美しき海賊団のその後
カイトたちはエンズを倒した数日後、メリスたちシーポリスに見送られながら再び旅立った。セアンはリビングの机の上にある手配書を見て、ケアノスの方を向いた。
「ケアノスー、この周辺にギンナギって名前の海賊がいるんだよ」
「そいつの賞金は高い?」
「百万ネカ。政治家や富豪やら金持ち連中の船を襲ってるって」
「それで賞金が高いのね。で、海賊機の特徴は?」
「横を向いた頭蓋骨で、頭に剣が刺さってる」
「それって、あいつのことじゃないの?」
話を聞いていたコスタが話に割って入った。セアンは外に出て望遠鏡を覗き、横を向いた頭蓋骨で頭に剣が刺さっている海賊気を見つけた。
「噂をすれば何とやら。皆、いっくよー!」
セアンの声を聞いたケアノスは狙いの海賊に向かってヴィーナスハンドを動かした。騒動を察したカイトは刀を持ってセアンに近付き、周囲を見回した。
「敵か?」
「賞金首を見つけたの。百万だよ百万」
「結構高いな。そいつらは強いのか?」
「金持ち連中を襲うからそれなりに強いはず」
「けどさ、私たちの方が強いよ」
笑いながらライアがやってきた。だが、ラージュはため息を吐いてこう言った。
「油断は禁物よ。エンズより強い奴がいるかもしれないわ」
「ラージュの言う通り。そろそろおっぱじめるよ!」
セアンはそう言って、左手に持つハンドガンを敵の海賊船に向け、発砲した。
エンズ討伐から十年が経過した。サディはウイークの墓参りをしていた。
「あんたが死んで十年以上。早いわね、時が経つのって」
と言って、サディは手にしていた花をウイークの墓に供えた。
「最初は寂しかったけど、今はそうでもないわ。皆も相変わらず元気だし、孤児院の子も元気に育ってる。忙しいから、あんたが死んで悲しむ余裕もないわ」
笑みを浮かべながらサディはそう言った。その後、バックに入れていた新聞をウイークの墓に見せるように広げた。
「これ見て、サビナの国のニュース。復興し終えたって」
サディはそう言って、少し間を開けた。その間、風が優しく吹いていた。
「あの子たち、ようやく目的を達成したのよ。ブラッディクローを倒した後もずーっと動いてたのよ。本当に頑張ってたわ、あの子たち」
サディは笑みを浮かべた後、新聞をしまった。
「それじゃ、私は孤児院に戻るわ。ゆっくり話す暇がないくらい忙しいのよ。ちょっとしか会えないからって、化けて文句を言わないでよね」
と言って、サディは去って行った。
サビナの城。過去にブラッディクローによって攻撃され、滅茶苦茶になってしまったのだが、十年経った今では、創造の力やセアンたちが集めた金のおかげで復興した。復興成功、および国としての機能を再開すると発表するため、サビナは会見を開くことになった。そこには、各国の代表がいた。その周りには、新生シーポリスの戦士がいた。
「シーポリスがうじゃうじゃいますね」
「これなら、何が起きても大丈夫だな」
各国の代表はひそひそと話を始めた。そんな中、新生シーポリスの戦士たちが扉の方を向いて敬礼した。そこには、新生シーポリスの代表となったメリスがいた。その姿を見た各国の代表は驚いた表情をし、口を開いた。
「あれは新生シーポリスの代表、メリス」
「彼女がここにくるとは……」
「聞いたことがある。メリスはピラータ姉妹と交友があると」
「確か、かつて存在した極悪海賊団、ブラッディクローを協力して倒したと言っていたな」
そんな会話をする中、司会者が現れた。
「皆様、本日はサビナ王国復興、及び再起動の会見にきていただき、ありがとうございます。それでは、会見を始めます」
司会者がこう言った後、ドレスを着たセアンたちが会見の場に現れた。奇麗なドレスを身にまとい、歳を重ねて美しくなったセアンたちを見た各国の代表は、口と目を大きく開けて見とれていた。そんな中、セアンがメリスを見つけ、笑顔になった。
「おーい! メリスー! きてくれたんだねー!」
「ちょっとセアン、今は会見中よ。王女なら王女らしい態度をしなさいよ」
メリスは顔を赤くしてこう言った。この光景を見た各国の代表は、小さく笑っていた。そんな中、ケアノスが咳払いをして口を開いた。
