倒すためなら手段を選ばぬ
セアンは迫る人形を見ながら、カトラスを構えた。それを気にせず人形はセアンに近付き、右手で握っているカトラスを振り下ろした。
「人の動きをまねするだけで、取柄は他にないみたいね」
そう言いながら、セアンはカトラスを振るって人形が持つカトラスを吹き飛ばし、左手で握るハンドガンを人形に向けた。だが、人形も同時に左手のハンドガンをセアンに向けていた。
「考えることは同じ……だと思ったわけ?」
セアンはすぐに人形が握るハンドガンの銃口に向かって、弾丸を放った。人形もその動きから少し遅れて引き金を引いたのだが、その前にセアンが放った弾丸が銃口の近くに飛んできていた。しばらくして、セアンが放った弾丸は人形が持つハンドガンの銃口の入り口に入ったが、その中で弾丸同士が激突し、ハンドガンが破裂した。人形の顔や体に、ハンドガンの破片が勢いよく散らばなる中、セアンはその隙に人形に接近してカトラスを振るった。
「うォォォォォ!」
気合が入ったセアンの一閃が、人形に命中した。攻撃を受けた人形は痛そうな表情をして後ろに下がったが、セアンは人形に対して攻撃を続け、逃げる隙を与えなかった。
「逃がすと思うなァァァァァ!」
何度もカトラスを振り、セアンは人形にダメージを与えていた。しばらく攻撃を続けていたが、人形は途中で態勢を整え、カトラスを構えてセアンに反撃を仕掛けた。セアンはいずれ敵が態勢を整えて反撃するだろうと予測しており、そのためにどう動けばいいか、どう対処すればいいか考えて答えを出していた。
「反撃するって、私分かってたわよ」
セアンはハンドガンの銃口を人形の頭に向け、何度も引き金を引いた。放たれた弾丸は人形の顔を貫き、穴を作った。だが、すぐに人形の頭は再生された。敵がすぐに顔を戻したことを察したセアンだが、あることに気付いて笑みを浮かべた。
「あんた、さっきのダメージが出かかったんでしょ? 再生時間が長かったわよ」
セアンの言葉を聞いた人形は、戸惑ったような素振りをした。それを見たセアンは再び笑みを浮かべ、人形に接近してカトラスを振るった。セアンのカトラスは人形の右腕を斬り飛ばしたのだ。
「これであんたは攻撃できない。降参する……いや、あんたは口がないから降参って言えないわね。痛い目見ることになるけど、エンズの奴を恨みなさい」
と言って、セアンは魔力を開放して人形に攻撃を続けた。このまま攻撃を続け、敵を倒そうと考えたセアンだったが、思い通りの展開にはならなかった。敵は右腕を再生し、セアンの攻撃の隙を突いて右手でセアンの左頬を殴ったのだ。
「あぐあ!」
殴られたセアンは後ろに吹き飛び、転倒した。人形はすぐに転倒したセアンに近付き、左手でセアンの顔面を殴った。攻撃が当たったことを察した人形は笑みを浮かべ、そのままセアンを殴り続けた。
しばらく攻撃を受け続けたセアンだったが、攻撃の合間を縫って人形の拳を受け止め、魔力を開放しながら立ち上がった。
「このモノマネ人形……本当にイラつくわね。ぶっ飛ばしてやるわ」
セアンの魔力を感じた人形は恐怖を感じ、とっさに後ろに下がった。セアンは左手に持つハンドガンで人形に向かって何度も引き金を引き、人形の両足を撃ちぬいた。両足を撃たれた人形はバランスを崩して転倒してしまった。すぐに立ち上がろうとしたのだが、その前にセアンの飛び膝蹴りが人形に命中し、後ろに倒れた。
「残念だったわね。このままハチの巣になりなさい!」
そう言って、セアンはハンドガンに魔力を込めて何度も引き金を引き、地面の上に倒れた人形を穴だらけにした。しばらく撃ち続けた結果、人形はセアンの言葉通りハチの巣のように穴だらけになった。
「これで終わったらいいんだけど」
