仇討ちのために
シーポリス本部。サマリオは作業部屋でブラッディクロー関係の事件を調べていた。資料を見る中、ファイルの薄さを見てサマリオは心の中でこう思っていた。
日が経つにつれ、出来上がる資料が薄くなっている。奴らの力が弱くなっている証拠だな。
そう思った直後、勢い良く扉が開いた。少し驚いたサマリオは、扉の外にいた兵士にこう言った。
「扉は静かに開けないか。いくら私でも、驚いたぞ」
「驚かせてすみません! 今、メリスさんから報告がありました!」
「メリスから? 何の報告だ?」
「昨日、ピラータ海賊団と協力してブラッディクロー幹部、ロスとガーティブを撃破したとの報告が入りました!」
この言葉を聞き、サマリオの手の動きが止まった。
「今すぐ行く」
「この件に関しては、今現在報告書が作られています。大佐、一度確認をお願いします」
「分かった。その前に、一つ聞きたい。セアンたちとメリスは無事か?」
「はい。メリスさん本人から連絡がありました。少し休んでから、全知の剣が眠っている島に行くとの報告を受けました」
「そうか……覚悟を決めておけ。全知の剣を見つけて終わりというわけではない。これからが本当の戦いだ」
「と……言うと?」
兵士は息をのんでこう言った。サマリオはため息を吐き、外を見て返事をした。
「いよいよ、ブラッディクローのボスとの決戦になる。幹部との戦いより、激しくなる可能性が高いだろう」
この言葉を聞いた兵士は、かなり強い緊張感を持った。
カイトたちは戦いの疲れと傷を癒した後、シブヤ島から出港した。
「これでようやく全知の剣を手にすることができるわね!」
セアンは机の上に広げてある資料を見ながらこう言った。資料には、全知の剣が封印されている島のことが書かれていた。資料を見たライアは、大きなあくびをした。
「ここから四日ほどの距離があるのね。しばらくはゆっくりできそうね」
「そうでもないわよ。モンスターとの戦いがあるかもしれないってことを忘れないで」
ケアノスがこう言うと、カイトは自分の手を見てこう言った。
「なぁ、今の俺たちならどんなモンスター相手でも勝てるんじゃないか?」
「過剰な自信は敗北の理由になる。カイト、いくら強くなったとしても、隙を突かれたら一発でやられるわよ。人は思っているより、弱い生物だから」
と、ラージュがこう言った。その通りだなと思いつつ、カイトは気を引き締めた。そんな中、見張り台にいるコスタから通信が入った。
「皆、変な船が前にいるわ」
「変な船? どういう風に変なの?」
セアンがマイクに向かってこう言うと、すぐにコスタからの連絡が入った。
「多分海賊船。見たこともないイラストだから、そこまで強くはないと思うけど」
「メリスにも連絡をしておく。知ってると思うけどね」
「お願い。もし、向こうが手を出したら反撃するから」
「反撃についてはコスタに任せるわ。それじゃ、引き続き見張りをお願い」
セアンはコスタとの通信を終えた後、カイトたちにこう言った。
「てなわけで、変な奴らがいるわ。まぁ、あいつらが手を出さない限り、私たちは反撃しないから」
「確かに。無駄な戦いはしたくないからな」
「カイトの言う通り。まだシブヤ島での戦いの疲れも、完全に癒えたってわけじゃないからね」
ケアノスがため息を吐いてこう言った直後、突如大砲が放たれる音が響いた。驚いたカイトたちは外に出て、攻撃を受けていることを察した。
「反撃してきたわね」
「にしても、俺たちのことを知らずに攻撃したってわけじゃないよな」
「無知の海賊か、それとも私たちを倒して名を上げたい連中だろうね」
ライアは望遠鏡で、敵との距離を確認した。うなり声を上げながら、セアンに近付いた。
「どうする? 結構距離が開いているけど」
「魔力で攻撃するわ。私に任せて」
