夜の海での戦い
バンナーナ海賊団は夜襲を得意とする海賊である。船長のオウはピラータ姉妹の海賊船を確認すると、黒装束の部下にこう告げた。
「獲物を見つけた。お前ら、あの船に乗り込んで大暴れして来い!」
「イエッサー!」
部下たちは敬礼をして返事をしたが、オウが被っている帽子に銃弾が撃ち込まれた。
「え! いやあああ! 撃たれた、何か撃たれたけど! 俺、生きてるよね?」
「きゃあああああ! 船長が撃たれた!」
「あば……あばばのば~」
「やべー、一人ぶっ倒れた! おい、しっかりしろ!」
「よっしゃ、これで次の船長はこの俺だ! 皆、この俺に従え!」
「おい誰だ! 人を勝手に殺した奴は! 俺は死んでねーぞ!」
オウは撃ち抜かれた帽子を手にし、部下を見回した。だが、その隙にヴィーナスハンドから再び弾丸が放たれた。
「え? 何で! 俺たちの存在がばれてる!」
「くっそ、気付かれたのか。一度距離を取るぞ、舵をとれ!」
「ざーんねん! そんなことさせないよ!」
と、カトラスとハンドガンを持ったセアンがバンナーナ海賊船に乗り込んで来た。その後ろにはライアがいて、残念だったねと言いたそうな笑みを浮かべていた。
「うわ、ピラータ姉妹のセアンとライアだ! じゃあまさか……俺たちが喧嘩を売ったのは……」
「その通り! あんたらは私たちに喧嘩を売ったのよ!」
ライアはナイフを持ち、オウの部下を斬り刻んでいった。セアンとライアを見て、オウは部下にこう命じた。
「相手は二人だ! たった二人にやられるな! やられたらやり返せ、倍返しだ! 数は俺たちの方が上なんだ! 数で押し切れる!」
「すみません、この二人強すぎギャアアアアアアアアアアアアアアア!」
「俺たちだけじゃ止められギャアアアアアアアアアアアアアア!」
「助けて船ちょ……アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
攻撃を受けた部下たちは、次々と吹き飛ばされて行った。オウは圧倒的不利ということを察し、部下にこう言った。
「何とか頑張れ。俺はその間に奴らの船へ向かう」
「ちょっと、無茶ぶりは勘弁してください! 俺たちじゃああの二人を止めることはできませーん!」
「何とか頑張れ、命令だ! 船長の言う通りに従え!」
と言って、猛ダッシュでピラータ姉妹の海賊船へ向かった。その途中でコスタが放つ弾丸がオウを襲ったが、運よくオウに命中することはなかった。
「ピラータ姉妹! 貴様らの命運もここまでだ! バンナーナ海賊団船長、オウがお前ら全員斬り殺してくれるわ!」
オウは高くジャンプしてピラータ姉妹の海賊船に乗り込んだ。だが、刀を構えたカイトがオウに斬りかかった。
「ヒャア! 卑怯だぞ、貴様! 見えないところから反撃するだなんて!」
「夜襲をしようとした奴が卑怯とか言うな!」
「カイトの言う通りよ。あんたみたいな卑怯者、ここで倒してやるわ」
と、オウの背後に忍び寄っていたケアノスがレイピアを突いてこう言った。
「ニ対一……まずい、勝てるはずがない。逃げよう!」
勝てないと察したオウはマストに近付いて逃げるためによじ登った。その時、見張り台からコスタがショートソードを構えて落ちてきた。
「ええええええええええええええええ! そこに人いたの?」
「この船を傷つけることは許さない!」
コスタはそう言って、ショートソードでオウに攻撃をした。しばらくして、マストの近くから何かが落ちる音がした。
「コスタ!」
心配したカイトは、コスタの元へ駆け寄った。カイトの声を聞き、コスタはすぐに立ち上がった。
「ごめん、心配かけて」
「無事だったか。高い所から落ちたから、怪我したかと思って」
「ううん、怪我はないから大丈夫。魔力を使っていたから落下時のダメージはないわ」
安堵するカイトの顔を見て、コスタは少し笑顔になった。だがその時、下敷きになっていたオウが無理矢理起き上がった。
「ふんがァァァァァァ! 人の体の上でなんか変な雰囲気作るな! イチャイチャするな!」
「このおっさん、まだ生きていたよ。しぶといなぁ」