「お見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ありません。では、これからのことをこの会見で……」
「ママー。何やってるのー?」
と、後ろの扉から小さい子供が現れた。それを見たコスタは驚き、その子供に近付いた。
「マグナ。どうしてここに? カイトはどうしているの?」
「カイト父ちゃんの隙を突いてここにきたのー」
コスタは実の子、マグナを抱きかかえながら困惑して周囲を見回した。そんな中、別の子供がやってきた。
「すげー。おっさんがいっぱいだー!」
この言葉を聞いたライアは顔が赤くなり、頭を下げながらその子に近付いた。
「スライス! そんなこと言っちゃだめだよ! と言うか、カイトと一緒に待ってなさいって言ったのに、どうしてここにくるの?」
「僕、やっぱりママと一緒にいたーい」
ライアはもう一度各国の代表の方を向き、何度も頭を下げた。その時、突如破裂音が響いた。各国の代表は驚き、シーポリスの戦士たちが武器を構えて周囲を見回した。メリスはすぐに犯人を見つけ、その姿を見てため息を吐いた。
「このいたずらっ子は誰の子?」
「げェェェェェ! ブルー! 何やってんのよもう!」
セアンはメリスが捕まえた女の子に近付き、呆れてため息を吐きながらしゃがんだ。
「今日はお偉いさんがいっぱいやってくるから、大人しくしてなさいって言ってたのに」
「だって暇なんだもん。お父さんにいたずらしても、すぐに飽きちゃったんだもん」
「お父さんにいたずら? ちょっと、カイトに何かしたの?」
「やっと見つけましたわ!」
「やんちゃ坊主たち、大人しくしなさいよ」
と、セアンたちの後ろに扉から二人の女の子と、ボロボロになって二人の子に抱えられているカイトの姿が現れた。カイトは各国の代表を見て頭を下げ、小さくこう言った。
「お見苦しいを見せてしまい、申し訳ありません……」
「すみませんお母様。やんちゃたちを止められませんでした」
「あとでお母さんから教えられたきついお灸をやっときます」
ケアノスとラージュはその子に近付き、頭を撫でた。
「いいのよスカイ。あなたたちは騒動を止めようとした」
「ミラ、あなたとスカイでカイトを助けたのね。ありがとう」
「悪い、隙を突かれて押入れに閉じ込められた」
カイトは悔しそうにこう言った。カイトの姿を見たマグナとスライスは逃げようとしたのだが、コスタとライアが二人の前に立ちはだかった。
「今は会見中だから叱りたくないけど」
「あとでいろいろと言うからねー」
その言葉を聞いたマグナとスライスの顔は青くなり、大人しくなった。メリスはため息を吐きつつ、ボロボロになったカイトに近付いた。
「久しぶり。五人の子供を相手にするのは大変みたいね」
「ああ。いたずらっ子が三人もいると大変だ……」
「セアンたちが王女の仕事をするから、一人で子育てを頑張ってるのね」
「ああ……だけど、そこまで苦じゃないよ」
カイトはセアンたちとの子供を見ながら、ほほ笑んだ。
それから会見はちょっとしたいたずら騒動があったが、一応予定通りに終わった。会見が終わった後、カイトはリビングでお茶を飲みながらセアンたちと話をしていた。
「これから忙しくなるな」
「大丈夫。海賊稼業で鍛えた体とメンタルがあるわ!」
「いろいろあったから、何が起きても大丈夫よ」
セアンとコスタの言葉を聞き、カイトは微笑んだ。ケアノスはカイトの横に座り、騒ぐ子供たちを見た。
「昔は悲惨だって思っていたけど、今は幸せ」
「家族がいるからね」
「あとは、王女としての仕事を全うするだけよ」
ライアとラージュが笑顔でカイトに近付いた。セアンたちの顔を見て、カイトは転生前のことを思い出した。両親を失い、そこから幸せとかけ離れた人生を送っていた。だが、転生してセアンたちと出会い、カイトは心の底から幸せだと思った。カイトたちはセアンたちを呼び、同時に抱きしめた。
「ありがとな、皆」
カイトはセアンたちにこう言って、優しく抱きしめた。
今回の更新で、ビューティフルパイレーツは最終回です! 長い長い間、応援ありがとうございました! この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!




