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絶体絶命の中で


 カイトはラージュを守るためにエスデレートカマキリの前に立ち、反撃のつもりで刀を振るった。この反撃で鎌を斬り落とすことに成功するが、残った鎌がカイトに襲い掛かった。鋭い一撃はカイトの体に命中し、傷から鮮血が舞った。


「ぐ……がァァァァァァ!」


「カイト!」


 一閃を受けたカイトは悲鳴を上げながら後ろに倒れた。ラージュはすぐにカイトに近付き、傷の手当てを始めた。傷はラージュが思っていたよりも深く、流れる血も勢いは止まらなかった。ラージュは苦しそうな表情をするカイトを見て、深呼吸して手当の支度を始めた。


「頑張ってカイト。今すぐ治療するから!」


「あ……ああ……」


 ラージュは両手に魔力を発し、カイトの傷を魔力で治そうとした。その時、カイトの震える左手がラージュの後ろを指差した。


「ラージュ……後ろに……カマキリ野郎が……いる」


「え?」


 ラージュが後ろを振り向くと、そこには残った鎌を振り上げたエスデレートカマキリの姿があった。鎌が振り下ろされると同時に、瞬時にラージュは大剣を持って力を込めて振り回した。金属音がぶつかり合う音と、何かが壊れる音が響いた後、離れた地面にエスデレートカマキリの鎌が刺さった。


「ねぇ……私は今、とても大事な人を治療しているのよ。邪魔しないでくれる? カマキリ野郎さん?」


 魔力を開放し、片手で大剣を握るラージュの姿を見て、カイトは少し恐怖心を覚えた。だが、エスデレートカマキリは恐怖心よりも両手の鎌を失ったことに怒りを覚え、ラージュに向かって奇声を発し始めた。


「何言っているのか分からないわよ、カマキリ野郎。文句があるなら、ちゃんと人の言葉で話しなさい!」


 と言って、ラージュは怒りに任せて大剣をエスデレートカマキリの頭に振り落とした。強烈な一撃はエスデレートカマキリの頭を粉砕し、砕けた頭部から血が噴出していた。渾身の一撃を受けたエスデレートカマキリは周囲を千鳥足で歩いた後、その場に倒れた。


「これで邪魔者は消したわ。さぁ、治療しましょう」


「あ……あ……まだ……」


 治療を再開しようとしたラージュだったが、カイトがまた後ろに指を指し、何かを訴えた。後ろを見ると、そこには仲間であろうエスデレートカマキリの群れがいた。


「嘘……だろ……あんな奴が……こんなたくさん……いるなんて……」


「かかって来るなら相手になるわ。まだムカついているし、憂さ晴らしにもなる! ちょっと待っててカイト。あいつら全員ぶっ潰してくるから!」


 と言って、ラージュは大剣を構えた。ラージュが戦う気があると察したエスデレートカマキリの群れは、一斉に襲い掛かった。ラージュは力に任せて大剣を振るい、目の前にいるエスデレートカマキリの両腕を斬り落とした。その後、地面に突き刺さったエスデレートカマキリの鎌を持ち、別のエスデレートカマキリの体に突き刺した。


「あら。この鎌ってあんたの甲殻貫くほど鋭いのね。ならよかった。これなら、楽にあんたらを倒すことができるわね」


 と言って、ラージュはエスデレートカマキリの群れに攻撃を仕掛けた。それなりの治療を受けたカイトはラージュが暴れる様子を見ていたが、その時のラージュを恐ろしく思っていた。笑いながらエスデレートカマキリの鎌でエスデレートカマキリの体を切り裂き、地面に倒れてあとは死ぬだけのエスデレートカマキリに対し、容赦なく首元に鎌を突き刺してとどめを刺す。襲って来た別のエスデレートカマキリを見て、即座に鎌を使って首元を斬り落とし、斬り落とした首を別のエスデレートカマキリに向かって投げて動揺させ、その隙に斬り刻む。という、野蛮で非人道的な戦い方をラージュは行っていた。


