創造を壊せ
セアンは叫び声を上げながらエンズに接近し、高く飛び上がってハンドガンを撃った。エンズはセアンをバカにしたような笑みを浮かべ、創造の力を使って自身の前の地面から無数の盾を作り、放たれる弾丸を防いだ。だが、セアンはその盾を足場として使いつつ、エンズに近付いてカトラスを振り下ろした。カトラスの刃はエンズの頭に命中したが、大きなダメージを与えることはできなかった。
「痛そうね、カトラスが頭に突き刺さってるわよ」
「ダメージを与えたってのに、嬉しそうな表情じゃないわねぇ。どうしてなのぉ?」
「その程度であんたが死ぬわけないだろうって思っているからよ」
「ご名答」
エンズは魔力を開放し、近くにいるセアンに向かって無数の雷を発した。攻撃を察したセアンは後方宙返りをしながら後ろに下がり、エンズが放った雷をかわした。
「あら。あなた意外とダンスが上手なんじゃない?」
「結構鍛えているから、できるようになったんだと思うわ」
セアンは無数に飛んでくる雷をかわしながら、バカなことを言うエンズに言葉を返した。しばらくして、コスタが放った弾丸がエンズに飛んできたが、エンズは自身の周りに壁を作り、弾丸を防いだ。
「サイレンサーを付けても意味ないわよー! 私、こう見えても鼻がいいの。音はなくても銃を撃った後の独特な臭いは消えないわー!」
エンズの大声を聞いたコスタは舌打ちをし、スナイパーライフルをしまってショートソードを手にして姿を現した。そんな中、カイトの治療をしていたケアノスたちがコスタと合流した。
「あんな奴の挑発に乗っちゃダメよ。皆で行くわよ」
「うん」
「俺も回復した。だから、心配すんな」
カイトの顔を見て、コスタは少しだけ安堵した。
エンズは迫ってくるカイトたちを見て、気味が悪い笑みを浮かべていた。
「あらあらあらあら。数で私と戦おうって言うの? どれだけ人数をそろえても、無駄なものは無駄なのに」
そう言った直後、カイトたちは武器に魔力を込め、衝撃波を放った。エンズは放たれる衝撃波をわざと喰らい、ダメージを受けていない様子をカイトたちに見せびらかすように見せた。
「ざーんねーん! キャハハハハハ! あんたらがどれだけ魔力を込めても私にはぜーんぜーんききましぇーん!」
「おばさんの癖に子供みたいに笑っちゃって。気持ち悪いのよ!」
セアンはそう言いながら、エンズの首の下に向かってハンドガンを撃った。弾丸はエンズの首の下を撃ちぬいて穴ができたのだが、その穴はすぐに塞がった。
「どう? 私を倒すのは無理よ」
「化け物」
セアンはそう言って、エンズに向かってカトラスを振り下ろした。エンズは左手の小指でセアンの斬撃を防ぎ、ドヤ顔をした。その直後、回復したカイトが上空から刀を振り下ろし、エンズの横から現れたライアがナイフを振るった。カイトとライアの同時攻撃は命中したが、エンズは受けた傷をすぐに治してしまった。
「隙を突いて攻撃したのね。でも、それでも私は倒れない」
「いちいちドヤ顔するんじゃねぇ。気持ち悪いんだよクソババア」
「いい加減倒れたら? 歳なんでしょ?」
「ふざけたことを言うガキねぇ。そんなことを言うガキこそ、いい加減倒れなさい」
暴言を吐いたカイトとライアに対し、エンズは創造の力で作った剣を放った。カイトとライアは飛んでくる剣をかわしたが、剣の勢いは早く、攻撃を受けてしまった。
「カイト! ライア!」
「大丈夫よ。あんたもすぐにあのガキのように串刺しにしてやるから!」
エンズはセアンに向かってそう叫び、セアンの下から巨大な刃を発した。危機を感じたセアンは急いでその場から離れたが、セアンの後を追うかのように次々と下から刃が現れた。
「うわァァァァァ! しつこいなァァァァァ!」
「あははははは! だったら諦めて串刺しになればいいじゃない! 諦めるのも大切よ!」
