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その笑みを崩せ


 エンズが作り出した人形は五体ある。そのうちの一体は大剣を手にし、ラージュに襲い掛かった。ラージュは人形の攻撃の衝撃でエンズの部屋から吹き飛ばされ、一番下の階に落とされた。だが、ラージュはダメージを負っておらず、すぐに迫る敵の攻撃を対処した。攻撃が防御されたことを把握した人形は後ろに下がり、大剣を構えた。


「悪いけど、容赦なく攻めるわよ!」


 と言って、ラージュは魔力を開放して強風を発し、人形を吹き飛ばした。強い衝撃で、人形は壁を破壊しながら外に飛び出した。ラージュはその後を追いかけて外に飛び出し、吹き飛ばされて地面の上を転がる人形に向かい、大剣を突き刺そうとした。しかし、動きに合わせて人形は起き上がり、ラージュの攻撃を回避した。


「そう簡単に倒されてくれないのね」


 軽々と宙に舞う人形を見て、ラージュは呟きつつ大剣を構えた。人形は大剣を片手で持ち、左手を前に出した。その直後、周囲には魔力で創られた無数の矢が現れた。


「嫌な技」


 現れた矢を見て、ラージュは小さく呟いた。その直後、無数の矢がラージュに向かって放たれた。ラージュは大剣を振り回して飛んでくる矢を叩き落とした。そんな中、ラージュは敵がどう動くか確認していた。


 こんなに矢を放って攻撃を仕掛けてくるんだ。隙を見て、接近してくるかもしれない!


 そう思っていると、ラージュの予想通りに敵は大剣を持ってラージュに近付いていた。ラージュはその時を待っていた。動くためには、一時的に矢を放つのを止めなければならない。矢を放ちつつ攻撃したら、魔力を使って攻撃できなくなるし、二つの行動を同時に行うなどできないからだ。


「隙あり!」


 攻撃のチャンスだと察したラージュは、力を込めて大剣を振り下ろした。大剣の刃は人形の頭に命中し、人形の頭部は大きくへこんだ。そして、この攻撃の衝撃で人形は大きく後ろに吹き飛んだ。


 攻撃後、ラージュは態勢を整えながら吹き飛んだ人形の姿を目で追っていた。まだ、人形から感じる魔力に似た力を感じるからだ。


「人形と言えど、それなりに知恵はあるようね。出てきなさい」


 ラージュがこう言うと、高く飛び上がった人形はラージュの近くに着地し、笑みを浮かべた。


「その気持ち悪い笑みをするのはやめて」


 大剣を振るいながら、ラージュはそう言った。ラージュの言葉に反して笑みをやめない人形は、左手でラージュの攻撃を受け止め、力を込めて左腕を払った。その時に発したのは、ラージュが予想していた力よりも倍以上も強い力だった。その衝撃でラージュは大剣こと大きく吹き飛び、遠くにあった建物に激突した。


「あぐあ……ぐう……」


 大きな力で建物に激突したせいで、ラージュは背中に大きなダメージを受けた。だが、すぐに治療して大剣を持って立ち上がり、笑みを浮かべて歩いて近付いてくる人形を見た。


「何か話したらどうなの? その口は、笑うだけにしか存在しないのかしら?」


 挑発するかのようにラージュはこう言ったが、人形は笑みを止めずにラージュに近付き、大剣を振り下ろした。


「私が言った言葉、こいつ理解しているのかしら?」


 攻撃を避けつつ、ラージュは一言も発しない人形を見て呟いた。攻撃をかわした後、ラージュは深呼吸をしつつ人形の様子を見て、大剣を構えた。攻撃を外したと察した人形は後ろを見て、ラージュがいる場所を把握し、大剣を構えた。


「私と力比べするつもりね」


 同じ構えをする人形を見て、ラージュはそう言った。その後、ラージュの大剣と人形の大剣が同時に振り下ろされ、刃がぶつかった。ぶつかった際に強い衝撃波が発生し、周囲にいるゾンビたちの残骸や、倒された兵隊たちの残骸が宙に舞い、海へ落ちた。


