目覚める全知
全知の剣を手にしたものの、使い方が分からないカイトたちだったが、カイトは海から何かの気配を感じ、外に飛び出た。そこには、大きな口を開けてヴィーナスハンドを飲み込もうとする大きなウツボのモンスターがいた。
「このデカブツ! いつの間に!」
カイトは魔力を開放し、巨大な氷の刃を放ってウツボのモンスターに攻撃を仕掛けた。巨大な氷の刃はウツボに命中し、後退させた。
「何とかなったか?」
カイトが呼吸を整えながら様子を見ていると、騒動を察したセアンたちが外に飛び出した。
「今のは?」
「でかいウツボのモンスターが、ヴィーナスハンドごと俺たちを飲み込もうとしてた」
カイトが説明をした直後、シーポリスの軍艦にいる戦士たちが大声を上げた。
「カイトさん! まだあのウツボは倒れていません!」
「あのウツボ、カイトさんが放った氷の刃を口で受け止め、嚙み砕いています!」
「えええええ!」
カイトは急いでウツボが下がった場所を見た。戦士たちの言う通り、ウツボはカイトが放った氷の刃を噛み砕いていた。しばらくして、ウツボは氷の刃を砕き終えた後、カイトを見て笑みを浮かべた。
「カイトが狙い? そうはさせないよ!」
セアンはカトラスに魔力を込め、勢い良く振り下ろした。風の刃が放たれ、ウツボに向かって飛んで行った。
「ふっふーん。風を噛み砕くなんてこと、絶対にできないよねー」
「油断していると、痛い目に合うわよ」
ケアノスが構えながらこう言った。その言葉を聞いたセアンは笑いだし、ケアノスに言葉を返した。
「大丈夫だって。さっきの風は何でも切り裂くように威力を調整してあるんだよ? あのウツボがあの風をどうにかするわけが……」
その時だった。ウツボはわざと大きなくしゃみをし、セアンが放った風の刃をかき消した。この光景を見ていたセアンは茫然とし、ライアはセアンの肩を叩いた。
「どうにかしちゃったね」
「うん」
「ぼーっとしている暇はないわよ! あのウツボ、こっちに向かっているわ!」
ケアノスは魔力を開放し、風の刃を放ちながらこう言った。カイトも魔力を開放し、ケアノスと同じように刃の衝撃波を発して攻撃を仕掛けた。刃の衝撃波はウツボに命中したのだが、ウツボはひるむことはせず、ただひたすらまっすぐにヴィーナスハンドに向かって泳いでいた。
「ぐっ! これでどうだ!」
コスタは魔力で作ったライフル弾をスナイパーライフルにリロードし、ウツボの額に狙いを定めて引き金を引いた。勢いよく弾丸放たれたが、ウツボの皮膚はかなり柔らかく、弾丸が命中してもその柔らかさがクッションとなり、弾丸を弾いてしまった。
「嘘……」
「あんなウツボ見たことないわ。誰か、あいつのことを知ってる?」
メリスが兵士に向かって叫んだが、兵士たちは誰もウツボのことを知らないと返事をした。
「あああああ! こんなところであんなウツボにやられるの?」
「クソッ! ようやく全知の剣を手に入れたって言うのに!」
カイトとライアが苦しそうに声を漏らしたその時だった。突如、ケアノスの腰に携えてある全知の剣が光り出したのだ。
「うわっ! いきなりなんだ!」
「何? 一体何が起きるの?」
カイトたちが動揺する中、全知の剣から声が聞こえた。
「あれはマルノミウツボ。全身が柔らかく、弾丸も斬撃も効きません。歯は高度な鉱物のように固く、やわな魔力の攻撃では噛み砕かれてしまうでしょう」
全知の剣の言葉を聞き、カイトたちは目を見合わせた。
「全知の剣が動いた」
「あれ、マルノミウツボって言うのね」
「でもでも、あいつの名前を知ったところでどうやって倒すか教えてもらわないと! 今はそれが一番重要だよ!」
ライアが叫ぶと、全知の剣は再び光り出した。
「マルノミウツボは内部による攻撃が弱点です。爆弾などを口の中に投げた後、中から爆発させて倒すしか方法はありません」
全知の剣の言葉を聞き、メリスはすぐに部下に指示を送った。
