宝がある島、ジョルニア
朝早く出港する予定だったカイトたちだったが、寝坊して遅れてしまった。カイトたちはヴィーナスハンドに乗り込み、急いで出港したカイトとピラータ姉妹の航海が再会したが、最初は慌ただしかったが、時間が経つにつれて落ち着きを取り戻して冷静になった。
出港して二日後、賞金首には遭遇しなかったが、モンスターに襲われて撃退しながらもヴィーナスハンドは無事にジョルニアへ到着した。舵を取っているセアンは港の周りを見て、どこに船を停めようか考えたが、すでに多数の船が港に停まっていた。
「ありゃま、結構いるね。停めるところがないよ」
「そうね。宝の話を聞いていろんな所から来たみたいね。今回の宝探し、ライバルが多そうね」
ケアノスと話しながらセアンは周りを見ていると、ライアが声を上げた。
「おーい! あそこなら停まれるよ! ヴィーナスハンドの大きさなら、大丈夫かも!」
「おおっ! 教えてくれてありがとう! じゃあ早速そっちに行くね!」
セアンは急いでライアが見つけたスペースに船を停めた。だが、船を動かした時に波が発生し、隣の船が少し揺れてしまった。
「おわっ! 何だ! 地震か?」
「イダッ! あだだ……ベッドから落ちちゃった……」
「地震じゃねーよ、誰かが隣に停泊したんだよ。その衝撃で波が発生したんだよ」
「おいおい! 人が寝ている時に騒ぎやがって! どこのバカ野郎だ!」
船が揺れたため、中で寝ていた船員が目を覚ましてしまった。ヴィーナスハンドがその船の隣に停まってしばらくした後、隣の船から武器を持った船員が現れた。
「お前らか! 人が寝ている時に船を揺らしやがって!」
「俺たちの安眠を邪魔した罰だ、しばいてやる! 覚悟しろよ!」
怒りが爆発している船員を見て、カイトは少し焦った。だが、船員はヴィーナスハンドに描かれている紋章を見て、動揺した。
「ゲェッ! ピラータ姉妹! なんてこった!」
「こんな所に来るなんて……まずい、俺たちの首が目当てか?」
船員の話を聞き、ケアノスはタブレットを手にし、賞金首のリストを確認した。コスタはタブレットを覗き込み、目の前の船員の賞金を見ようとした。
「ねぇ、あの人たちまだリストに出てこないの? 腕に自信があるようだから、それなりに暴れていると思うけど」
「結構下に流しているけど、なかなか出てこないね……あ、出た」
ケアノスとコスタは相手の賞金を確認し、ため息を吐いた。
「たった百ネカ。それだけの価値じゃあ、たいして強くないわね」
「しょぼ。子供のお小遣いの方が高いよ」
この言葉を聞き、相手の船員は再び怒り出した。
「おい、お前ら! 変なサイトで確認しただろ!」
「俺たちワッキードモ海賊団はそれなりに知名度がある……はずだ……多分」
最初はいい声を発していたワッキードモ海賊団の船員だが、次第に自信を失って言葉が小さくなった。カイトは自分たちの価値がそんなにないことを知って自信を失っているワッキードモ海賊団を見て、セアンにこう聞いた。
「セアン、こいつらどうする? 戦う?」
「これから忙しいし、雑魚の相手は止めよう。それよりお宝! そっちの方が大事だよ!」
その後、雑魚を無視しようとセアンの提案を受け、カイトたちは町へ向かった。だがその前に、セアンはワッキードモ海賊団の船員に向かってこう言った。
「そうだ、留守番している時に私たちの船、ヴィーナスハンドに近付いたら……どうなるか分かっているよね?」
セアンの言葉を聞き、ワッキードモ海賊団の船員は妙な緊張感と恐怖を覚えた。
カイトたちは町に出て、洞窟の情報を探し始めた。港に大量の船がいるせいで、人混みができていた。これなら情報がもらえるだろうとカイトは期待していた。
「さーてと、どこから行こうか。人がいるからぱって情報が集まるかもしれないな」
「確かにね。でも、普通に話しかけていたら情報は集まらない。情報集めならあそこしかない」