セアンはかなり離れた敵の海賊船に向かって、ハンドガンの銃口を合わせた。
「今だ」
しばらくして、狙いを定めたセアンは引き金を引き、弾丸を放った。勢いよく放たれた弾丸は敵の海賊船に命中し、炎上させた。
「うわーお。セアン凄い。コスタ並みの狙撃力」
ライアが感心した表情で、ドヤ顔をするセアンを褒めた。その時、別の方から大砲が飛んできた。
「ドヤ顔している場合じゃないわよ。別のとこから弾が飛んできてるわよ!」
ケアノスはセアンの頬を引っ張りながらこう言った。カイトとラージュは四方八方から飛んでくる大砲の弾を、魔力や武器で対処していた。
「あいつら、結構狙うのが上手だな」
「そうね。確実に私たちに向かって大砲を撃っているわ。コスタのように、いい狙撃の腕を持っているのね」
そんなことを話していると、焦ったケアノスがやってきた。
「のんびり話をしている場合じゃないわよ。下手したら、こっちが沈没するわ!」
「雑魚相手にやられる私たちじゃないわ」
「ラージュの言う通りだ。飛んでくる大砲の弾は、ちゃんとあいつらに返しているぜ」
カイトがこう言うと、周囲にいる敵の海賊船から爆発音が響き、煙が発生していた。それを見たケアノスは、安堵の息を吐いた。
「何とかやっているのね。でも、油断しないでね」
その時、シーポリスの軍艦の上にいたメリスが、ヴィーナスハンドの上に飛び降りた。
「皆、今敵の調査が終わったわ」
「敵のことを調べていたのね」
「ええ。あの軍艦には、最新鋭のコンピューターがあるのよ。その中には、今日まで存在する海賊団の名称と詳しいことが書かれているのよ」
「すごいな」
「本部が常に犯罪歴のある海賊団を調べ、情報を更新してくれるのよ。それよりも、あいつらのことを調べたんだけど……全員ブラッディクローの傘下の海賊団よ」
メリスの言葉を聞いたセアンは、ため息を吐いた。
「幹部の仇討ちのつもりかねぇ? 自分たちより強い幹部を倒した私たちを、倒せると思っているのかしら?」
「数で押せばどうにかなるって思っているのよ。セアン、私たちシーポリスは軍艦にある武器を使って、奴らを蹴散らすことにしたけど、そっちはどうするの?」
セアンはメリスにこう聞かれ、しばらく悩んだ。その後、こう答えた。
「攻撃を任せてもいい? ヴィーナスハンドの装備じゃあ一気に敵の数を減らすことができないからさ」
「了解。なら私たちが前に行くわ」
セアンの返事を聞いた後、メリスは軍艦にいる総舵手にヴィーナスハンドの前に動くように指令した。その後、シーポリスの軍艦にある煙突から大きな音が響き、速度を上げてヴィーナスハンドの前に移動した。
「あとは私たちに任せて。セアンたちも昨日の戦いで疲れてるでしょ?」
「だけど、シーポリスの戦士はいいのか? 俺たちもそうだけど、シーポリスも敵と戦って、疲れてるんじゃないのか?」
カイトの問いに対し、メリスの横にいた兵士がこう言った。
「大丈夫です。あの時、戦っていなかった兵士が、今動いています。敵が数で勝負してくるなら、我々も数で勝負するのみです!」
兵士の返事を聞き、カイトはそうかと答えた。
サマリオはロスとガーティブが倒されたことを報告され、急いでその確認をしていた。そんな中、ツリーが後ろからサマリオに抱き着いた。
「サマリオ、何やってんのー?」
「重要な仕事だ。それよりツリー、お前は別の仕事をやっているはずだが」
「そんなの別の人に押し付けたわよ」
「はぁ……そんなことをやっているから、いつまでたっても下の立場のままなんだぞ」
「下の立場の方が、自由に動けるから問題ないモーン」
「呆れた」
サマリオはこう言って、ため息を吐いた。そんな中、ツリーは報告書を見て、動きを止めていた。
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