「今すぐ大砲の用意! 用意ができた者から、あいつの口に狙いを定めて発射!」
「了解!」
その後、シーポリスの戦士たちは大砲を用意し、マルノミウツボの口の中に向かって弾を発射した。マルノミウツボは自身の弱点を把握しているのか、くねくね動いて大砲の弾をかわしていた。
「自分の弱点を知っているのね。それなりに賢いようだけど……周りを見ないとダメだよ!」
セアンは魔力を開放し、風を使ってマルノミウツボの動きを止めた。風を浴びたマルノミウツボは驚いて大きな口を開き、その場で動きを止めてしまった。
「今だ!」
シーポリスの戦士たちは、今がチャンスと察して一斉に大砲の弾を発射した。そして、一発の大砲の弾がマルノミウツボの口の中に入り込んだ。数分後、大砲の弾が爆発し、マルノミウツボの体は爆発した。
「うおっしゃー!」
「何とかなったわねー」
ライアとラージュは勝利を喜んでいたのだが、カイトとケアノスは嫌そうな顔をしていた。
「この様子で戦いに勝っても……」
「あまりうれしくないわね」
と言って、カイトとケアノスは顔に付着したマルノミウツボの体の破片を手で払い落した。
戦いが終わった後、カイトたちは近くの港によって船の洗浄を行った。カイトたちは宿を借り、少し休むことにした。シャワールームにて、体を洗いながらケアノスは全知の剣にこう言った。
「ねぇ、マルノミウツボの倒し方はあの方法以外なかったの?」
「体の一か所に攻撃を集中させれば倒すことができますが、時間がかかります。短時間で戦いを終わらせるには、あの方法しかありません」
全知の剣の返事を聞き、ケアノスはしょうがないと呟いた。セアンは全知の剣を掴み、口を開いた。
「ねぇ、どうしてあのタイミングでしゃべれるようになったの?」
「私が封印されたのは何百年……あるいは、何千年も前の昔になります。封印されて以来一度も動いていないので、少しラグがありました」
「ずーっと封印されていたのね。そのせいで鈍くなっていたと。納得したわ」
ラージュはセアンから全知の剣を借り、胸に挟んでこう聞いた。
「ねぇ、今どんな気持ち?」
この様子を見たケアノスは呆れてため息を吐いたが、全知の剣は正直にこう答えた。
「私は剣です。性別はありません。豊満な胸で挟まれても何も思うことはありません」
「何だ、つまらないわね」
ラージュはこう言ったが、全知の剣は続けて言葉を発した。
「ですが、あなたたちの彼氏はこういうことをされると喜ぶのではありませんか?」
「確かにそうね」
「やらないわよ!」
ケアノスは叫び声を上げながら全知の剣を奪い取った。その時、コスタは全知の剣にこう聞いた。
「ねぇ、カイトは私たちのことをどう思っているの?」
この言葉を聞いたセアンたちは、このタイミングでその質問をするかと驚いた表情になった。全知の剣は光りながら、こう答えた。
「あなたたちの気持ちを察していますし、その気持ちに応えようと努力しています」
「それはつまり……」
「簡単に言えば、両想いということです」
この言葉を聞いたセアンたちは、一斉に歓喜の声を上げた。だが、全知の剣は言葉を続けた。
「これは私からのアドバイスです。一人の男性が多数の女性を一度に愛せるのは難しいですし、あの青年も一度に全員から求められたらどうするか悩んでいます。もし、愛する行為をするようなら一人ずつの方がいいと思います」
全知の剣の言葉を聞き、セアンたちは動きを止めた。しばらく沈黙が空気を支配したが、最初に動いたのはセアンだった。
「じゃあ私が先に出るね」
その動きに反応したのがライア、そしてケアノスだった。その後、シャワー室からセアンたちの怒声が響いた。その声を聞いたカイトは、ため息を吐いてこう呟いた。
「夜に元気になる薬……買った方がいいのかな?」
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