魔力を打ち破る迷路を攻略せよ
セアンとケアノス、ロガンは迷路に迷い込んでしまった。手っ取り早く脱出しようと考えたセアンは壁を破壊し、通路を作りながら先に行こうとしたのだが、セアンが作った魔力の弾丸は壁に命中したと同時に消えてしまった。この光景を見たセアンたちは迷路の壁は魔力を吸い取ってしまう性能があると判断した。そのことを知ったセアンは、うなり声を上げていた。
「結構面倒な迷路だね、これ」
「地味に考えながら行動しないといけないわね。触ったと同時に、魔力を吸い取られるかもしれないわね」
セアンとケアノスはこう会話をしていたが、ロガンは周囲を見回していた。
「ロガンさん、どうかしましたか?」
「ここからはジジイの勘で動こうと思ってな。すまんが、ここからは別行動だ」
と言って行動しようとしたが、セアンがロガンの服を掴んでこう言った。
「一緒に行動しようよ。先走って一人で行動したら、迷子になっちゃうよ。そうなったら、私たちでも探し出すことができないよ」
「そうか? ワシは大丈夫なんじゃが」
「大丈夫じゃないよ。危険だよ。それじゃあ一緒に行こう!」
セアンはそう言って無理矢理ロガンを連れて行った。その時のロガンの表情は、不満げだった。
それから三人は迷路を歩いていた。その時、ケアノスはレイピアの鞘を使って地面に線を描いていた。それを見たセアンは不思議層にケアノスに聞いた。
「線なんて描いて、どうかしたのケアノス? 落書きするならもうちょっとましなものを描こうよ」
「落書きじゃないわよ。迷わないように道標を作っているのよ。こうやって線を付けていれば、一度来た道だって分かるでしょ?」
「ああ! 確かにそうだね! いやー、ケアノス頭いい!」
「どんな手段を使わないと、この迷路から脱出できないからね」
と、二人は話をしているが、ロガンが後ろを見てこう言った。
「無駄みたいじゃ。見ろ、砂が勝手に動いて線を消しちまう」
ロガンの言葉を聞き、ケアノスは後ろを振り向いた。砂が生きているかのように動き、ケアノスが描いた線を消してしまったのだ。
「嘘でしょ……砂も動くの?」
「あらま。小細工しちゃダメみたいだね」
セアンはため息を吐いてこう言った。
小細工が通用しないことを知ったセアンたちは、自分の記憶力を頼りに迷路を進んでいった。
「ねぇ、進んでいるのかな? 私、戻っているような気がするんだけど」
「分からないわ。戻っているとか考えないようにしましょう。とにかく進んでいるって思えば、気が和らぐわ」
「ケアノスの嬢ちゃんの言う通りだ。こういう状況で変なことを考えるものじゃない」
三人は互いに励ますように動いていた。難しく、迷いやすい迷路だったが、モンスターは襲ってこなかった。
「モンスターが来ないね。もしかして、モンスターも迷っているのかな?」
「ここを住処にしている奴らはこの迷路が危険な迷路だと察して、近付かないのじゃ。長年この洞窟を住処としているモンスターなら、察知することもたやすいじゃろう」
ロガンの言葉を聞き、ケアノスはロガンにこう言った。
「ロガンさん、あなたの長年の勘に頼っていいですか?」
「は? 私の勘を頼るのか?」
「その通りです。私たちはまだ子供です。海賊ですが。人生の経験上、勘はあなたが鋭いはずです。今は、あなたの勘に頼るしかありません」
「ワシの勘に頼るか……こんなかわいい子たちに頼られたら仕方ないの」
と言って、ロガンは前を歩き始めた。セアンとケアノスはその後ろから歩いた。そして数分後、三人の目の前に出口が見えた。
「これで出られたみたいだね。生きて出られて本当によかった」
「ふぅ、歩き疲れたよ。ロガンさん、ありがとう! 下手したら一生あの迷路の中でぐるぐるさまようことになってたよ」
