シーポリス完全崩壊
メリスは動揺していた。部下が自分とカイトたちを先に行かせるため、命令を無視してエンズが作り出した軍艦に突っ込む。そして、敵の攻撃がヴィーナスハンドに命中し、カイトたちもダメージを負った。そんな中でも、敵の容赦のない攻撃は続いていた。
「メリス!」
ケアノスの声を聞き、メリスは我に戻って周囲を見回した。
「ケアノス、無事だったのね」
「ええ。私、そしてコスタは別のところにいたから無事だったけど、セアンたちは……」
「一度、撤退しましょう」
メリスの言葉を聞き、ケアノスはメリスの部下たちが乗る軍艦を見た。
「彼らはどうするの? 自爆するつもり?」
「そのつもりだけど……見捨てるわけにはいかない! 私だけでも、彼らを助けに行くわ!」
そう言って、メリスは魔力を開放して部下たちがいる軍艦に戻ろうとした。だが、トランシーバーから部下の叫び声が聞こえた。
「メリス大佐! あなたはピラータ姉妹と一緒に戻ってください!」
「俺たちが時間稼ぎをします! あんたらが逃げ切ったら、俺たちも戻ります!」
部下の言葉を聞き、メリスは動揺した。だが、部下の声は続いていた。
「考えている時間はありません! 俺たちのことはいいから、早く戻ってください!」
この言葉を聞き、メリスは息を吸って大声を発した。
「これは命令よ! 何が何でも後で合流すること!」
「アイアイサー!」
メリスは部下の返事を聞いた後、ケアノスの方を振り向いてこう言った。
「近くの町に逃げて。私はカイトたちの治療をするから!」
「お願い!」
ケアノスはすぐに操舵室へ向かい、ヴィーナスハンドの向きを変えた。
攻撃を受け、逃げるヴィーナスハンドを見たエンズは、笑みを浮かべた。
「やはり弱小海賊団。弱い奴が私に歯向かうなど、愚かなことをする」
と言って、グラスに注がれたワインを飲もうとした。だが、メリスの部下たちが乗る軍艦を見て、苛立ちを露わにする表情になった。
「こしゃくな虫けらがまだいるわね」
そう呟くと、創造の力を使って新しい軍艦を作り、大声でこう言った。
「あの虫けらを塵にしてあげなさい! 私の力を見せつけるのよ」
作られた軍艦はランプを点滅させて返事をし、メリスの部下がいる軍艦に向かって進みだした。メリスは再び椅子に座り、笑顔で外の様子を見始めた。
メリスの部下たちは銃を使い、作られた戦士に攻撃を仕掛けていた。エンズが作った戦士は頑丈な鎧を身に着けているが、その割に素早い動きをしていた。
「グッ! こいつら重装備のくせに猿のようにすばしっこい!」
「創造の力で作られたんだ。何でもありってわけだ!」
「あーもう、卑怯だなクソッたれ!」
戦士の一人は叫び声を上げながら、力強く剣を振り下ろした。剣の刃は敵の胸に命中し、攻撃を受けた敵は苦しそうに動きながら消滅した。
「あら、こいつ一発で倒せたよ。あの鎧は見た目で騙してたってことか?」
「だからと言って油断するな! 敵はまだいる!」
仲間の声を聞き、敵が大勢でかかってきていることを知り、戦士は大声を上げた。
「こうなったらとことんやってやる!」
戦士の声を聞いた仲間は同じように大声を発し、迫ってくる敵に向かって走り出した。
銃や大砲が戦場を飛び交い、爆発音が周囲に響き渡る。そんな中で軍艦の上の戦いは続いた。メリスの部下たちが敵を攻撃する中、敵の増援が姿を現した。
「チッ、敵の増援か!」
「創造の力で何度でも戦士を作れるってことかよ!」
「なんでもありってわけか!」
戦士たちは次々と現れる敵を見て、舌打ちをしながらこう言った。そんな中、敵の激しい攻撃が始まった。雨のように降り注ぐ銃弾が戦士たちを貫いた。
「クソッ! こんなのありかよ! 悪い、盾にするぜ。あの世に逝ったら謝るからよ」
戦士は打ち抜かれて命を落とした仲間の死体を盾にし、敵の銃弾を防いだ。だが、銃弾の雨の次は、砲弾の雨が降り注いだ。