と言って、セアンは酒場に向かった。ここに向かうのかと思いつつ、カイトはセアンの後を追いかけた。酒場の中に入り、カイトは充満している酒の臭いを嫌がり、鼻をつまんだ。
「うへぇ、くせぇ。情報を手に入れたらすぐに出ようぜ」
「我慢しましょう。私も酒の臭い、嫌いだから……オエェ……意識が飛びそう」
カイトと同じように鼻をつまんだケアノスがこう言った。少しでも酒の臭いから身を守るため、二人は店の端にいた。だが、セアンたちはお構いなしにカウンターへ向かった。
「ねえ、リティーヒの宝がある洞窟って知らない?」
セアンの質問を聞いたバーのマスターは、すぐに答えた。
「この町の港の端に洞窟がある。そこにリティーヒの宝があると言われている。場所は……今なら人がたくさんいるからすぐに分かると思うぞ」
「港の端ね。分かった。それじゃあ……オレンジジュース六杯頼んでもいいかしら? 未成年だから、お酒は飲めないの」
「いいだろう。オレンジジュース六杯だな」
その後、マスターはオレンジジュースをグラスに注ぎ、セアンたちに渡した。セアンとライアはおいしそうに飲んでいたが、カイトとケアノスは酒の臭いのせいで、酒を飲んでいるように感じた。
情報を手にした後、一度セアンたちはヴィーナスハンドに戻って来た。その理由は酒の臭いで体調を崩したカイトとケアノスの治療のためである。
「二日酔いってこんな感じなのか……くらくらする」
「頭痛い、目が回る、体がだるい、気持ち悪い……」
「酒に酔ったと言っても、臭いでやられただけだから明日には治るわ。それまでの辛抱よ」
と、ラージュがベッドの上に眠っている二人にこう言った。その時、ラージュは窓から外を見て、傷だらけで帰って来る海賊団を見つけた。
「あら、酷い傷」
「どうかしたの、ラージュ?」
「隣のワッキードモ海賊団の人たちが戻って来たけど、すごい傷なの。あら、あれは棺桶? 死人も出たのかしら」
「物騒なことを言わないでくれ……えぐいことを言われると吐き気がする」
「ごめんなさいね。でも、本当に棺桶を引きずっているのよ」
ラージュがそう言うと、外に出てくるセアンの姿が見えた。ラージュは窓を開けて、セアンにこう言った。
「丁度良かったわ。セアン、その人たちの話を聞いてくれない? 何かいい情報が入るかも」
「分かっているから大丈夫! 任しておいて!」
ラージュの言葉を聞いて反応したセアンは、片手を上げて返事をした。セアンはワッキードモ海賊団に近付き、話しかけた。
「私たち、隣に船を停めたピラータ姉妹だけど、あそこの洞窟で何かあったの? 酷い傷だし、死人もいるし」
「ぐ……それは……答えたくない。あの時の光景を思い出してしまう!」
船員の一人が苦しそうにこう言う中、別の船員が洞窟内でのことを思いだしたのか、頭を抱えて叫び始めた。
「まずい、あの時のことを思い出しやがった!」
「俺が何とかする。おい、船長の棺桶を船に運んでくれ!」
「分かった! おーい! 誰か手伝ってくれ! 船長の遺体が入っているんだ、丁寧に扱ってくれよ!」
その後、別の船員たちが声をかけながら船長の遺体が入った棺桶を、自分たちの船に運んで行った。トラウマを思い出した船員は頭を抱えて叫びだし、別の船員が落ち着くようにその船員をなだめていた。この様子を見て、トラウマになり、死人が出るほどの危険な洞窟なのかと、セアンは察した。カイトとケアノスは船員たちの声を聞き、明日から自分たちはとんでもなく恐ろしい洞窟に行くのだと思い、もう少し二日酔いもどきが続けばいいと心の中で思った。
海賊が関係する話なので、よく敵の海賊が敵として出てきます。その時の名前はかなり適当に考えています。敵の名前は適当でいいんだよ。倒したら基本的には出番ないんだし。
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