宝が眠る洞窟の前で
翌朝、酒の臭いにやられてダウンしていたカイトとケアノスが目を覚ました。
「ふぅ……調子は戻ったようだ。まだちょっとくらくらするのが気になるけど……」
「私も。やっぱり私って、姉妹の中で酒が弱いようね。セアンたちは酒場に行ってもピンピンしているのに、私だけグロッキー」
「そうだな。俺も弱い方だ。お互い、酒場へ行ったときは注意しないとな」
「そうね。今後、お互い苦労しそうね。この体質が治ればいいんだけど」
「治ったとしても、酒は飲まないようにしよう。飲んだらどうなるか……」
「確かに。匂いに慣れればそれなりになると思うからね」
二人はそんな話をしながら着替えをし、セアンたちがいるリビングへ向かった。二人が扉を開けたと同時に、ライアは二人が来たとセアンたちに伝えた。セアンはカイトとケアノスを見て、安堵の息を吐きながら近付いた。
「気分は戻ったみたいだね。よかった。今度酒場に行くって時は留守番しててね」
「悪いな、心配かけさせて。とりあえず、隊長は元に戻ったから」
「今度行く時は留守番するわ。慣れるまでわね」
「その方が安心ね」
と、コスタが静かにこう言った。その時、カイトは隣に停船していたワッキードモ海賊団の船が消えていることに気付いた。
「なぁ、隣にいた変な名前の海賊団は帰ったのか? いつの間にか船がないんだけど」
「うん。実は……」
その後、二人はセアンから早朝にワッキードモ海賊団が去って行ったことを伝えた。カイトは昨日のワッキードモ海賊団が船長の棺を持って洞窟から戻って来たことを思い出した。
「結構危険な洞窟みたいだな。あの海賊団、船長が死んだから今後どうなるんだろう」
「確かにあの人たちのその後が気になるわね。でもま、似たような危険な洞窟は何回も探検しているし、この前もサビナの島で創造の力を手にしたから余裕だよ」
ライアはパンを食べてこう言ったが、ラージュがため息を吐いた。
「ライア、あの時はあの時。今回探検する洞窟はどんな危険があるか分からないわよ」
「ラージュの言う通り。余裕ぶっていると危険があった時に……」
「コスタ、そこで言葉を止めるのを止めて。なんか怖い」
ライアは青ざめた表情でこう言った。その時、セアンはこの場の空気を換えるように手を鳴らし、カイトたちにこう言った。
「お宝がある以上、私たちはあそこに行かなければならない。皆の力を合わせれば、洞窟攻略なんて楽勝! 皆がいるから大丈夫!」
皆がいるから大丈夫。その言葉を聞き、カイトは少し気が楽になった。それからカイトたちは支度を終え、リティーヒの宝が眠る洞窟へ向かった。
リティーヒの宝があると言われる洞窟の前には、多数の海賊や冒険家が集まっていた。誰が先に洞窟に入るかで揉めているようで、怪我をして倒れている人もいた。
「あらまぁ、血の気が高い人ばかり。誰が先に行くかで揉めなくてもいいのに」
「それだけお宝が欲しいのね。まぁ、私たちも他の人から見たら同じような人間だと思われるでしょう」
半ば呆れた感じでラージュとコスタがこう言ったが、ケアノスが小声で私たちも同類と呟いた。そんな中、カイトたちの存在に気付いた一部の海賊がカイトたちの方に振り返り、驚いた。
「うわっ! ピラータ姉妹の海賊団だ! 本物だ!」
「マジかよ、こんな所に来るなんて! あいつらも話を聞いてここに来たのか!」
「あいつら、俺たちの首を狙ってここまで来たのか!」
「違うだろ、俺たちの首には千ネカだぞ。子供の小遣い以下だぞ……はぁ」
カイトは海賊たちが恐れるような表情と声を上げるのを見て、セアンにこう聞いた。
「俺たち、結構恐れられているみたいだな」
「結構海賊狩りやっているからね。それで私たちを恐れているみたい」
二人が話をしていると、巨大なサーベルを持った巨漢な男が現れた。
「俺の名はギャイアンド海賊団のデカッス! 海賊狩りの海賊共! ここでお前らを倒せば海は楽しくなる! だからくたばれ!」
