まだまだ敵は存在する
全知の剣がある島に向かうカイトたち。だが、その途中でブラッディクロー傘下の海賊団が数で攻めてきた。ヴィーナスハンドの装備では一気に蹴散らすことができないため、重装備であるシーポリスの軍艦に攻撃を任せることにした。メリスの部下は、軍艦に装備されてある武器の前にいる兵士に向かい、大声でこう言った。
「左右に広がる敵を確認し、目標に入れ次第攻撃を開始しろ!」
「了解!」
兵士たちは返事をし、砲弾などを動かした。そして、敵の海賊団に狙いを定めて攻撃を始めた。
シーポリスの軍艦から攻撃がくることを予測していた一部の敵の海賊団は、急いで防御の支度をしていた。
「シーポリスの連中が攻撃を仕掛けてくるぞ! バリアを張って防御するんだ!」
「アイアイサー!」
敵の海賊は、急いでバリアを張る機械の前に移動し、魔力を開放してバリアを展開した。他の海賊団も、続けてバリアを展開して防御を始めた。それを見たシーポリスの戦士は、笑みを浮かべていた。
「質の悪いバリアで、我々の攻撃を防げるわけがなかろう」
敵の海賊は、シーポリスの攻撃が終わったら反撃するために支度をしていた。
「急げ急げ! 今のうちにバリスタとか大砲の弾を用意するんだ!」
「早くしろ! 敵に攻撃されるぞ!」
「焦らすなよ! バリアを発生している奴が多くて、武器の運搬をする人の数が足りねーんだよ!」
などと、汚い言葉が船の上で飛び交っていた。そんな中、シーポリスの軍艦から放たれたバルカンが、大砲の弾を運搬していた海賊の腹を打ち抜いた。
「あぶあ……」
血肉を周囲にまき散らしながら倒れる仲間を見て、海賊は悲鳴を上げた。
「嘘だろ! おい、確かバリアを張っていたんじゃ……」
「まさか、バリアを貫通したのか!」
この時、下にいる仲間の声が響いた。
「まずいぞ! バリアが壊された!」
「やっぱり、安物のバリア発生機じゃあ耐えられない!」
この言葉を聞いた海賊は、苛立っちながら言葉を返した。
「そんなのとっくに知ってるわ! たった今、一人やられた! 俺の目の前で……ぐわぁ!」
叫んでいた海賊は、再び飛んできたバルカンに撃ち抜かれた。
「うわァァァァァ! またやられた!」
「下に逃げろ! 下にいればバルカンが飛んでくることはない!」
「た……助けてくれェェェェェ!」
海賊たちは、死なないために急いで船の下に向かった。下にいた仲間と合流した後、上の悲惨な現場を語った。
「何人か死んだのか。クソッ! シーポリスの奴ら……俺たち海賊の命を何だと思ってやがる」
「クソと同じ扱いだろう。そんなことを言っている場合ではない。どうやって、この危機的状況を覆すか考えないと」
話をしていると、壁を貫いてバルカンが飛んできた。
「うわ! まさか、船を貫いて攻撃してくるとは!」
「逃げ道がないのかよ、グワァァァァァ!」
下に逃げた海賊たちは、バルカン砲の餌食となった。生き残った海賊は、震えながら仲間たちといた場所を見返した。そこには、さっきまで生きていた人間だったものの肉片が散らばっていた。
「クソ……ひでぇことしやがる……俺たちが何をしたって言うんだ? ただ、町や村を襲って殺して、金目の物を奪っただけなのに」
泣きながらぼやいていると、ボールのようなものが飛んできた。それは隠れていた海賊の元に転がった。
「何だよ、これ?」
海賊はそれを見て、すぐに何なのか理解した。それは、時限爆弾だった。逃げようとしたものの、爆弾は破裂した。
シーポリスの軍艦の攻撃を見ているカイトは、口を開けて驚いていた。
「うわー、派手にやりすぎだろ。死人が出るだろ」
「何人か死んでるわよ。この状況で生きてるってのが不思議なくらいよ」
