力の行方
セアンの一撃で、像を倒すことができた。なのだが、攻撃を受けた像は崩れてしまい、カイトたちを巻き込んでしまった。心配したコスタとラージュだったが、カイトたちは無事であった。その後、カイトたちはコスタとラージュと合流した後、傷の手当てを受けていた。
「イッテェ!」
「カイト、じっとして。すぐに終わるから大丈夫よ」
ラージュは消毒液を染み込ませたスポンジをカイトの体に当てていた。石像から落下した際、カイトの体にはいくつもの擦り傷ができたのだ。
「イテテテ……こりゃまた派手にやっちまったな。傷だらけだ」
「あの高さから落ちて命は無事だった。その分魔力が強くなったのよ。まぁ、怪我はするけど」
ラージュはカイトの治療をしながらこう言った。そんな中、カイトはあることが気になってラージュに尋ねた。
「なぁ。もしかして魔力が強くなれば、その分体も強くなるのか? 普通だったら、あの高さから落ちたり、奴の瓦礫に巻き込まれたら死んじまうけど」
「そんな感じね。魔力を鍛えるとその分体も強くなる。その逆もそう。筋トレとかしたら魔力も強くなるわ。だけど、魔力に関してはまだ判明していないこともあるのよ。まだまだ研究中って感じよ」
と言って、ラージュは救急箱を閉じた。カイトは服を着て、瓦礫の山と化した像を見た。セアンたちが像の上に登って何かないか調べている。まだ何かを調べているので、何も見つけていないとカイトは思った。
「俺も向こうに行ってみるよ。皆で探せば何か見つかるだろうし」
「それじゃあ私も行くわ」
会話後、カイトとラージュはセアンたちの元へ向かった。ケアノスは二人が来たことを察し、振り返った。
「カイト、傷の手当はもういいの? 動いて大丈夫?」
「ああ。動けるから大丈夫。心配してくれてありがとよ」
「擦り傷が数か所あっただけよ。命に別状はない。それよりも、この瓦礫の中から何か見つけた?」
「何もない。創造の力ってのは一体何なのか分からないし……」
ケアノスがこう答えた直後、セアンが何かを見つけたのか叫んだ。カイトたちはすぐにセアンの元へ向かい、何を見つけたのか尋ねた。
「何か見つけたの?」
「これ見て。何かすごい力を感じるよ」
と言いながら、セアンは手にしている青い宝石をカイトたちに見せた。セアンの一撃で崩壊していなかったとカイトは思ったが、欠けている箇所を見てセアンが手にしているのは欠片の一部だと察した。
「欠片の一部か? もしかしたら、他にもあるかもしれないな」
「そうだね。細かく粉々になってなければいいんだけど。うーん……ちゃんと直せばいくらになるかな」
セアンがこう呟いた直後だった。瓦礫の隙間からいくつもの青い光が発し、宙に浮いたのだ。それをみたコスタとライアは声を上げ、腰を抜かした。
「うわあ! 急に変な光が!」
「一体何なの? まさか、あの像はまだやる気なの?」
「やだもー、また戦うの? こっちはくたくたなのにー」
ケアノスはまた戦いになるのだろうと思い、武器を構えた。ライアはため息を吐いてナイフを構えたが、その直後にセアンが手にしている宝石の欠片も青く光り、宙に浮いた。
「ああ! 勝手に動かないでよ! 私たちの宝石なのに」
「そんなこと言っている場合じゃないわよ! セアン、構えて!」
ケアノスの声を聞き、セアンは武器を構えた。青い光はバラバラになっていたが、一つになるように集合し、更に強い光を放った。あまりの強さに、カイトたちは目を防いだ。光が止んだ後、形が元に戻った青い宝石が宙に浮いていた。それを見て、セアンはカトラスを向けてこう言った。
「何? まだやる気なの? だったら最後まで付き合うけど?」
「お主らの力を認めよう。自由に創造の力を使うがよい」
青い宝石はこう言って、セアンの手に戻った。セアンは青い宝石をしばらく見て、こう言った。
