明らかになる正体
全知の剣からブラッディクローのボスの正体を聞いたカイトは、驚きのあまり動きを止めてしまった。横にいるセアンたちも、カイトと同じリアクションをしていた。そんな中、ゆっくりと扉が開き、電話をするために外にいたメリスが戻ってきた。扉の音で我に戻ったセアンは、慌てた様子でメリスに近付いた。
「メリスメリスメリス! 大変だよ! 今、ブラッディクローのボスの正体を聞いたんだけ……ど……」
セアンはメリスの目から涙が流れていることに気付き、シーポリスで何かが起きたと察した。
「何か……あったの?」
「皆……聞いて……さっき……さっき報告があったの……」
メリスはそう言うと、苦しそうに呼吸を始めた。ラージュはすぐに近づいて様子を尋ねたが、メリスは嗚咽しながらこう言った。
「言いたくないけど……これは皆に伝えないといけないことだから……皆、苦しくなると思うけど、真実だから聞いて。今、サマリオさんが殺されたって連絡があったの」
この言葉を聞いたカイトたちは、再び動きが固まった。しばらくして、ライアが笑ってこう言った。
「冗談言わないでよー。サマリオが殺されたってそんなバカなことがあるわけが……」
「ライア」
ケアノスの言葉を聞き、ライアは歯を食いしばった後、大声で泣いた。メリスはしばらく間を開けた後、カイトにこう聞いた。
「ねぇ、ブラッディクローのボスの正体を聞いたんでしょ? 一体誰なの?」
「それも重要だな……皆は今、話ができる状態じゃないから俺が言うよ」
動揺しているセアンたちを見て、カイトがこう言った。メリスは覚悟を決め、カイトの話を聞いた。
「ブラッディクローのボスはエンズ・エルジュ。ツリーの本名だ」
カイトの話を聞いたメリスは、すぐに脳裏にツリーのバカらしい笑顔が流れた。
「え……あの人がブラッディクローのボス? そんなわけが……」
「私が説明しましょう」
全知の剣が光りながらこう言った。メリスは全知の剣に近付き、話を聞く姿勢になった。
「あなたたちが探しているブラッディクローと言う大規模の海賊団のボスは、エンズ・エルジュです。今、エンズはツリー・カタメソーウの偽名でシーポリスに潜入しています」
「本当なの?」
「私は真実しか話しません」
全知の剣がこう言った後、落ち着いたケアノスが椅子に座った。心配したカイトはケアノスに近付き、声をかけた。
「なぁ、大丈夫か?」
「何とか。さっきより落ち着いた……と思う」
ケアノスはうつむきながら、何度も呼吸をしていた。苦しそうに呼吸をし、辛い表情をしているケアノスを見たカイトは、ケアノスの横に座って肩を触った。
「落ち着くまで、俺が横にいるから」
「ありがとう……」
ケアノスはそう言って、一度大きく深呼吸をした。その後、落ち着きを取り戻したケアノスは全知の剣にこう聞いた。
「エンズについて教えてほしいわ」
「分かりました。エンズ・エルジュ。魔女の隠れ里出身の女性。年齢は百歳以上。本人も実年齢を忘れた模様です」
エンズの年齢を聞いたコスタは、落ち着いた様子で質問した。
「あいつと何回も会ったけど、あいつは子供よ。百歳以上であんなに若いわけが……」
「エンズはコルボコントロールと言う古代の道具を使っています。コルボコントロールは老いと見た目を操ることができます」
「それであんなに幼い見た目にできるのね」
ケアノスは納得した様子でこう言った。全知の剣は返事をした後、話を続けた。
「エンズはブラッディクロー、及び傘下の海賊団を使って古代に存在した強い道具を集めさせ、強大な組織を作り、世界を支配しようと考えています」
「だから、創造の力がある私たちの島を襲ったのね」
「そうです」
故郷の島が襲われた理由を知ったセアンは、大きく息を吸ってこう言った。
「覚悟を決めた。皆! 今すぐにあいつをしばきに行こう! サマリオや皆の仇討ちだ!」
セアンの言葉を聞いたライアは我に戻り、ナイフを上に掲げた。
