幹部との戦いに向けて
カイトは木刀を持ち、同じように木刀を持ったセアンを見ていた。
「さぁいいよ。いつでも打ち込んできて」
「ああ。それじゃ、遠慮なしで行くからな!」
と言って、カイトは木刀を構え、セアンに向かって走り出した。カイトは木刀を振り下ろすが、セアンは防御してカイトの攻撃を受け止め、その直後に木刀をずらした。
「おわっ!」
ぶつかっていた木刀がずれてしまい、カイトの体のバランスが崩れた。セアンはその隙に攻撃を仕掛けたが、倒れる前にカイトは木刀を逆手に持ち替え、攻撃を受け止めた。
「なんと」
「簡単にやられねーよっと」
カイトがこう言った直後、地面に倒れた。倒れたカイトを見たセアンは、倒れているカイトに攻撃を仕掛けた。カイトは地面を転がって攻撃をかわし、セアンとの距離を取って立ち上がった。
「追い打ちってありだっけ?」
「実践通りなら、追い打ちはあり。それじゃ、まだまだ行くよ」
セアンはハンドガン型のエアガンを取り出し、カイトに向かって発砲した。飛んでくる小さな弾を見て、カイトは木刀を構えた。
弾くより弾を避けつつ、近付いた方がいいな。
そう考えたカイトは、飛んでくる小さな弾をかわしながらセアンに近付いた。
やはりそう動いたね。
カイトが小さな弾をかわしながら近づいてくると考えていたセアンは、にやりと笑って木刀を振り、カイトに攻撃を仕掛けた。だが、カイトの姿は消えた。
「え? 消えた!」
「ここだぜ」
上空からカイトの声が聞こえた。セアンは上を見て、カイトがセアンを超えるようにジャンプしたと察した。背後から攻撃されると察したセアンは急いで後ろを振り向き、攻撃してくるカイトを見た。カイトは木刀を振るって攻撃をしたが、セアンは攻撃をかわしてカイトに反撃を仕掛けた。
「んぐっ!」
カイトは何とか体を動かし、木刀の先端から身をかわした。
「やるねぇカイト。だけど、私も強くなったんだよね」
「そのようだな」
その後、カイトとセアンは後ろに下がったが、その動きに合わせるかのようにアラーム音が鳴り響いた。
「はい。摸擬戦終了。少し休んでね」
と、メリスがこう言いながら、カイトとセアンに近付いた。
カイトたちは最後のメダルがある島、シブヤ島へ向かう途中で修行をしていた。残る幹部、ガーティブとロスがシブヤ島にいる可能性が高いと察し、二人と戦う前に少しでも強くなるために修行をしようとセアンが提案したのだ。
キータマ島から出港して数日、カイトたちは修行によってそれなりに強くなっていた。メリスとの摸擬戦を終えたケアノスは、休憩しながら自分の手を見ていた。
皆と修業をしたおかげかしら、強くなった気がする。
ケアノスはそう思っていた。キータマ島でリラゴと戦った時よりも、自身の魔力が強くなったと確信していた。そんな中、シーポリスの船にいる兵士が叫んだ。
「謎の船が近付いてきます!」
この言葉を聞いたケアノスは、見張り台にいるコスタに連絡を始めた。
「コスタ、今の声が聞こえた?」
「ええ。何者か調べているわ」
「早急にお願い。もし、何か分かったらシーポリスに連絡して」
「うん」
コスタの返事が聞こえた後、シーポリスの兵士の声が響いた。
「あの船の正体が分かったぞ! あいつらはブラックソードと言う名前の海賊。あの船にいる連中は下っ端らしいが、かなり強いと言われているぞ!」
兵士の叫びを聞いたケアノスは、コスタに狙撃するように連絡をするため、受話器を取ったが、その前に発砲音が響いた。
「先手を打ったわね」
コスタが発砲したと察したケアノスは、急いで外に出た。すでにカイトたちが武器を構え、ブラックソードの船を睨んでいた。
「あいつら、どうやらかなり慌てているみたいよ」
「コスタの狙撃で、上の人が撃たれたかもね」