「そんな訳の分からない力なんていらないよ。私はこれ以上この島に厄介な連中を引き寄せたくなかっただけ。だからさ……あんたの力はもう必要ないよ」
「島を守るためか? そのために、この力を放棄するわけか?」
「そうだよ。あんたの力を求めて悪い奴がここに来て暴れる。この島はそのせいで傷付いた。あんたがいたから……」
セアンの言葉を聞いた青い宝石は、少し間を開けてこう言った。
「そうか。だが、私の力は消えることはない。消すこともできない。だが、お主がこの島を守りたいのであれば、そのために創造の力を使え。力があれば、大切な何かを守ることができる」
と言って、青い宝石は光を止めた。セアンたちはしばらくその場に立っていたが、カイトが口を開けた。
「とりあえず戦いは終わったからさ、外に戻ろうぜ。上にいる人たちも、みんな心配しているだろうし」
「うん……そうだね。一度戻るか」
その後、カイトたちは外に出て行った。戻る中、カイトはまたあの試練が待ち受けているのだろうと思ったのだが、そんなことはなかった。試練が起きた部屋に入っても、何も起きなかったのだ。
「俺はてっきり何か起きると思って身構えていたんだが……」
「きっと、主を倒したから試練と言うか、罠は作動しないのよ。それに、創造の力は私たちが手にしたから、もうここはただの洞窟になったかもしれないね」
カイトの言葉に対し、セアンがこう言った。カイトは確かにと思いながら、周囲を見回してセアンたちと共に洞窟から去って行った。
洞窟から出たセアンたちは、洞窟で起きたことを役場の役員に伝えていた。創造の力を使える宝石があったことを役員は知らなかったが、セアンたちの話を聞いてこう言った。
「なら、この宝石の言う通りに創造の力をこの島のために使いましょう」
と言って、役員は宝石を持って外に出た。カイトたちはその後について行き、何をするか見守った。
「創造の力よ、傷ついたサビナを再生してくれ!」
そう言って、役員は宝石に力を込めた。だが、何も起こらなかった。
「あれ? 魔力を使ったけど、島が戻らない。自分の魔力が足りないのかな?」
「多分その通りだと思うわ。島を戻すには、それ相当の魔力が必要だと思うの。貸して」
セアンが宝石を借り、魔力を込めようとした。その時、カイトやコスタたちも宝石に手を触れた。
「私たちの力があれば、島を元に戻すだけの魔力はあるでしょう」
「俺も力を貸すぜ。皆の力を合わせればきっと戻る」
「皆……ありがとう」
セアンは涙目になって、カイトたちを見回した。そして、カイトたちは魔力を込めて宝石に手を触れた。その瞬間、瓦礫があった場所から建物が現れた。それをきっかけとし、次々と建物が現れた。島の人々は見慣れた建物が現れたのを見て、驚きのあまり目を開けて固まっていた。だが、島が戻っていることを把握して歓喜の声を上げていた。
「これは……あいつらが来る前の島の光景……」
「元に戻るのに時間がかかると思ったのに」
「おお! こんな素晴らしいことが起きるだなんて! ありがたい! ありがたい!」
創造の力により、崩壊していたサビナの島の町々が蘇った。この光景を見た役員は泣き始めた。
「よかった……これでサビナが元に戻った……この光景を再び見ることができるなんて……思わなかった……」
「終わったわけじゃないよ。建物は戻っても……死んだ人は戻らないから」
セアンの言葉を聞き、役員は涙を流すのを止めた。建物は戻った。しかし、ブラッディークローの襲撃によって奪われた命までは戻らない。
「そう……ですよね。建物が戻っただけですから」
役員は両親を失ったセアンたちを見て、静かにこう言った。
長かった創造の力の像との戦いですが、何とか終わりました。どんな強い人にも弱点は必ずあります。無敵ってのは言葉だけで、存在はしません。基本的にそんな考えで小説を書いています。
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