「うおっしゃー! 悲しむ時間はもう終わり! 今はあいつを倒すために動かないと!」
と言ったが、ケアノスがセアンとライアを止めた。
「落ち着きなさい。あいつを倒したい気持ちは皆同じ。私だってすぐに動いてエンズの奴を倒したいわ。だけど今は情報が欲しい。ねぇ、どうしてエンズはシーポリスに潜入したの?」
ケアノスの質問を聞いた全知の剣は、すぐに答えた。
「理由は簡単です。シーポリス入隊レベルの幼女に変装し、幼い素振りをすれば誰だって歳相当の幼女だと思うし、世界征服なんて考えるわけがないだろうと考えます。簡単に言えば、見た目で騙したのです。そのおかげでシーポリスの中にある古代道具に関する情報を手にし、ブラッディクローや傘下の海賊団に流し、奪うように指令していたのです」
「身近なところに敵がいたなんて……」
話を聞いていたエリスは、悔しそうな表情をした。その後、ライアがこう聞いた。
「どうやってあいつを倒せばいい?」
「簡単です。エンズが今の若さを保っているのはコルボコントロールのおかげです。コルボコントロールさえ破壊すれば、エンズは今の若さを保つことができず、元の年齢に戻ります」
答えを聞いたコスタは、笑みを浮かべた。
「コルボコントロールを破壊すれば簡単に倒せるのね。私の狙撃なら楽にやれるかも」
「そう簡単に思わないでください。エンズもコルボコントロールが狙われることを考え、いろいろな防御手段を考えています」
「やっぱりそう簡単に倒れてくれないわね」
ケアノスはそう言って、しばらく考えた。
「皆、とにかくシーポリス本部に向かいましょう。あいつも私たちが全知の剣を手にしていることを把握しているはず。すぐに動くと思うわ」
「そうだね! サマリオや皆の敵討ち! すぐに行こう!」
セアンの言葉を聞き、カイトたちは頷いた。
話を終え、カイトたちはすぐにシーポリスの本部に向けて動いた。メリスがいるシーポリスの軍艦では、電話の音が鳴り続けていた。
「どうかしたの、皆?」
ヴィーナスハンドから戻ってきたメリスは、慌てている部下にこう聞いた。部下の一人はメリスに近付き、タブレットの画面を見せた。
「大変です! シーポリス本部の建物が崩壊し、別の要塞が現れました!」
「要塞?」
「今、テレビでもネットでも大きなニュースになっていますよ! これ、見てください!」
机の上に置いてあるテレビを見て、メリスは神妙な面付きになった。エンズがシーポリス本部にある創造の力を使い、シーポリス本部の要塞を破壊し、自分が思う最強の要塞を作ったのだと考えた。
「あ……あれ? 驚かないんですか?」
「全知の剣にいろいろ聞いたからね。皆、忙しいけど私の話を聞いて! かなり重要な話だから!」
メリスは部下たちに向かってそう言うと、全知の剣から聞いたことを部下たちに話した。メリスの話を聞いた部下たちは戸惑ったが、すぐに声を上げた。
「大変なことになっているが、とにかく今は俺たちが動かないと!」
「ああ! 殺されたサマリオ大佐や皆の仇討ちと行こうぜ!」
「必ず勝つぞ! 魔女か何だか知らないが、俺たちシーポリスに喧嘩を売った以上、確実にぶっ倒す!」
部下たちの活気ある声を聞き、メリスは悲しむことよりも戦うことを選んだと思い、安堵した。
シーポリス本部があった島。今、この島はツリーこと、エンズの手に渡った創造の力により、新たな要塞が建てられていた。要塞の中にある塔の一番上に、エンズはいた。
「さて……シーポリスは潰したが、まだ私に歯向かおうとする輩がいる」
エンズはそう思いながら、カイトたちの顔を思い出した。その後、笑みを浮かべたエンズは創造の力を手にし、床の上に転がっているサマリオの死体を踏み、外を見てこう言った。
「かかってきなさいピラータ海賊団。私の野望を邪魔する奴は皆殺しにしてやるわ」
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