落ちた先で
穴に落ちてしまったセアンとケアノス、そしてカイトとラージュ。カイトたちと離れ離れになってしまったセアンとケアノスは落ちた先で地面に激突し、痛そうな顔で立ち上がった。
「お尻痛い……はぁ、こんな子供じみた罠があるなんて」
「ホント、こんな罠にかかるなんて私たちもまだまだね。でも、死ぬよりはましね」
「そうね。結構な高さあったから、体の打ちどころが悪かったら死んでたよ」
二人が話していると、近くに座り込んでいる老人が声を出した。
「おや、上から嬢ちゃんが落ちて来たようだね」
「ん? おじいちゃんも穴に落ちたの?」
老人の存在に気付いたセアンが言葉を返すと、その老人は笑いながら答えた。
「いや、ワシはここで一休みしているだけじゃ。穴には落ちとらんよ」
「一休みって……こんな物騒な所で? モンスターがうじゃうじゃいるかもしれないのに?」
「先走ったのはいいものの、若者には勝てん。それに、ワシは運がいいからモンスターに襲われなかった」
老人はそう言って、前を見た。セアンとケアノスも老人と同じように前を見ると、床には足跡があった。
「私たちより先にここに来た人がいるのね。こんな奥深くまで来てたんだ。ここでぼさっとしていられないわね」
焦りを覚えたケアノスだったが、老人は前を見ながらこう言った。
「嬢ちゃんたちは落とし穴に落ちたようだが、洞窟というのは下へ行くもの。ある意味近道できたというわけじゃ」
「穴に落ちたのはラッキーとして考えろというわけか。確かにその通りだね」
セアンは落とし穴に落ちたことをポジティブに考えた後、ケアノスにこう言った。
「行こう。もしかしたら、皆も先に行っていると思うし」
「ええ。おじいさんはどうしますか? 私たちは先に進みますけど」
ケアノスは老人にこう尋ねると、老人は笑いながら答えた。
「こんなジジイの相手をしてくれるなんて嬉しいの。それじゃあ、お言葉に甘えるとするか」
老人は腰を上げると、二人に近付いてこう言った。
「ワシはロガン。年老いた冒険家じゃ。よろしく」
セアンとケアノスはロガンと共に行動を始めた。ロガンは年老いた冒険家と言っているが、どうしてこのリティーヒの宝が眠る洞窟に来たのかセアンは気になった。
「ロガンさんはどうしてこの洞窟に?」
「皆と同じじゃ。宝がると聞いて魂が震えあがったのじゃ」
「魂ねぇ。冒険家としての魂があるのかしら」
男というのは年老いてもロマンティックな生き物なのかとケアノスは思ったが、ロガンは話を続けた。
「実は、皆がこの洞窟のことを知る前にワシはこの洞窟に宝があると睨んでいたのじゃ。じゃが、わけあってここへ来ることができなかったら、今こうやってこの洞窟へ来たというわけじゃ」
「へー。勘が鋭いのね。他にもいろんな宝の話とか知ってる? もしよかったら教えてほしいなー」
目を輝かせながらこう言うセアンを見て、ケアノスは止めなさいと言って止めた。ロガンはコント見たいな掛け合いをするセアンとケアノスを見て笑いながら話をした。
「ジジイは弱い生き物じゃが、経験がある生き物じゃ。長年生きてきた勘と直感でそう感じたのじゃ」
「ほう。とりあえず、生きていれば自然と勘と直感が鍛えられるというわけね。納得」
セアンは感心してロガンの話を聞いていたが、ケアノスは本当にそうなのかと少し怪しく思った。その時、ロガンの左腕を見てケアノスは驚いた。
「あの……失礼な話ですが、左腕がないのですね……」
「お? おお、見えてしまったか。少しえげつない光景を見せてしまったようじゃな。スマンスマン」
と言って、ロガンはマントで隠れていた左腕の部分をセアンとケアノスに見せた。そこには左腕はなかったのだ。
「腕が……」
「若い時の事故でやっちまってのぉ。ま、これで長年生きてきたから今は慣れちまったがな」
そう言ってロガンは笑い始めた。話しながら歩いていると、目の前に川が現れた。
「川か……海に近いから川みたいなものがあるみたいだね」
「小さな滝もあるし、そこから下へ水が流れているみたい」