「死なないようにて加減したから。でも、怪我はしたと思うけど……まだ動くだなんて丈夫なおっさんね」
「俺様の体は丈夫だ、この程度の攻撃は……ちょっと痛かったけど、なんともないわい!」
と、自慢げにオウはこう言ったが、不機嫌な表情のルージュが注射器を持って、オウに近付いた。
「夜中に何バカ騒ぎしているのよ? 夜更かしはお肌の大敵なのよ。その辺分かっているのかムサ男?」
と言って、注射器をオウに刺して中にある虹色に輝く変な物体を注入した。
「えーと……何を入れたのですか? 変な色の液体が入っていたと思うのですが……」
「分からないわ。その辺にあったのを適当に持ってきたから」
「え? 適当って……」
その直後、オウは突如足を閉じ、両腕を肩の高さまで上げた。
「あの……どうなったのですかこれ? 動かない。体が思い通りに動かない!」
「うーん、何か動きが止まる薬を入れたみたい。まぁいいわ、これで静かになったし。それじゃあ、このおっさんの処理は任せたわ。ふぁ~あ」
そう言って、ルージュは欠伸をしながら再び寝室へ戻った。それと同じタイミングで、セアンとライアが戻って来た。コスタは戻って来たセアンとライアに向けて、こう言った。
「おかえりなさい」
「ただいまコスタ。いやー、夜中に敵が来るなんて思わなかったよー」
「でも、バンナーナ海賊団は全員やっつけたよ。明日、近くの島に向かってこいつらの賞金貰おうよ!」
「賛成。それじゃあ、倒した連中全員牢屋に入れておいてね。私とカイトは見張りを続けるから」
と言って、コスタはカイトの方を見た。カイトが頷いた後、二人はマストの上の見張り台へ戻って行った。
「ふぅ、船が傷付かなくてよかったな」
「そうね。たまにこの船を狙う奴もいるから、気を付けないと」
コスタはそう言うと、カイトの方を見た。コスタの視線に気付いたカイトは、コスタに近付いた。
「どうかしたか?」
「今の相手が初めて戦った相手だよね?」
コスタの言葉を聞き、カイトは思った。バンナーナ海賊団が最初に戦った海賊であると。
「そうだな。初めて人……人間相手に刀を向けたな……」
「人に対して戦うって行為をすることができないって人がいるけど、カイトは普通に戦えたわね」
「あの時は……皆が傷付かないように無我夢中だったな。人と戦うかもしれないって考えると……ちょっと引くなと思ったけど……悪い奴や皆に危害を与えそうな奴が相手なら、戦う」
コスタはカイトの言葉を聞き、不安そうな表情になった。
「私たちのために戦ってくれるのはありがたいけど、無茶はしないでね。カイトは私たちの仲間なんだから」
と言って、カイトの手を触った。不安そうなコスタの顔を見て、カイトは安心させようと笑みを作り、コスタにこう言った。
「分かった。その時は、コスタや皆に頼るかもしれないけど……いいか?」
「うん。存分に頼ってよ」
笑顔を作って、コスタはカイトにこう言った。
その日の朝、セアンはバンナーナ海賊団を連行して近くの町へ向かった。バンナーナ海賊団にかけられている賞金を手にし、笑顔で船に戻って行った。
「ただいまー。見てー、奴らの賞金結構高かったよ~。あんな馬鹿な奴らに二百万も値打ちがあった何て思わなかった~」
「セアン、静かにしていて」
と、本を読んでいるケアノスがこう言った。セアンが窓から部屋を覗き、静かにしてと、言われた理由を察した。夜通しで見張りをしていたカイトとコスタが、仲が良さそうに一緒のベッドで眠っていたからだ。
「ふふっ、こりゃまた失礼」
セアンはそう言って、賞金が入った札束を持って別の部屋へ向かった。
海賊がメインの話なので、海の上では他の海賊が現れてカイトたちに襲い掛かります。海賊同士の戦いはパイレーツオブカ〇ビアンみたいなのを想像してくれればいいんですが、魔法と言うか、魔力と言うファンタジー要素も入っているので、銃弾や砲弾の中に混じって魔法が飛び交う海上戦ってのをイメージしてくれればオッケーです。
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