セアンはため息を吐いてこう言った。敵に対しては命を奪わないスタンスでやっているカイトとピラータ姉妹だったが、目の前で繰り広げられる一方的な暴力を見て、少し心を痛めていた。そんな中、シーポリスの戦士がこう言った。
「あなたたちが心を痛めるのは分かります」
「あいつらは確かに命を奪って宝も奪ったかもしれない。でも、これはちょっとやりすぎなような気がするわ。それに、死んでたら貰える賞金が減る」
セアンのこの言葉を聞き、カイトは少し呆れた。
「結局金かよ」
「まーね。まぁ、ああいう奴らは捕まった後、縛り首か銃殺刑になると思うけどね」
セアンはそう言って、散っていく敵の海賊船を見ていた。それから数分後、敵は全滅した。セアンは望遠鏡で周囲を見回し、敵がいないことを確認してこう言った。
「敵は全滅したね。ありがとうメリス。助かったよ」
「おかげさまで。それじゃあ先に急ぎましょう」
その後、カイトたちは再び航海を始めた。
数分後、メリスは部下に軍艦を任せ、ヴィーナスハンドにいた。
「皆聞いて、全知の剣がある島の情報は、ブラッディクローの連中も知っていると思うわ」
この言葉を聞き、ラージュは頷いた。
「私も同じ意見。敵は多い。一部が前もって島にいる可能性もあるわ」
「じゃあ、私たちがメダルを持って島に入っても……」
「戦いになるって可能性はあるわね」
メリスの返事を聞いたライアは、嫌そうな顔をした。だが、ケアノスはコーヒーを飲んでこう言った。
「でも、待ち受けている奴は強い奴じゃないわ。幹部も倒したし、そのおかげで奴らの力もそれなりに落ちたはずよ」
「ケアノスの言う通りね。とりあえず、難なく全知の剣を手にすることができそうね」
コスタはライアが作ったクッキーを食べながらこう言った。そんな中、外を見ていたカイトが声を上げた。
「おーい、島が見えたぞー」
声を聞いたセアンが、急いで窓を見た。
「あれが全知の剣がある島かな?」
「調べた情報の地図と同じ島の形。そのようね」
部屋にある電子地図とシーポリスが調べた地図を見て、ケアノスが答えた。
全知の剣がある島は無人島だと、カイトは察した。島に入ったのに、人の気配はなく、聞こえるのは風の音と鳥や虫の鳴き声だけだった。
「無人島だな」
「だね。とりあえず調べるしかないね。敵も隠れているようだし」
セアンは海を見てこう言った。カイトは目を凝らしてみたが、何があるのか分からなかった。だが、セアンがハンドガンを発砲し、何かが当たった音がした。すると、突如船が現れた。
「うわっ! 船が現れた!」
「この船はブラッディクロー傘下の船。あいつら、カモフラージュしてたわね」
「敵がいるってことは確定ね。気を付けて歩こう」
敵がいることを確定させた後、カイトたちは島の中に入って行った。
森の中を歩いているが、襲ってくるのは大蛇か大きな蚊。カイトたちはそれらを倒しながら、先に進んでいた。
「うわー。結構面倒なモンスターがいっぱいいるなー」
「蛇に噛まれたり、蚊に吸われたらすぐに私に言ってね。手当てするから」
「そ……それじゃあ頼む……ラージュ。さっき、小さい変な蚊に血を吸われたかも……」
カイトが顔を青くしながら、ラージュにこう言った。ラージュは悲鳴を上げ、急いでカイトの治療を始めた。
「まさかいの一番で被害が出るなんて! 誰でもいいから、バリアを張って!」
「ええ!」
メリスはセアンとケアノスと協力して、バリアを張った。ラージュがカイトを治療する中、コスタは周囲を見回してこう言った。
「敵がいるわね」
「こんな時に敵に襲われるなんてね」
「敵が私たちの状況を考えて戦ってくれないわよ。構えてライア。戦いが始まるわよ」
「うん」
コスタはスナイパーライフルを構え、ライアは急いで二本のナイフを手にした。
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