ケアノスは近くにある小さな滝を見てこう言ったが、水の中に混じって剣や矢、弾丸が流れているのを見た。
「あれ? 何で武器が流れているのかしら?」
「誰かがモンスターと戦ったゴミか、使い捨てで捨てたのかな?」
「こんな使える武器を捨てる? 見てよこれ、刃こぼれどころか剣に傷はないわ」
ケアノスは川に流れる剣を拾い、セアンに見せた。セアンは剣を手に取り、近くで剣を調べた。
「ありゃ本当だ。新品みたい。まだまだ使えるのになー。もったいない」
「何か事情があったのじゃろう。それか、上にキリサキフィッシャーがいたじゃろ? あいつらは人の肉は食うけど、武器とかは食べない。奴らが捨てた武器が水の流れに乗って、ここまで流れてきたのじゃろう」
ロガンの言葉を聞き、セアンとケアノスは納得した。そんな中、セアンは手にした剣をしまっていた。
「ま、とりあえず貰っておこう。あとで売り飛ばして少しでもお金にしよう」
「死んだかもしれない人が持っていた剣を売るとか言わないの。罰が当たっても私知らないわよ」
「大丈夫。きっと別の人に渡って使ってくれるのを見て安心すると思うよ」
「安心する要素が一つもないじゃないの。本当にもう」
セアンの行動を見て、ケアノスは呆れてため息を吐いていた。それから、セアンは流れてくる武器を拾い始めた。
その後、セアンたちは先を歩いた。しばらく歩くと近くを流れていた川も見えなくなり、壁に囲まれた通路になった。その通路になってから数分後、セアンたちは不自然に部屋の形になっている場所へ到達した。
「何だかここだけ部屋みたいね」
「休憩部屋……じゃあなさそうね。何のために存在しているのか分からないわね」
「そうじゃのう。不思議な空間じゃ」
ロガンは周りを見渡すと、驚きの声を上げた。セアンとケアノスは、ロガンが驚いた理由をすぐに理解した。周りには海賊と冒険家の死体が転がっていたからだ。
「何じゃこいつら、皆死んでいるのか?」
「傷はないけど、返事がないからそのようね。でもどうして?」
ケアノスが死体を調べる中、セアンは何かに気付いて大声を上げた。
「皆! 先に急ぐよ! 早く!」
「え?」
「どうかしたのか?」
セアンの慌てる声を聞き、ケアノスとロガンはキョトンとしたが、その直後に入って来た場所に大きな壁が現れた。
「まさか……下から壁が生えてくるとは……」
「下から何かが来る音が聞こえていたの。前に道があったけど、そこも塞がれた」
「私たち、また罠に引っかかったの?」
「どうやらそうじゃの」
ロガンがそう言うと、再び下から何かが迫る音が聞こえた。その音はセアンとケアノスの耳にも届き、二人は床に耳を押し当てた。
「まずいの。この音は水のようじゃ」
「罠にかかって水攻めにされて、窒息死したみたいだね、この人たち」
と、セアンは死体となった海賊と冒険家を見てこう言った。ケアノスは慌て始めたが、セアンとロガンは冷静に周りを見回した。
「ただの罠じゃないよ、これ。きっと壁をどかす何かがあるはずだよ」
「所詮は岩でできた壁。それなりに魔力があれば壊すことができる」
二人の言葉を聞き、ケアノスは冷静を取り戻した。その後、ケアノスは壁を調べ、二人にこう言った。
「結構分厚い壁よ。魔力を使っても、壊せるかどうか判断が難しいわね」
「上等。どんな壁でもぶち壊す! ケアノス、ロガンさん、危ないから私から離れてて!」
セアンはハンドガンに魔力を込め、魔力の弾丸を放った。
ビューティフルパイレーツは主人公カイトとピラータ姉妹五人のヒロインと、六人のメインキャラがいます。この数はそれなりに人気があった幼なじみと一緒に異世界転生と同じ数です。主人公一人に対してヒロイン多数ってのはよく見るパターンですが、新作とか書くときにはヒロインの数を減らそうと思っています。理由は出番にばらつきがあるからと、設定を考えるのが難しいから。多数ヒロインをパッと考える人がすごいと思います。
好きなマンガのジャンルはバトルとギャグと少しエッチな奴です。そんな作者ですが、この作品への高評価とブクマをお願いします。