ラージュとライアの言葉を聞き、ケアノスは望遠鏡でブラックソードの船を見た。船の上では船員が慌てており、大砲を用意するのも、銃を装備するのも慌てているせいで失敗していた。
「今なら楽に倒せるわね。メリス、あいつらは私たちで倒しましょう」
「そうね」
その後、メリスは自分とピラータ姉妹でブラックソードを倒すと部下に伝えた。連絡を終えた後、ヴィーナスハンドはブラックソードの船に近付いた。
「あ! あいつらはピラータ海賊団!」
「指示薬が撃たれたのは、お前らのせいだったんだな!」
「この野郎! よくもやってくれたな!」
船員たちは声を上げ、ヴィーナスハンドに乗り込もうとした。だが、コスタによる狙撃が船員に命中し、後ろへ吹き飛ばした。
「クソッ! 腕のいい狙撃手がいる! こちらも狙撃で反撃しろ!」
「無理です! 俺たちには狙撃手がいません! 誰も、銃の使い方を知りません!」
「引き金を引けば弾が出るぐらい分かるだろ!」
「そりゃーバカでもそんなこと分かりますよ! でも、その前の準備を誰も知りませんよ!」
「バカ! こんなことになるから、銃の扱い方ぐらい覚えておけと言っていたんだ!」
「ガーティブさんはそんなこと言ってませんでしたよ!」
「ガーティブさんのせいにするな!」
ブラックソードの船員たちが慌てる中、カイトたちがブラックソードの船に乗り込んだ。
「さて、覚悟しろよ」
カイトは刀を手にし、こう言った。戦意むき出しのカイトを見て、ブラックソードの船員はにやりと笑った。
「俺たちは銃の扱いは下手くそだが、剣の扱いは達人並みだぜ!」
「悪いな、今からお前らはみじん切りにされて、海にいるお魚さんのエサになってもらうぜ!」
そう言って、ブラックソードの船員はカイトに迫り、剣を振り上げた。だがその瞬間、カイトはブラックソードの船員が攻撃する前に素早く刀を振り、刀を鞘に納めた。
「な……え?」
「何だ、今の?」
「俺たち、今斬られたのか?」
動揺するブラックソードの船員を見て、カイトはこう言った。
「ああ。確かに今、お前らを斬ったぜ」
その直後、ブラックソードの船員の腹から血が流れた。この様子を見ていた他の船員は、セアンたちを見て笑みを浮かべた。
「あの男を相手に戦うのは止めておこう」
「そうだな。女相手ならやりやすい」
「はっは! 覚悟しろ!」
と言って、ブラックソードの船員はセアンたちに襲い掛かった。呆れたようにため息を吐いたセアンは、カトラスを振るって目の前にいる船員を斬り倒した。
「カイトを倒せないからって、私たちを相手にするわけ? 私たち、結構強いんだけどねー」
セアンはそう言って、遠くにいるブラックソードの船員をハンドガンで撃った。ケアノスはため息を吐きつつ、周りにいるブラックソードの船員を斬り倒していった。
「セアン、こいつらはただの雑魚だから、あまり本気を出さないでね」
「そうだね。でもま、数が多いからちゃちゃっとやらないとね」
「セアンの言う通り!」
と言って、二本のナイフを持ったライアが体を回しながら、周りの船員を攻撃していた。その後ろでは、ラージュが大剣を振り回しながら、ブラックソードの船員を吹き飛ばしていた。
「うわァァァァァ!」
「海に落ちる!」
「た……助けてくれェェェェェ!」
ラージュの攻撃を受けて、ブラックソードの船員は情けない悲鳴を上げながら海へ落ちて行った。メリスはカイトたちが暴れるのを見て、出番がないと思いつつ、後ろから戦いの様子を見ていた。
戦いが始まってわずか一分後に、ブラックソードの船員は全員倒れた。戦いを終えたセアンは背伸びをし、倒れている船員を見てこう言った。
「さて、これで終わりだね」
「少し、暴れすぎたわね」
ケアノスはボロボロになったブラックソードの船を見て、やりすぎたと思いながらこう言った。
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