慌てふためくセアンを見て、エンズは笑いながらこう言った。その時、逃げるカイトとライアをコスタが助け、隙を突いて接近したケアノスがエンズの腹をレイピアで貫いた。
「あら。酷いことをする」
「しくじったわね」
そう呟くと、ケアノスは急いで後ろに下がった。ケアノスの攻撃に合わせるかのようにラージュが大剣を振り下ろしたが、エンズはその攻撃をかわした。
「あら残念」
「攻撃が当たらなくて? まぁ、狙ってた攻撃が当たらなかったのはショックよねぇ」
笑みを浮かべながら、エンズは後ろに下がった。だが、背後に忍び寄っていたコスタが背中からエンズをショートソードで突き刺した。
「あなた、狙撃はしないのね」
「敵にあれこれ言いたくない」
と言って、コスタは攻撃を終えてすぐにカイトたちの元へ戻った。セアンは息切れしながらケアノスに近付き、親指を立てた。
「ありがとう。何とか助かったよ」
「お礼はいいわ。こっちは謝りたいのに」
「隙を突いてコルボコントロールを狙って攻撃したのね。あいつ、多分ケアノスたちが狙ってたっての、察してたよ」
「私も。でなければ、あんなに余裕の態度を取らないわ」
セアンとケアノスが会話を終えた後、笑みを浮かべたエンズが魔力を開放した。
「お遊戯は終わりかしら? だったら、次は私の番ね!」
エンズはそう言って、両手を地面に叩きつけた。その直後、カイトたちの足元から無数の槍が現れた。
「うわっ! 滅茶苦茶に攻撃してきやがる!」
「もう何でもありだよ、あいつ!」
カイトたちは慌てつつも、攻撃をかわした。だが、槍は逃げるカイトたちを追うかのように伸びていた。
「伸びる槍? そんなの……創造すればありだな」
「こんな時でも冷静って、すごいわよカイト」
「まぁな。何でもありだから、少し慣れてきたし」
カイトとケアノスは冷静に会話をしながら、伸びてくる槍を破壊した。逃げていたセアンたちも何とか動けるスペースを見つけ、槍を破壊し始めた。それを見たエンズは笑いながら次の攻撃を仕掛けた。
「こんなチンケな攻撃で終わりだと思わないでね! 私の想像力は無限なのよ!」
エンズはそう言って、無数の兵隊を創り出した。兵隊はカイトたちに襲い掛かったが、カイトたちは魔力を開放して兵隊たちを吹き飛ばした。
「こんな雑魚を作ってばかりじゃ、私たちを倒せないよ」
「雑魚を作るのは止めろ。面倒なんだよ」
カイトとセアンはそう言ったが、カイトたちが人形との戦いに集中している間、エンズは創造の力で巨大な剣をいくつも創っていた。その剣はエンズの意のままに動き、すぐにカイトたちの周りに移動した。
「さーてと、これであなたたちもおしまいね。言っとくけど、魔力で破壊するとか考えない方がいいわ。創造の力は無限大。この剣は無敵ってことを考えながら創ったの。だから、お前らのチンケな魔力じゃ絶対に破壊できないの!」
と言って、エンズは剣を動かした。カイトたちは協力してバリアを張ったが、何層にも重なった分厚いバリアは、難なく破壊されてしまった。
「嘘! 結構強い魔力を使ったのに!」
「皆、とにかく防御して!」
「クッ! このままじゃ!」
カイトたちの悲鳴を聞き、エンズは大声で笑い始めた。この攻撃で、カイトたちが死んだと考えたからだ。
「あーらまぁ。中身も意味もない会話が最期の言葉になるなんてねぇ。さーて。あいつらの情けない姿の遺体を見ましょう。そうだそうだ。カメラも用意しないと」
エンズは創造の力でカメラを作り、カイトたちの元へ向かった。近付いた瞬間、砂煙の中から刃が飛んできて、エンズが持っていたカメラを破壊した。カイトたちはまだ生きている。そう察したエンズの顔に、笑みは徐々に薄れていた。
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