道を切り開け
ブラッディクロー傘下の海賊団は、前もって全知の剣がある島の情報を得て、カイトたちを待ち伏せしていたのだ。彼らの目的は多々ある。幹部の仇討ち、もしくはカイトたちを倒して名を上げる。とにかくいろいろな考えを持った輩がいるが、彼らの目的は同じであった。
「待ってたぜ、ピラータ海賊団!」
「この島がお前たちの墓場となるのだ!」
「全知の剣は渡せねーぜ!」
彼らは一斉にカイトたちに襲い掛かったが、目で追えないほどの速度で走るライアの攻撃によってあっさりと倒された。
「な……」
「俺、何かされた?」
「イッテェ……」
攻撃を終えたライアは、姿を見せてこう言った。
「こんなに弱いんじゃ、私たちの敵じゃないね」
ナイフを回転させるライアを見て、海賊たちは動揺した。
「おいマジかよ、あっという間に三人やられたぞ」
「それなりに強いはずだったんだが……」
「今がチャンスだ! ぼーっとしているうちにあいつだけでも倒すぞ!」
海賊たちは、ライアに向かって一斉に襲い掛かった。だが、ライアは素早い動きで迫ってきた海賊をナイフで攻撃し始めた。
「ぐわァァァァァ!」
「は……早い!」
「俺たちじゃあ倒せねぇ……」
斬られて倒れ行く海賊たちを見て、呆れてライアはため息を吐いていた。
「そんなんで私を倒せると思わないで。それに、私は一人じゃないよ」
ライアがこう言うと、治療を終えたカイトが現れ、海賊の群れに突っ込んだ。
「悪いが先に行きたいんだ。無理矢理でも行かせてもらう」
カイトは魔力を開放し、周囲の海賊を吹き飛ばした。海賊たちが悲鳴を上げながら宙を舞う中、セアンたちも戦いに参加した。
「邪魔だからさっさとどいてよね!」
「勝てないと思うから、降参することをおススメするわよ」
「ま、あんたらが降参しても容赦はしないけど!」
「戦いを挑む以上、痛い目にあうことを覚悟してください」
カイトたちが前で暴れる中、コスタはスナイパーライフルで確実に一人ずつ海賊を倒していった。そんな戦いをしていたため、あっという間に海賊たちを全滅することができた。
「結構あっけなかったわねー」
「私たち、強くなりすぎたわね」
セアンとケアノスは武器をしまいながら話をしていた。カイトは周囲を見回し、考えながら腕を回した。
「で、どこに行けばいいか分かるか?」
「分からないね。とりあえず適当に進む?」
ライアがこう言うと、ケアノスは呆れた表情をした。
「迷子になるわよ。きっと、どこかに道しるべがあるはずだから、それを探しましょう」
「そうだね。と言うか、多分あれだと思うわ」
コスタは目の間を指差してこう言った。カイトたちはコスタの指の先にある物を見て、声を出した。
「台座か? 人がいるのか?」
「とりあえず見てみましょう」
カイトたちは台座の前に歩き、それを調べることにした。台座はカイトの胸くらいの高さで、てっぺんの中央には何かをはめるような穴があり、くぼみには紋章のようなものが描かれていた。それを見たセアンは、うなり声をあげてこう言った。
「これって、守護者からもらうメダルと同じ大きさのような気がするんだよね」
「うーん……もしかして……メリス、メダルが入った袋を渡して」
ケアノスはメリスから袋を受け取り、メダルを一枚ずつ確認し始めた。何を考えているか察したカイトとメリスは、ケアノスにこう言った。
「俺も手伝うよ」
「私も。ケアノスが考えてること、分かったわ」
「ありがとう。あ、これかな」
ケアノスは一枚のメダルを手にし、台座にはめた。すると、メダルが光り出し、次の道を記すかのように光の線が現れた。
「おおっ! すごい!」
「これを辿れば、次の場所が分かるってわけね」
「昔にしては、高度な技術を持っているのね」
セアンたちが関心の声を上げる中、カイトはセアンたちを見回してこう言った。
「この先に全知の剣があるかもしれない。先に進もう」
