残された者の怒り
先に遺跡の奥へ向かっているガーティブは、入り口の方から感じる魔力が一つ減ったことを感じた。
「ロスさん……」
ガーティブは立ち止まり、後ろを振り向いた。今すぐにでもロスの元へ向かいたい気持ちが生まれたのだが、メダルを手にして全知の剣を処分する使命を優先させろと自身に言い聞かせ、急いで奥へ向かって走り出した。
カイトたちはロスの血肉が散らばる地面を見て、目をつぶった。
「これで……ウイークの仇を取ったってことで……いいんだよね?」
と、ライアが小さく呟いた。セアンはライアに近付いてこう言った。
「そうだと思う。結果はどうであれ……ウイークを倒した奴に私たちは勝利した」
「うん……でも……ううん。これ以上考えるのは止めるよ」
「そうねライア。今は遺跡のメダルを手にすることを優先しましょう」
ラージュがこう言った後、カイトたちは頷いて返事を返した。
その後、カイトたちは急いで遺跡の中に入った。前を走るカイトは、通路中に散らばる罠の数々を見て、セアンたちにこう言った。
「罠が作動した跡がある。でも、何が起こるか分からないから用心しよう」
「カイトの言う通りね。まだ作動していない罠があるかも」
ケアノスがこう言うと、突如上から吊天井が降ってきた。魔力を開放したラージュとメリスが武器を振り上げ、吊天井を破壊した。
「言ったそばから罠が作動したわね」
「私……しばらく黙っているわ」
ケアノスは粉々に砕けた吊天井を見て、小さくこう言った。その直後、前にいるカイトとセアンは武器を構えて叫んだ。
「奥から魔力を感じる!」
「かなり強い殺意と敵意だよ。多分、ロスの部下がくる!」
カイトとセアンの声を聞いたコスタたちは、急いで武器を構えた。そしてしばらくして、奥から武器を持ったロスの部下が現れた。
「ロスさんの魔力を感じなくなったぞ! テメーら……絶対に許さねェェェェェ!」
「今すぐあの世へ送ってやるぞ、覚悟しろ!」
ロスの部下たちはこう叫んだあと、カイトとセアンに斬りかかった。カイトは攻撃を受け止め、セアンは攻撃をかわしてハンドガンを使って反撃した。
「チッ! 俺たちの攻撃を簡単に避けやがった!」
「弾が飛んでくる! こっちも弾で反撃を」
「させないわよ」
コスタは素早くスナイパーライフルを手にし、一人ずつロスの部下を狙撃した。倒れていく仲間を見たロスの部下は、コスタに狙いを定めて魔力を開放した。
「これでくたばっちまえ!」
「させないわよ」
「コスタを狙っているの、バレバレだよー」
ケアノスとライアは素早くロスの部下に接近し、攻撃を仕掛けた。ラージュとメリスは出番がないだろうと思ってみていたのだが、倒したはずのロスの部下が立ち上がった光景を見て、顔を見合わせた。
「どうやら、休む暇を与えてくれなさそうね」
「その通りね」
短い会話の後、ラージュとメリスは起き上がったロスの部下に近付いた。その接近を知らないロスの部下は、手にしているハンドガンの銃口をカイトに合わせ、笑みを浮かべた。だが、引き金を引く前にラージュの大剣が彼を襲った。
「あぐあ……」
「悪いけど、そんなことさせないわよ」
「そこのあなたたちもそうです」
メリスは周囲にいるロスの部下を見て、剣を振るった。
戦いが始まって数分が経過した。あっという間にロスの部下の半分が倒れた。倒れた仲間たちを見たロスの部下は、舌打ちをした。
「仕方ない……こいつらを道連れにするぞ!」
「じゃあ……」
「そのまさかだ。ブラッディクローに……敗北は許されない!」
と言って、ロスの部下たちは一斉にイコルパワーを使用した。錠剤のイコルパワーだったため、すぐに飲み込んでしまった。
「ああっ! あいつらも持っていたのか!」
「しかも錠剤タイプ! あれじゃあ……」
カイトたちは目を開けて驚いていた。その様子を見たロスの部下たちは、笑みを浮かべた。
「フフフ……さぁ、お前たちの最期の時だ!」