「ほ……本当に医者なのか……この人?」


 と、カイトは目を開いて驚きながら呟いた。そんな状況でも、怒りで半分我を忘れているラージュはエスデレートカマキリに対して非道な攻撃を続けていた。




 数秒後、エスデレートカマキリの返り血で染まったラージュがカイトの治療を始めた。


「遅くなってごめんね。でも、あのカマキリたちはもうこの世にいないわ。意識はある? 返事ができるなら返事して」


「ある。可能であれば、意識は失いたい」


「どうしてよ? 何か悪いものでも見たの?」


「鏡を見て、今の状況を見てくれ……」


 カイトの言葉を聞き、ラージュは治療を止めて手鏡で自分の顔を見た。そして自分の体がエスでレート過巻の返り血で染まっていることを知って、少し照れた。


「ごめんなさい。こんな格好になっていたなんて。我を忘れて暴れちゃったわ」


「血が固まったら動けないんじゃないのか? 着替えとかあるのか?」


「あるわよ。私のサービスシーン、見たい? ま、こんな状況だから嫌だと言っても見せるけど」


 と言って、ラージュは血まみれの服を脱ぎ始めた。カイトは顔をそむこうとしたが、顔を動かした時に痛みが走ったため、顔を動かすのを止めた。


「動かないで。傷は深いから。少しでも動いたら傷が開くわ」


「ら……ラージュ。その恰好は……」


 服を脱いだラージュは、かなり際どい服で治療を始めていた。肩は見えていて、ズボンも動きやすいのだが、ホットパンツと同じ長さ。そして胸元がかなり大きく開いていた。そんな過激でセクシーな衣装のラージュを見たカイトは顔を赤く染めながら、ラージュにこう言った。


「せ……せめて服ぐらい身に着けてくれよ! これじゃあ照れて俺が何もできないよ……」


「これしか服を持ってきていないの。セクシーな姿だけど……興奮して手を出してもいいのよ。カイトなら許可してあげるわ」


「興奮したら余計傷が広がる。俺を殺すつもりか?」


「そうね。でも、服は汚れを取って濡れているから、乾くまでこの状態でいさせてね」


 セクシーな衣装のラージュはそう言って、治療を行っていた。カイトは周囲の空気が冷えていることを察し、恥ずかしそうにラージュに話しかけた。


「この辺り、空気が冷たいから風邪ひくぞラージュ。リュックの中に防寒具とかないのか?」


「大丈夫よ。さっき暴れたから体が暖かいの。それに、私そこそこ体温高い方だから冷えた所にいても大丈夫なのよ」


「そんなこと言っても俺は不安だ。俺のリュックの中に防寒具があるから、それを使ってくれ」


 そう言ってリュックを取ろうと動いたカイトだったが、痛みが走ったせいでカイトの顔が歪んだ。ラージュはカイトの頬を触り、声をかけた。


「無理しないでカイト。私の体は大丈夫よ。それに、魔力もまだ残っているから、それを利用して体を温かくすることもできる。治療はもうすぐで終わるわ。けど、すぐには動けないからその間、一緒に寝ましょう」


「は? それって……」


 ラージュの最後の一言を聞き、カイトは嫌な予感が走った。それが何なのか聞き出そうとしたのだが、その前にラージュは魔力を抑えた。カイトは体中の痛みが消えたことを知り、治療が終わったと把握した。


「はい。治療は終わり。少し疲れたから……横にさせてね」


 と言って、ラージュはカイトの隣で横になり、カイトを抱きしめた。セクシーな服を着たラージュを見て、カイトは恥ずかしさのせいで顔が真っ赤になり、また傷が開くのではと思った。


「ら……らららららラージュ。もうちょっと、露出を控えた服を着てくれないか? 防寒具を使えばそれなりに肌を隠すことができるんだから」


「私はこっちのほうがいいのよ。カイト、私の肌に直接触れて嬉しいんじゃないの?」


「恥ずかしいんだよ。あの、もうちょっと胸を……」


「こっちは見せても恥ずかしくないのよ。それ~」


 そう言って、ラージュは無理矢理カイトに抱き着いた。


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