「やっぱり人形ね。それほど力はなさそう!」


 互いの大剣のぶつかり合いで、ラージュは人形にあまり力がないことを判断し、魔力を開放した。


「エンズの奴と戦う時のために取っておいたけど、少し使っても構わないわね!」


 そう言って、ラージュは力を込めて大剣を振り下ろし、人形の大剣を破壊した。笑みを浮かべていた人形だったが、破壊された大剣の刃の破片を見て、その口は驚きの口へと変わっていた。


「残念だったわね。数分で作られたから、そこまで賢くなかったようね」


 驚く表情をする人形を見て、ラージュはそう言った。そして、素早く大剣を構えて人形の頭部に向かって大剣を力強く振り下ろした。この一撃で人形の頭部はさらにへこみ、このまま倒すと決めたラージュは、もっと力を込めた。


「とっととくたばりなさい!」


 叫び声を上げながら、ラージュは大剣を振り下ろした。この一閃で人形は真っ二つとなり、二つに裂けた体は左右に崩れ落ち、塵となって消えた。人形が消滅したことを察したラージュは、安堵の息を吐きつつその場で座った。


「な……何とか勝ったぁ……」


 そう呟くと、ラージュは急いで体力回復を始めた。




 ライアは悲鳴を上げながら、壁を走っていた。


「うわァァァァァァァァァァ! 何なのあいつ? 笑いながら迫ってくるゥゥゥゥゥ!」


 ライアの後ろには、笑みを浮かべながらライアと同じように二本のナイフを両手で持つ人形がいた。しばらく走った後、ライアは後ろを振り向きつつ二本のナイフを同時に振るって衝撃波を出した。


「これを喰らって落ちろ!」


 迫る衝撃波を見て、人形は壁を強く蹴って衝撃波をかわした。それと同時に、上空からライアに襲い掛かった。


「そうくると思ったよ!」


 上から迫る人形を見て、ライアは壁から足を放し、そのまま落ちて行った。魔力を使って落下ダメージを抑えた後、ライアは上から落ちてくる人形を見て魔力を開放した。


「このまま斬る!」


 左手のナイフを逆手に持ち、上から迫る人形に向かって振り上げた。だが、落下してくる人形もナイフを構えていた。二人の攻撃は相殺し、その衝撃でライアは後ろに吹き飛んだ。


「あぐっ! あだだ……そう簡単に倒されてくれないかー」


 ライアは尻をさすりながら立ち上がり、砂煙を払いながら接近する人形を見た。


「ダメージを受けてないように見えるけど……しゃーないなー」


 ライアは呆れつつもナイフを構え、迫る人形を見た。


「悪いけど、次の相手がいるんだよね」


 と言って、接近してきた人形に向かって素早くナイフを振るった。攻撃を受けた人形は驚いた表情をしたが、その表情はすぐに笑みへと変わった。攻撃を終えたライアは小さく呼吸し、心の中で呟いた。


 斬ったけど、手ごたえがなかった。あいつ、斬られる寸前に防御した!


 ライアは察していた。攻撃を防御されたことを。人形はすぐにライアに接近し、左手のナイフでライアの背中を突き刺そうとした。ライアは高く飛び上がって攻撃をかわし、人形の背後に回った。


「で、次はどうするの?」


 地面に着地しつつ、ライアは人形にこう言った。人形はライアの方に振り向きつつ、右手で持っているナイフをライアに向かって投げた。ライアは飛んでくるナイフを魔力で使って粉砕し、人形を睨んだ。


「甘っちょろい攻撃で私を倒せると思わないでよね」


 そう言うと、ライアは素早く人形に接近して両手のナイフで人形の腹を突き刺した。これでダメージを与えたはずだとライアは思ったが、人形の表情を見てぞっとした。腹がナイフに刺さっているはずなのに、人形は笑みを浮かべていたのだ。


 これはまずい!


 危機を察したライアはすぐに後ろに下がった。その直後、破壊したナイフの破片がすごい勢いで人形の手元に戻った。


「武器を破壊しても無駄ってことか」


 再生したナイフを見て、ライアは呟いた。


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