と言って、デカッスはセアンとカイトに襲い掛かった。セアンは右手にカトラスを持ち、素早く振るった。セアンのカトラスはデカッスの巨大なサーベルの刃を斬り落とし、その隙にカイトが刀を装備してデカッスの首元に刃を近付けた。
「騒ぐなよ、デカブツ。俺、一応病み上がりだから腕が震えてるんだよ。下手に動くと、どうなるか分かるよな?」
「は……はい……調子こいてすいませんでした」
デカッスは震える声でこう答えると、その場に座り込んだ。セアンは周りの海賊や冒険家を見て、大声でこう言った。
「誰も洞窟の中に入らないなら、私たちが先に行くから! 邪魔だからどいて!」
この声を聞き、海賊と冒険家は一斉に洞窟から離れた。だが、一部の海賊と冒険家はセアンの声を聞いて逆に闘志を燃やした。
「はっ! お前らみたいなガキに宝を取られてたまるかよ!」
「リティーヒの宝は俺たちの物だ!」
「恐れるな! 先に行くぞ!」
「宝を見つけるのは我々だ! お前、行くぞ!」
「さーて、俺っちも行きますかっと」
闘志を燃やした海賊と冒険家は、先に洞窟へ入ってしまった。先走る者を見て、残った者は小さく呟いた。
「うわー、勇気あるな。帰ってくればいいんだけどな」
「俺たちは無理だ。帰ろう」
「命あっての何とやら。そう簡単に死にたくないよ」
「俺たちもだ。ここは大人しく帰ることを選択しよう」
「俺たちはクールに去るぜ」
そう言って、帰って行ったが、セアンたちは恐れることもなく洞窟に入って行った。
ジョルニアの港は暖かかったが、洞窟の中は少し肌寒かった。カイトはくしゃみをし、周りを見回した。
「結構寒いな。上着持ってくればよかった。下手したら風邪ひくぞ、これ」
「そうね。うへぇ、予想外だよ、この寒さ。こんなに寒いだなんて聞いてないよ」
セアンも寒さで体を震えさせながらこう言った。その時、後ろから騒ぐ声が聞こえた。ケアノスは後ろを振り返り、後から海賊と冒険家が洞窟に入って来たのだと察した。
「私たちがきっかけで、後から来たみたい。セアンがあんなことを言ったから、皆目の色が変わっているわよ」
「ライバルが増えて大変だ。早く行こう。早く行かないと、宝を横取りされちゃう」
セアンは急いで先に行こうとしたが、前から先に向かった海賊と冒険家が悲鳴を上げて戻って来た。
「どうかしましたか? 奥で何かあったのですか?」
コスタは何があったのか尋ねようとしたが、海賊と冒険家は質問に答えず逃げてしまった。どうしたのだとセアンたちは思ったが、しばらくして何があったのか理解した。目の前からは、人のような魚のモンスターが現れたのだ。
「な……何だ、ありゃ? 魚なのか? 人なのか?」
異形のモンスターを見て、カイトは訳が分からずこう言うと、セアンはカトラスとハンドガンを持って答えた。
「半魚人のモンスター、キリサキフィッシャー。あいつらのヒレは新品の刃のように鋭いの」
セアンの答えを聞いた後、カイトはキリサキフィッシャーを観察した。ヒレは赤く染まっており、ヒレの先には赤い水滴が落ちていた。
「どうやら、あいつらが先に洞窟に入った人を殺したようだね」
「住処を荒らされたから、気が立ったようね。ヒレを振り回してやる気をアピールしているわ」
「あいつらは普段は大人しいけど……暴れたら止められないって聞いたわ。こうなった以上、戦いをやるしか選択はないわ」
ケアノスたちの言葉の後、怒り狂うキリサキフィッシャーがカイトたちに襲い掛かった。カイトは刀を持ち、迫って来るキリサキフィッシャーを睨んだ。
洞窟探検をするときの話は、危険なモンスターや危なっかしい罠をいくつか考えます。そういう展開が一番面白いと自分で思っているからです。インディジョーンズとか見た影響かなー。
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