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優しき戦士よ、永久に眠れ


 攻撃を与えても起き上がるゾンビサマリオを見て、セアンは苦痛の表情を浮かべていた。たとえ殺されたと知っても、エンズの手でゾンビにされたとしても、サマリオを攻撃するのは心苦しいのだ。


「サマリオ……」


 我を失い、自分たちに攻撃を仕掛けてくるサマリオを見て、セアンは涙を流し始めた。そんな中、ゾンビサマリオはセアンに向かって近付き、攻撃を仕掛けた。


「セアン!」


 何もしないセアンを見て、カイトはセアンの名を叫んだ。セアンは目をつぶり、左手に持つハンドガンの銃口をサマリオに向け、二発弾丸を放った。放たれた二発の弾丸は、ゾンビサマリオの額と左足の太ももを貫いた。弾丸を受けたゾンビサマリオは後ろに吹き飛び、倒れた。


「これで……やったのかな?」


 倒れたまま、動かないゾンビサマリオを見て、コスタが呟いた。だがその直後、ゾンビサマリオはゆっくりと起き上がった。


「頭を貫いたはずなのに!」


 起き上がるゾンビサマリオを見て、カイトは刀を構えた。起き上がったゾンビサマリオは、近くにいたメリスに襲い掛かった。メリスは盾で攻撃を防御し、剣でゾンビサマリオの体を突いた。


「すみません大佐。ゾンビとなってしまっても……あなたを攻撃するのは……」


 メリスはそう言いながら、後ろに下がるゾンビサマリオを見た。すぐに攻撃されるだろうと予測したメリスだったが、ゾンビサマリオがなかなか動かないので、不審に思った。ゾンビサマリオはメリスを見て、苦しそうに息を吐いていた。


「メリス……」


 突如、ゾンビサマリオの口からメリスの名が聞こえた。驚いたカイトたちはその場で立ち尽くしてしまった。サマリオはカイトたちを見回し、苦しそうに口を開いた。


「どうやら……セアンが放った弾丸が……奇跡的に……脳の一部に当たって……その衝撃で……ちょっとだけ……我に……戻ったようだ」


「サマリオ!」


 喋り出したサマリオを見て、セアンは思わずサマリオに近付こうとした。


「近付くな! 我に……戻ったのは……ほんの……一瞬……かもしれない……意識が……もうろうと……している。いつ……ゾンビになるか……分からない」


 と、サマリオは苦しそうにこう続けた。




 我に戻ったサマリオを見て、エンズは口笛を吹いていた。


「やるわねぇ。やっぱり魔力と体力、そして運が強いとちょっとだけ我に戻ることができるのね。でも、所詮はゾンビの体。いずれ元のゾンビになる。そして、肉体は朽ち果てる」