「なっ……」
戦士が動揺する中、砲弾は次々と軍艦の上に降り注ぎ、大爆発を起こした。
「撤退! 一度後ろに下がれ!」
仲間の声が聞こえ、戦士たちは急いで逃げ始めた。そんな中でも砲弾は降り注いだ。
「周りを見るな! とにかく前へ逃げろ!」
「ああっ! あいつが死んじまった!」
「とにかく逃げろ! 逃げるんだァァァァァ!」
戦士たちは仲間の死を乗り越えつつ、自分たちの軍艦に戻った。戦士の一人は乱れた呼吸を整えながら、敵の軍艦を見た。その様子を見て、戦士は驚いて声を漏らした。
「マジかよ、あいつら……仲間も巻き添えにしながら攻撃してやがる」
敵は味方がいるのに、問答無用で砲弾による攻撃を続けていたのだ。爆発によって、塵になる創造の力で作られた戦士の体を見て、その戦士は驚いていた。そんな中、アラーム音が鳴り響いた。
「敵が近付いている! しかも……大量にだァァァァァ!」
戦士は仲間の言葉を聞き、急いで外を見回した。そこには、無数の敵の軍艦がいた。
「マジか……」
無数の軍艦を見て、戦士は絶句した。別の戦士は仲間を見つけ、話しかけた。
「メリス大佐はどうなった? 無事に逃げ切れたか?」
「まだ連絡はない。だが、ヴィーナスハンドが逃げ始めて時間が経った。そろそろ俺たちも逃げよう」
「逃げたいが、敵は追いかけてくるだろう」
「じゃあどうする?」
戦士たちが話をする中、一人の中年の戦士が声を上げた。
「俺が囮になる。若い奴らは脱出用の船に乗って逃げろ」
「え? でも……」
「若い奴らは長生きしろ。俺みたいな人の命をたくさん奪った奴が、囮役にふさわしい」
その中年の戦士の声を聞き、戦士はどう返事をするか戸惑った。だが、抽選の戦士はすぐに大声を発した。
「バカ野郎! 悩む時間なんてありはしない! 早く逃げないと、あいつらが追いかけてくるぞ!」
「あんたはどうするんだよ! メリス大佐には、全員無事で……」
「敵の攻撃で何人かくたばっちまった! 約束は守るものだが、絶対に守れるものじゃねーんだよ! 早く逃げる支度をしろ!」
中年の戦士の一括を受け、戦士は急いで仲間に逃げる支度をしろと命令した。その後、他の戦士は急いで脱出用の船に乗り、敵に動きを悟られないように脱出した。一人軍艦に残った中年の戦士は笑みを浮かべ、敵に向かって軍艦を動かした。そして、目の前にいる敵に向かって大声で叫んだ。
「おい! 出来損ないのクソ野郎共! 今からお前らをあの世へ送ってやるよ! 覚悟しやがれ!」
中年の戦士は軍艦のスピードを上げ、敵の軍艦に突っ込んだ。その後、大剣を手にして敵の軍艦に乗り込み、目の前の敵を攻撃し始めた。攻撃を続けるうち、敵が放った銃弾が中年の戦士の腹を打ち抜いた。一発の攻撃を受けた中年の戦士は動きを止めてしまい、その隙に敵は弾丸を放った。
無数の弾丸を身に受けた中年の戦士は片膝をつき、口から大量の血を吐いた。だが、笑みは消えることはなかった。
「ざ……残念だったなクソ野郎。俺が簡単にくたばると思ったら……大間違いだ」
と言って、中年の戦士は上着を脱いだ。彼の腰回りには大量のダイナマイトが巻かれており、どれか一つでも火を付けたら、数秒後に爆発する仕組みになっていた。
「聞いて驚け、このダイナマイトは普通のダイナマイトと比べて、倍以上の火薬が詰め込まれている! バカなお前らでも理解できるよな? 俺が火を付けた数秒後、テメーらの船は粉微塵に吹き飛ぶってわけだよ!」
中年の戦士の言葉を聞いた敵の戦士は、再び銃弾を発した。中年の戦士は銃弾を受けながらも、笑い声を発しながら叫んだ。
「今更俺を銃殺しようって考えてももう遅い! さぁ、一緒に逝こうぜ!」
と言って、中年の戦士はダイナマイトに火を付けた。数秒後、大きな大爆発が敵の軍艦を飲み込んだ。
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