そう言った後、ロスの部下たちの体が変形した。カイトは刀を構え、嫌そうな顔でこう言った。
「こうなったら、やるしかないのか……」
カイトがこう呟いた直後、一人のロスの部下が襲い掛かってきた。カイトは攻撃を防御し、目の前のロスの部下を睨んだ。
「ぐへへへへへ……」
「クソッ! イコルパワーのせいで、理性までぶっ飛んだか!」
カイトはそう言って目の前のロスの部下を蹴り倒し、後ろに下がった。セアンは次々と襲ってくるロスの部下たちの攻撃をかわしつつ、反撃を行っていた。
「もう! しつこい男は嫌われるよ!」
セアンはそう言って、ハンドガンを使ってロスの部下の体を撃った。弾丸が体を貫いても、ロスの部下たちは動きを続けた。
「やっぱりこれだけじゃダメか」
「セアン、油断しないで」
そう言いながら、コスタがセアンの元に近付き、襲ってくるロスの部下の攻撃をバリアで防いだ。その後、ケアノスが現れてロスの部下たちに攻撃を仕掛けた。
「セアン、大丈夫?」
「大丈夫。カイトの方は誰か援護に行った?」
「ライアとラージュとメリスが向かったわ」
「それじゃあ安心だね。さてと……」
セアンは魔力を開放し、ロスの部下たちを睨んだ。
「あんたらがこうなった以上、手加減はしないからね」
と言って、セアンは素早く走り出し、ロスの部下たちに攻撃を仕掛けた。攻撃を受けたロスの部下たちは悲鳴を上げ、その場に倒れた。
「死なないように加減して攻撃したけど……」
「いずれ、イコルパワーのせいで命を落とすわね……」
ケアノスは静かにこう言った。その直後、ロスの部下たちの体が膨れ上がり、破裂していった。
カイトは何度も呼吸をしながら、襲ってくるロスの部下たちを睨んでいた。そんな中、ライアとラージュとメリスがやってきた。
「皆」
「カイトが無事でよかったけど……」
「あいつらは無事じゃなさそうだね」
「ああ。イコルパワーを使ったんだ。いずれあいつらは……」
カイトがこう言いかけた時、メリスが目をつぶって首を振った。
「それ以上は言わないで。辛くなるでしょ」
「ああ」
カイトは静かに返事をし、刀を構えた。ロスの部下たちは叫び声を上げながらカイトに襲い掛かった。カイトは刀を振るって反撃し、ライアは周囲を飛び回りながら攻撃を行った。ラージュは大剣を振り回して攻撃を仕掛け、メリスは防御しつつ反撃を行った。
「皆! あいつらの急所を攻撃しても、あいつらは立ち上がってくるからな!」
「ええ。何度も急所を斬ったけど、寝起きのように起き上がってくるわね!」
「一度、集まりましょう!」
メリスの言葉を聞き、カイトたちは一度集まった。それからしばらくして、ロスの部下たちの動きが固まった。
「動きが止まった……」
「そろそろ……最期の時がきたようね」
と、ラージュは静かにこう言った。その直後、ロスの部下たちの体は風船のように膨れだし、破裂した。
遺跡最深部、その扉の前にガーティブは立っていた。
「この奥にメダルが……」
そう言いかけた時、後ろにいるロスの部下たちの魔力が一斉に消えたことを感じ、ガーティブは驚いた表情となった。
「これで……残ったのは僕一人か……」
ガーティブはそう呟いた後、静かに扉を開いた。奥にいたのは、四十代くらいの男だった。
「へぇ、あんちゃん一人でここにきたってことか。それなりに腕はあるようだね」
「あなたがメダルを守る守護者ですね」
「その通り」
メダルの守護者の返事を聞き、ガーティブは剣を手にした。
「今すぐあなたを斬ります。その後でいいから、メダルを渡してください」
「そう簡単にメダルはやらないなぁ。君以外にも、ここにくる子たちがいるじゃないか」
その言葉を聞き、ガーティブは察した。カイトたちを倒さない限り、メダルの守護者と戦えないと。
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