 映像を見ながら、エンズは笑みを浮かべていた。その後、エンズは近くの棚から未開封のワインボトルを取り、栓を開けて中身をグラスに注いだ。


「さぁ、見せて頂戴。奇跡的に我に戻ったバカな戦士が何を語るか」


 ワイングラスの中身を揺らしながら、エンズは小さく呟いた。




 サマリオはセアンたちを見回し、苦しそうに口を開いた。


「皆……ツリーが……いや、あいつが……元凶だと……知っているな」


「はい。エンズがツリーと偽名を使って、シーポリスへ潜入していたことですね」


「全知の剣……いろいろと……教えてくれたのだな」


 サマリオはそう言うと、突如近くにいたカイトに襲い掛かった。カイトは慌てつつも、刀を振るってサマリオを斬り飛ばした。


「それでいい……カイト君、もし……また私が攻撃してきても……その時は確実に……倒してくれ」


 サマリオがこう言うと、カイトは目から涙をこぼし、片膝をついて叫んだ。


「無理ですよ! これ以上……あんたを攻撃することはできない! セアンたちがその光景を見て、どう思うかあんたも理解しているはずだ!」


「理解できている。だが……私はあいつに殺され……ゾンビに……された。次にいつ……我を失うか……分からない。だから……私を……生かすな」


 サマリオはそう言うと、苦しそうに声を上げ、カイトに襲い掛かった。ケアノスはレイピアを構え、カイトに襲い掛かったサマリオを突き飛ばした。


「サマリオ……ごめん」


「謝るなケアノス。これでいい……」


 倒れたまま、サマリオはこう言った。その時、ラージュがサマリオに近付き、魔力による治癒を行った。


「まだ生きているのなら、魔力で治療ができるはず!」


「無理だ。私は一度死に……体は朽ち果てている。魔力で治癒をしても……体は元に戻らない」


「そんなこと言わないで!」


「ラージュ」


 ライアはラージュに近付き、サマリオから少し遠ざけた。ラージュは魔力を抑え、悔しさのあまり地面を殴った。セアンたちはサマリオに近付き、武器を構えた。


「そうだ……それでいい……」


「皆……」


 ラージュはカイトたちが、サマリオを倒して楽にするつもりだと考え、涙を拭いて立ち上がった。サマリオは涙を流すセアンたちを見て、苦しそうに再び口を開いた。


「もう……意識が……なくなり……そうだ。その前に……とどめを……」


「分かった。サマリオ……あなたにはいろいろと助けられたから、恩を返したかったけど……こんなことになって……」


「いいんだセアン。気にしないでくれ……」


「うん……」


 セアンは目をつぶり、少し間をおいてカイトたちにこう言った。


「皆、サマリオに別れを」


 この言葉の後、カイトたちは一斉にサマリオに攻撃をした。攻撃を受けたサマリオは笑みを浮かべ、小さくこう言った。


「ようやく……さっぱりした気持ちで逝ける。皆……あとは……頼むぞ……」


 サマリオがこう言った直後、サマリオの体は塵となって消えた。




 サマリオが命を落とした後、カイトたちはその場から離れなかった。セアンはカイトの背中に抱き着き、それから何もしなかった。


「泣いても……いいんだけど」


 カイトは小さくこう言ったが、セアンはカイトから離れてこう言った。


「今は泣いている場合じゃない。急ごう。早くエンズの奴を倒さないと」


 セアンの言葉を聞き、カイトたちは頷いた。その時、メリスが持つトランシーバーからシーポリスの戦士たちの声が聞こえた。


「聞こえますか、メリス少佐! 敵の増援が空から現れました! 我々だけでは対処できません!」


「了解。今すぐに戻るわ!」


 メリスは返事をした後、セアンたちの方を見た。


「皆、エンズのことを任せてもいい?」


「もちろん。メリスの分まできっちりと戦うから」


 ライアの言葉を聞いた後、メリスは頭を下げて部下の元へ向かった。その後、セアンはエンズがいる塔の方を振り向き、声を上げた。


「さぁ行くよ。皆でエンズの奴を倒して、いろいろと終らそう!」


 セアンの言葉を聞いたカイトたちは頷き、走って塔へ向かった。




 エンズはカイトたちが塔へ向かって走る光景を見ていた。飲み干したワイングラスを机の上に置き、エンズは身に着けている衣服を脱いだ。


「そろそろお楽しみの時間ね……準備しなくちゃ」


 そう言うと、エンズは創造の力を使い、ある物を作り出した。そしてそのある物を下の階へ移動させ、エンズは戦うための衣装へ着替えた。


「面白い戦いになりそうねぇ! ピラータ姉妹。ずっと私の影を追い続けた愚かな五つ子の姉妹! この私に歯向かおうとするその考えが間違いであったことを痛感するといいわ! そして異世界から転生したカイト! もう一度あなたを殺して別の世界へ転生させてあげるわ! その時は愚かな五つ子の姉妹も一緒よ! あはは! あははははは!」


 高笑いしながら、エンズは魔力を開放した。放たれた魔力の勢いで、周囲にあった物はすべて吹き飛び、飾ってあったカーテンも割れた窓から外へ吹き飛び、机の上に置いてあったワイングラスも勢いよく壁に叩きつけられ、粉々に砕け散った。


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