セアンとケアノスはロガンに礼を言った後、歩き続けた足のマッサージを始めた。その時、近くの棺からガイコツが現れた。
「誰だ、お前らは? ここが俺たちの寝る場所と知って入って来たのか?」
「誰でもいい。半世紀ぶりに目覚めたのだ。久しぶりに大暴れしたいぜ!」
「ぴちぴち美少女と老い先短そうなジジイか……ジジイはさっさと倒して、後の美少女とお楽しみと行こうぜ!」
「そりゃーいい考えだ! うっしゃー! やる気出たぞ!」
その後、ガイコツの群れはセアンとケアノスに襲い掛かった。ガイコツの群れは錆びてボロボロのカトラスを持っていて、それらを振り上げてセアンたちの元へ向かって走って行った。
「あらま、変なのが出てきたね」
「出てきたね。じゃないわよ! 魔力も何も感じない状況でガイコツなんて出てくるの、おかしいわよ!」
「ま、罠だらけだし、何かがあってもおかしくないよ。さてと、歩いてばかりだったから……私も暴れたいのよね!」
と言って、セアンはカトラスとハンドガンを持ち、ガイコツの群れに向かって走って行った。ケアノスは呆れながらもレイピアを手にし、ガイコツに向かって走った。ガイコツはセアンが接近したのを確認し、ボロボロのカトラスを振り下ろそうとした。だが、その前にセアンがハンドガンでカトラスを狙って撃った。その結果、ボロボロのカトラスの刃は弾丸に貫かれて粉々になった。
「あああああ! 俺の相棒が!」
「ボロボロだから、簡単に壊れるに決まっているじゃない!」
と言って、セアンは悲鳴を上げたガイコツの頭を蹴った。ケアノスはレイピアを使い、周囲の骸骨に攻撃をしていた。あっという間に散っていく仲間を見て、ガイコツたちはかなり動揺していた。
セアンとケアノスがガイコツを相手に戦う中、ロガンは後ろの方へ行って避難し、隠れている岩の裏から二人の戦いの様子を見ていた。そんな中、ガイコツの一人がロガンを見て、動揺した。
「あいつは……ジジイになっても分かるぞ。あの裏切り者!」
カイトとラージュはガイコツを倒した後、先に歩いていた。カイトは刀を持ち、いつ何が起きてもいいように構えていた。
「何もなければいいな。さっきみたいなガイコツが地面から出てくるかもしれない」
「そう思っていると、何かが起きるわ」
「おいおい、不安になるようなことを言わないでくれよ」
「それもそうね。こんな状況だし、変なことを思わせるようなことを言うのは止めるわ」
そんな話をして、二人は呑気に笑い始めた。その直後、少し離れた所で足音と羽音が聞こえた。二人はすぐに武器を持って身構え、周囲を見回した。
「モンスターか? これって羽音だよな?」
「多分そうね。私たち以外で下にいる人はいなさそうだし」
「そうだな。ここに来るまでの間、人はいなかった。ここにいる人間は多分俺とラージュだけだしな」
静かに話をしていると、奥から大きなカマキリが現れた。体の大きさは通常のカマキリよりも大きく、カイトと同じくらいの大きさだった。足は太く、動くと人の足音と似た音が鳴り響く。その中で、カイトが一番注目したのは両手の鎌。まるで砥石で研いだかのように刃は綺麗である。
「でかいカマキリだな。あいつもモンスターか?」
「ええ。あいつはエスデレートカマキリ。通常のカマキリよりも早く、そして鋭い刃を持っているわ。気を付けて」
ラージュが話をした後、エスデレートカマキリは奇声を上げながら、二人に斬りかかった。二人は後ろにジャンプして攻撃をかわし、魔力を開放した。
「あいつに斬られたらただじゃすまないわ! 鎌に気を付けて戦って!」
「おう! とにかくやってみる!」
そう言って、カイトは水の魔力を発し、エスデレートカマキリに向けて放った。
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