ブラッディクロー幹部との決着
大ダメージを受けたガーティブは、理性がまだ残っているうちに部下に撤退命令を送った。その後、ガーティブの両腕が力をなくしたかのように垂れた。セアンたちは様子を見ていたのだが、しばらくしてガーティブは大声を発して笑い始めた。
「いきなり笑い始めたわねー」
「理性がぶっ飛んだのよ」
「少量舐めただけでも、効果があったってことね」
「話している場合じゃないわよ。あいつ、襲ってくるわ!」
メリスがこう言った直後、ガーティブはセアンに向かって飛びかかり、剣を振り下ろした。セアンは攻撃をかわし、ハンドガンの銃口をガーティブの腹に合わせ、二回引き金を引いた。二発の弾丸はガーティブの腹を貫いたのだが、それでもガーティブの勢いは止まらなかった。
「やっぱり、これだけじゃ止まらないか」
「じゃあこれは?」
コスタはスナイパーライフルを構え、ガーティブを撃った。それでもガーティブの勢いは止まらなかった。
「三回、撃たれたってのに……普通の人なら死んでいるわ」
「あいつは普通じゃないわ。異常よ」
セアンがこう言うと、回復を終えたカイトが前に立った。ケアノスはカイトを見て驚き、こう言った。
「カイト、大丈夫なの?」
「ああ。ラージュのおかげだ」
「私の治療の腕を、甘く見ないでね」
と言って、ラージュはウインクをした。その後、ガーティブはカイトを見て、笑みを浮かべた。
「俺が狙いか」
「誰を狙うべきか、まだその辺は理解しているようね。カイト、私たちが援護するから決めて」
「ああ」
カイトは刀を構え、ガーティブに向かって走り出した。
ガーティブは笑いながら剣を振り下ろした。カイトはこの攻撃を刀で防ぎ、力を込めて上に振り上げた。体のバランスを崩したガーティブは、後ろに下がった。その隙にカイトはガーティブに接近し、刀を振るった。刀の刃はガーティブの体に命中し、そのまま振り下ろされた。ガーティブの体から鮮血が流れたが、ガーティブは笑みを浮かべながらカイトを見た。
「痛みを感じてないのか」
カイトがこう呟いたが、その呟きに答えるかのようにガーティブは笑い、カイトの顔に向かって頭突きを放った。
「あがっ!」
頭突きを受けたカイトは後ろに倒れた。追撃を防ぐため、カイトはすぐに立ち上がった。ガーティブは剣を持ち、立ち上がったカイトに接近した。だが、セアンとコスタが狙撃を行った。放たれた弾丸はガーティブに命中し、弾丸を受けた衝撃でガーティブは後ろに吹き飛んだ。
「大丈夫、カイト?」
カイトの横に、レイピアを持ったケアノスが現れた。カイトは頷いて答え、ガーティブの方を見た。
「何回も弾丸を受けているのに、まだ立ち上がるよ」
「イコルパワーのせいよ。気を付けて、まだあいつは戦うつもりよ」
ケアノスがこう言った直後、ガーティブは魔力を開放し、カイトに向かって刃の衝撃波を放った。そこにメリスが現れ、盾で衝撃波を受けた。
「守りは任せて。とにかく、あいつを叩くことに専念して!」
「ああ……ありがとう、メリス」
「いいってことよ」
メリスはカイトの方を振り返り、笑みを浮かべた。カイトは深呼吸をしてリラックスし、ケアノスにこう言った。
「一気に決めてくる」
「助けは?」
「攻撃が失敗した時、俺がやばそうだって思ったら頼む」
「了解。ライアと一緒に行くわね」
「頼む」
カイトはそう言って、ガーティブに向かって走り出した。カイトが迫ってくると察したのか、ガーティブは剣を持ってカイトに襲い掛かった。
「喰らうかよ!」
カイトはガーティブの攻撃に合わせ、刀を動かした。その結果、カイトの刀をガーティブの剣がぶつかった。その直後、カイトとガーティブはそれぞれの武器を動かし、二回目の斬撃を放った。二回目の斬撃も、互いの武器がぶつかり合った。
「ぐっ!」
カイトは刀に力を込め、ガーティブを無理矢理押し倒して斬り倒そうと考えた。だが、ガーティブの方も力を入れているためか、なかなか倒れることはなかった。
クソッ! あいつの腕力が強すぎる!