セアンがそう言った後、ハチの巣になった人形の体が塵となって消えた。戦いが終わったと確信したセアンは安堵の息を吐き、周りを見回した。
「他の皆はどうなったのかなー」
そう呟き、セアンはその場で横になった。しばらくして、戦いを終えたコスタたちがセアンに近付いた。
「そっちも終わったみたいね」
「ついさっき」
コスタに言葉を返し、セアンは立ち上がった。そして首を回した後、コスタたちにこう言った。
「さて、カイトの元に行くよ。無事だといいんだけど」
「そうね。早く行きましょう」
ケアノスの言葉を聞いたセアンたちは頷き、急いでエンズの元へ向かった。
セアンたちはエンズがいる塔へ向かい、再びエンズの部屋へ向かって走っていた。
「もー。またこの長い階段を上らないといけないのー?」
「文句を言わない。カイトが心配だわ」
ケアノスは疲れた表情のコスタにこう言った後、前を向いた。塔に入ってから、魔力を感じたり、魔力同士のぶつかり合いをケアノスは感じていない。そのため、ケアノスは戦いが静かに行われているか、それとも終わっているかのどちらかの状況になっていると考えていた。
無事に戦いが終わっていればいいんだけど……。
階段を走る中、ケアノスは心の中でこう思った。セアンも同じことを考えており、それとは別にカイト一人でエンズを倒せるのは難しいと思っていた。そう考えているため、走る速度がコスタたちより早かった。
セアンたちは無事にエンズの部屋の扉の前に到着した。セアンは呼吸を整えた後、扉を蹴って開けた。
「カイト! 今戻ったわよ!」
セアンはそう言ったが、目の前の光景を見て驚いていた。あとから到着したコスタたちもセアンと同じ光景を見て、同じように驚いていた。セアンたちの存在に気付いたエンズは、笑みを浮かべながら振り向いた。
「あら。意外と早かったわねー。あんたらのコピー人形が、こんなにあっさり倒されるなんて思ってもなかったわ」
そう言うと、エンズは後ろを指差して言葉を続けた。
「ああ。あれが見えたのね。素晴らしいでしょう? ああいうのを、芸術って言うのかしらね?」
エンズの後ろには、大きな壁に貼り付けにされているカイトの姿があった。カイトは上半身裸で、両手両足が動かないように大きな釘を打ち込まれていた。
「一人で私を倒せると思ったのかしらねぇ? ま、戦った結果がこれなんだけど」
と、エンズは笑いながらこう言った。セアンはエンズに向かって殴りかかった。怒りがこもった右ストレートはエンズの頬に命中したが、エンズは笑みを浮かべてセアンを見た。
「痛いわねぇ。いきなり右ストレートをぶちかますなんて、レディとして人としてどうなのかしらねぇ?」
「うるさい」
セアンは左手でアッパーを放ったが、エンズはこの攻撃を防御し、創造の力を使って巨大で鋭い釘を作り出し、セアンの左足を突き刺した。
「ウギャァァァァァ!」
「あらあら。さっきの勇ましさはどこへ行ったのやら」
エンズは笑いながらセアンの苦しむ表情を見ていたが、そこにコスタが放った弾丸が飛んできた。エンズは顔を後ろに反らして弾丸をかわし、コスタを睨んだ。
「酷いことをするわねー。このバカな長女と同じ血が通っているから、バカなことしかしないのかしら?」
「これ以上セアンを侮辱してみろ。次はお前の額を撃ちぬく」
「それじゃあやってみなさい」
「じゃあ遠慮なく」
コスタはそう言って、エンズの額に向かってライフル弾を放った。額を撃ちぬかれたエンズは後ろに吹き飛んだが、すぐに起き上がって笑みを浮かべた。
「ふふふ。これを見てどう思う? あんたの安値の弾丸が私の額を撃ちぬいても、私は生きている」
そう言って、エンズは高笑いを始めた。
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