ガーティブの本気
カイトの決死の一閃が、ガーティブのすねに命中した。それを見たセアンたちは、歓喜の声を上げていた。だが、カイトは刀を鞘に納めなかった。
「まだ……戦いは終わっていないのね」
と、セアンが静かにこう言った。この言葉の直後、ガーティブは剣を鞘代わりにして転倒を防ぎ、カイトを睨んだ。
「こ……ここまで僕を追い込むなんて……強くなったね……」
「褒められて嬉しいのか嬉しくないのか……微妙なところだ」
カイトはそう言うと、ガーティブは魔力を開放して傷の治癒速度を速め、無理矢理な形で治療した。その後、ガーティブはカイトと自身の周囲を囲むようにバリアを張った。
「なっ! バリアを!」
「ちょっと! 何すんのよあんた!」
セアンとライアはバリアに近付き、叩いて叫び始めた。ガーティブはセアンとライアの方を見て、静かにこう言った。
「彼と一対一で戦わせてください。今、僕を燃え上がらせているのは彼なんですから」
「知らないわよそんなこと! そんなことしなくても、あんたはとんでもなく強いじゃないの!」
「僕はあまりわがままを言わないんです。すみません……邪道の道に進んでいますが、腐っても僕は剣士。強い人と会うと、剣士としての魂が震えあがるんです」
ガーティブは静かにこう言った。この言葉の中に、カイトはガーティブの静かなる闘志を感じた。
「悪いセアン。一対一でガーティブとやらせてくれ」
「う……うーん……カイトがそう言うなら仕方ないわね」
セアンはそう言った後、コスタたちに後ろに下がるように告げた。ガーティブはセアンたちの方を見て、頭を下げた。
「僕のわがままを聞いてくれてありがとうございます」
「礼儀正しいな、あんた」
「褒めてくれてありがとうございます。ですが……加減はしません」
と言って、ガーティブはカイトに斬りかかった。
カイトとガーティブの一騎打ちが始まった。後ろから戦いの様子を見ているラーソンは、小さな笑みを浮かべていた。
まさかここで、剣士同士の本気の戦いが見られるとは思いもしなかった。
と、ラーソンは心の中でこう思っていた。前にいるセアンたちは、不安そうな顔でカイトを見ていた。
カイトはガーティブの斬撃をかわし、素早く刀を手にして振り上げた。
下からか。
カイトの攻撃を察したガーティブは、剣を盾にしてカイトの攻撃を防御した。激しい金属音が一瞬だけ響き、その音に合わせるかのようにカイトが後ろに下がった。一方、ガーティブはその音に合わせてカイトに向かって飛びかかっていた。
「間合いを開けると思ったんですか?」
ガーティブは目を開いているカイトを見て、こう言った。その後、ガーティブは素早い月を行った。カイトは剣の刃が顔に刺さる寸前に、頭を動かした。だが、攻撃が外れたと察したガーティブはカイトの首を斬るように剣の向きを変えた。
嘘だろ、このまま攻撃を続けるつもりかよ!