カイトは歯ぎしりしながらこう思った。その直後、ガーティブは突如足を滑らせた。カイトは足元を見ると、ガーティブの血が床まで流れていた。そのせいで、ガーティブは足を滑らせたのだとカイトは察した。
「運がなかったな、あんた」
カイトはそう呟き、起き上がろうとするガーティブに向かって、刀を振り下ろした。斬撃を受けたガーティブは、動きを止めた。
魔力の補給をしていたラージュは、カイトの斬撃を受けて、動きを止めるガーティブを見てこう思った。この戦いは終わったのだと。
「終わったわね……」
ラージュはセアンたちに近付いてこう言った。戦いの一部始終を見ていたセアンは、何も言わず頷いた。セアンたちは察していた。たとえブラッディクロー幹部であるガーティブを生かすように倒しても、イコルパワーを使った以上、死が待ち受けていると。
カイトは刀を鞘に納め、立ち尽くしているガーティブに近付いた。
「もう……無理すんなよ。倒れてくれ」
カイトがこう言うと、ガーティブの体はゆっくりと後ろに倒れた。倒れた直後、ガーティブは少しだけ笑みを浮かべていた。
「まだ、戦おうとしているのか? だったら言っておく、あんたはもう立ち上がれない」
立ち上がろうと動くガーティブを見て、カイトは静かにこう言った。その直後、ガーティブの動きが止まった。
「何をするつもりか分からないけど、何かしたら斬る」
「もう……動く体力もないよ」
と、ガーティブがこう言った。カイトは静かに息を吐き、口を動かした。
「降参するのか?」
「うん。参った。君……強くなったね。イコルパワーを少量使った僕を……倒すなんてね」
「俺一人じゃないさ。皆がいたから」
カイトはそう言って、セアンたちの方を見た。ガーティブは静かにため息を吐き、呟いた。
「一対多数じゃあ……勝ち目はないってことか」
「そういうことだ」
カイトはこう答えた。それから静寂が空気を支配した。カイトはセアンたちの元に戻ろうかと思った時、ガーティブの左腕が風船のように膨らみ始めた。
「左腕が……」
「そろそろ……最期の時か」
静かにガーティブは呟いた。それからすぐ、ガーティブの右腕や両足、腹が膨らみ始めた。カイトは少し驚いた表情になり、ガーティブにこう言った。
「少量使っただけでも、死ぬのかよ」
「そうだね。死なない時もあるみたいだけど……僕はとことん運がない」
自分の運のなさを嘆いたガーティブだったが、その直後に左腕が破裂した。
「ああ……左腕が破裂したのに、痛みを感じないよ」
「そうか……」
カイトは目をつぶった。破裂が始まった以上、ガーティブを助けることができないと知っているからだ。その後、カイトは後ろを振り向いた。
「じゃあな。あんた、かなり強かったよ」
「君もね。二年間で……これだけ強くなったなんて思わなかったよ」
ガーティブはそう言って、去って行くカイトの後姿を見送った。それからしばらくして、右腕や両足が破裂する音を耳にした。それからすぐ、体や頭に異常を感じた。
ああ……僕は死ぬんだ。まぁ、イコルパワーを使ったんだ。しょうがない……。リラゴさん、ロスさん。僕もあなたたちの元へ向かいます。また、変な話をして盛り上がりましょう。
ガーティブはそう思い、目をつぶった。
カイトはセアンたちの元に戻った。セアンたちはカイトに近付いたが、少しだけ浮かない顔をしていた。そんな中、セアンがカイトの肩を叩いてこう言った。
「とりあえず……しばらく休んで。疲れたでしょ?」
「ああ……」
カイトがこう答えた直後、体中の力が抜け、セアンの方に倒れた。セアンは気を失ったカイトを受け止め、そのまま抱きしめた。その数分後、ガーティブの体が破裂する音が響いた。
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