に奴は宝を独り占めにして逃げようと考えていたらしい。だが、海の上ではそんなことができない。考えた末、奴は島に上陸して逃げることを考えたのだろう。だが、予想外のことが起きた。奴の予想していたのはシーポリスと戦っている時に俺たちがダメージを受けて弱まることを予測していた。しかし、俺たちがシーポリスに反撃する力があると知り、焦っただろう。
その結果、洞窟に逃げ込んだ俺たちは仲間が死に、飢えでおかしくなり、壊滅状態になってしまった。その隙に奴は俺たちを裏切り、攻撃を仕掛けた。奴の剣の腕は一流ではなかった。三流以下だ。しかし、弱った俺たちじゃあロガンを倒すことはできなかった。船長が気合を入れてロガンに斬りかかり、奴の左腕を斬り落とすことに成功した。深手を負った奴は逃げ、俺たちは後を追おうとした。だが、上から岩盤が降って来て行く手を阻んだ。クソッたれ! もう少しで奴を殺せたのに!
と、書かれていた。それ以降のページには、何も書かれていなかった。