このままだと首を斬られると考えたカイトは、左手の拳でガーティブの顔を殴った。殴られたガーティブは後ろに下がったが、すぐに両手で剣を持ち、カイトに接近した。
「何が何でも俺を斬るつもりか!」
「そのつもりですよ」
カイトの問いに対し、ガーティブは答えながら剣を振り下ろした。カイトは攻撃をかわした後、ガーティブの腹を蹴った。少しでもガーティブとの距離を開け、刀を構えようと考えたのだ。だが、蹴られた直後にガーティブはカイトに接近した。
「蹴られても何をされても、僕はあなたを斬りますよ」
「しつこいな!」
カイトは魔力を開放し、斬りかかろうとするガーティブに向かって風の弾丸を放った。弾丸を受けたガーティブは痛そうな表情をし、後ろに下がった。その隙にカイトは刀を手にしてガーティブに斬りかかった。だが、ガーティブは左手で剣を逆手に持ち、カイトの攻撃を受け止めた。
「逆手で……」
「これでも、あらゆる剣の技を鍛えました。」
と言って、ガーティブは左腕を後ろに下げた。その動きに合わせるかのようにカイトの体は前に倒れかかったが、倒れる寸前に踏ん張って転倒を防ぎ、右手に剣を持ち替えたガーティブを睨んだ。
「この野郎!」
カイトは左から刀を振り、ガーティブを一閃しようとした。ガーティブはその攻撃を防ぎ、後ろに下がった。その直後、ガーティブは魔力を開放して素早くカイトに接近した。だが、カイトは攻撃が襲ってくると予想しており、攻撃に対してどう動くか考えをまとめていた。
「おらァッ!」
カイトは接近したガーティブに向かって、突きを放った。ガーティブは突きで反撃すると予想していたのだが、カイトの攻撃速度を予測していなかった。
そんな……早すぎる。
早いカイトの突きは、ガーティブの顔に命中した。命中したと言っても、刀の刃はガーティブの頬に命中していた。
「チッ、目を狙ったんだけどよ」
「目ですか……えげつない手を使いますね」
「少しでも勝つ確率が上がるなら、そのくらいやらないとお前に勝てない」
カイトはそう言って、後ろに下がった。ガーティブは魔力を使って頬の傷を治療しようと考えたが、すぐにカイトが攻撃すると察し、治療を諦めた。
「おらァァァァァ!」
カイトは叫び声を上げながら、刀を振るった。ガーティブは防御したが、防御されたと判断したカイトは素早く刀を引き、次の攻撃を行った。
早い! 徐々に攻撃速度が上がっている!
心の中で、ガーティブはカイトが強くなっていると判断し、驚いた様子を見せた。ガーティブの顔を見たカイトはにやりと笑い、こう言った。
「どうした? そんなに驚くことがあったか?」
「ええ。この戦いで、あなたは成長しています」
ガーティブはそう言って後ろに下がった。そして剣を鞘に納め、居合の構えをとった。
「成長した剣士は、今後厄介な存在になります。本来なら、成長したあなたと戦いたいのですが……今はそんなことを言っている場合ではない。ブラッディクローのため、あなたを切り殺します」
と言って、ガーティブは姿を消した。カイトは察した。素早く走って目をごまかし、隙を突いて攻撃をするのだと。
「めんどくさいことをするなぁ……」
カイトは小さく呟き、刀を鞘に納めて目をつぶった。ガーティブの姿が見えない以上、目の意味がない。なら、目をつぶって周りにごまかされず、周りから聞こえてくる音に集中しようとカイトは考えたのだ。耳に聞こえるのは、ガーティブの足音、そして周囲に舞う小さな砂粒。冷静に神経を集中させているためか、カイトはガーティブのかすかな殺意を感じることができた。
「そこだ」
カイトは後ろに振り返り、素早く刀を振るった。
「ガァァァァァ!」
カイトの耳に、ガーティブの悲鳴が聞こえた。目を開けると、そこには宙に浮いているガーティブ。そしてガーティブの腹にめり込んでいる刀の姿があった。
「そ……そんな……」
ガーティブは血を流しながら、悔しそうに呟いた。カイトは刀を引き、床の上に着地したものの、ぐらついているガーティブに向かって刀を向けた。
「悪いけど、容赦なくいくぜ」
カイトは力を籠め、ガーティブの腹に突きを放った。攻撃を受けたガーティブは吹き飛び、バリアに激突した。
「ガッ……ハァ……」
ガーティブは小さく悲鳴を漏らし、その場に倒れた。倒れたガーティブを見て、セアンたちは歓喜の声を上げていた。だが、カイトは刀を鞘に納めなかった。
まだだ。あいつはまだ立ち上がる。まだ……戦うつもりでいる!
カイトは察していた。これほどのダメージを受けても、ガーティブは立ち上がると。
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