カイトの声を聞いたセアンたちは頷き、光を辿って歩き始めた。
それからカイトたちは、島の奥深くに向かって進んでいった。道しるべとなる光の線を頼りに歩くと、同じような台座を見つけた。それを見つけては、メダルを入れて次の場所へ向かった。しばらくして、最後の台座の前に立った。
「残るメダルはこれ一枚」
「これをはめ込んだら、どうなるんだろうなー」
ライアは何が起こるかワクワクしながら待っていた。セアンが最後の一枚を台座に埋めると、突如地響きが発生した。
「おわっ! じ……地震か!」
「ちょっと……カイト! 下を見て!」
ケアノスに言われ、カイトは足元を見て驚いた。足元が大きく開き始め、地面が割れて大きな穴を作ろうとしていたのだ。それに気付いたカイトは急いでそこから離れ、様子を見た。
「な……何だ!」
「もしかして、この先に全知の剣があるのかな?」
セアンは地響きに耐えながらこう言った。しばらくして地響きは止まり、地面も開くのを止めた。カイトは注意深くそれを見ると、近くには地下へ行く階段があった。
「どうやら、セアンの言う通りだな」
「あと少しってわけね。行きましょう」
ケアノスの言葉を聞き、カイトたちは頷いた。その後、階段を使って地下へ向かった。会談は長く、いくら歩いてもゴールは見えなかった。
「うへー、一体どこまで続くの?」
「結構長いわね。上を見て、もうかなり下に降りてるわよ」
ラージュの言葉を聞き、ライアは上を見上げて驚いた。
「うわー。戻るとき面倒そう。魔力を使って飛べって言うのかなー?」
「楽をしたいならそうするしかないわね」
ケアノスはタオルで汗を拭き、こう答えた。すると、前を歩いていたカイトとセアンが声を上げた。
「あと少しで到着だ!」
「見て、地面の中央に剣がある!」
この言葉を聞いたライアは、下を見た。一番下は光っており、その光の中央には剣のようなものが地面に突き刺さっていた。
「まさかあれが……」
「全知の剣?」
ラージュは小さな声でこう言った。カイトたちは速足でその剣の元へ向かい、調べることにした。
「美しい剣ね……まるで美術品みたい」
ケアノスはうっとりした様子でこう言った。全知の剣と思われる剣は長年放置されている割に美しく、赤い宝石が飾りの中央に埋められていた。セアンはその剣を手にし、引っ張り始めた。
「とにかく、これを引き抜こう!」
「俺も手伝うよ」
カイトがセアンに近付き、同時に力を込めて上に引っ張った。剣は予想以上にすぐに抜け引き抜いた拍子にカイトとセアンは後ろに転倒した。
「ちょっと、大丈夫?」
「派手に転んだわねー」
メリスとケアノスが心配する中、コスタはじっと剣を見ていた。
「これ、本当に全知の剣なのかな?」
「だといいんだけど。でも、これどうやって使うのかなー?」
ライアはコスタから全知の剣を借り、上に上げた。その後、両手で持って振り回したが、何も起きなかった。
「うーん……何も起こらないね」
「とりあえず、一度ヴィーナスハンドに戻って調べることにしましょう」
「ラージュの言う通りね。一度、戻って休んでからいろいろとしましょう」
セアンはラージュの案に賛成し、一度ヴィーナスハンドに戻ることにした。カイトたちは魔力を開放し、一気に空を飛んで地上へ戻り、光の線を辿って道を戻って何とかヴィーナスハンドの元へ戻った。見張りをしていたシーポリスの戦士たちはカイトたちの姿を見て、歓喜の声を上げた。その時、セアンが手にしている剣を見て、それが全知の剣であることを察してさらに歓声を上げた。
「これが全知の剣ですか」
「結構きれいな剣ですねー」
「こんな美しい剣、見たことないですよ!」
シーポリスの戦士たちはテンションを上げてこう言ったが、全知の剣の使い方を知らないため、カイトはどう反応していいのか分からなかった。
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