幹部の取り調べ
カイトたちとの戦いに敗れ、気を失っていたリラゴは水滴の音で我を取り戻した。弱弱しくまぶたを開かせると、目の前には武装したシーポリスの戦士が座っていた。
「ようやく目を覚ましたか」
シーポリスの戦士はそう言うと、深くため息を吐いた。相手はやる気だろうと思い、リラゴは両腕を動かそうとした。だが、両腕は拘束されているため、動かなかった。
「はっ、どうやらあの後で捕まっちまったようだねぇ」
「その通りだ。あの戦いの後、一週間は経過しているぞ」
「一週間。へぇ、そんなに寝ていたのか。私は」
リラゴはそう言うと、小さく笑った。シーポリスの戦士は呆れたような表情をし、隣にいる戦士の方を見て、頷いた。
「では、ブラッディクローの幹部の一人、リラゴよ。今からお前の取り調べを行う」
「そうかい」
「おっと、暴れようとするなよ? 今、お前の手足を封じているのは魔力を封じる効果がある物質が含まれている拘束具だ。魔力を使おうとしたら、反射的に反応して強烈な痺れがお前を襲う」
「強烈な痺れねぇ。面白そうじゃないか」
と言って、リラゴは魔力を開放した。だがその瞬間、リラゴの両手両足の拘束具が紫色の光を放ち、電撃を放った。
「イギャァァァァァァァァァァ!」
「言っただろう。強烈な痺れが襲うと」
「でもま、開発班が作った拘束具がブラッディクロー幹部に通用するなんて、想いもしなかったからな」
「ああ、幹部も所詮は人間ってことか」
シーポリスの戦士は会話を終え、苦しそうに声を上げるリラゴの方を向いた。
「では、取り調べを開始する」
「ケッ……この状態で取り調べを行うとか、人の心っつーのがあんたらにないのか?」
「黙れ。とにかく始める。質問に対する答えに嘘があれば、罰が起こると思え。では質問を始める」
シーポリスの戦士はそう言うと、手元の資料を目に通しながらこう言った。
「ではまず、お前たちが集めた全知の剣の封印を解くメダルはどこにある?」
「他の幹部が持ってるよ。私は一部しか持ってない」
「お前が持っていたメダルは回収している。ピラータ海賊団の皆さんに渡したからな」
「すでに取られたってわけかい」
「お前たちのメダルじゃないだろうが。次の質問をするぞ」
「おいおい、少しは休ませてくれよ」
「無理だ」
それから、シーポリスの戦士はリラゴの取り調べを続けた。
サマリオはリラゴの取り調べが行われていると知り、急いで取調室へ向かっていた。その途中、ツリーがサマリオと合流した。
「ねえねえ、セアンたちが倒したブラッディクロー幹部が取り調べをされてるって聞いたけど、ほんとなのー?」
「ああ」
ツリーの質問を聞き、サマリオはため息を吐きながら答えた。ブラッディクロー幹部の一人であるリラゴの取り調べは、サマリオやサマリオが信頼する戦士にのみ行われているからだ。その理由は、情報が外に漏れるのを防ぐため。大きな悪の組織の一人が捕まったとメディアやマスコミが情報を知れば、会見など面倒なことをしなければならないからだ。
「本当はごく一部の戦士にしかこのことを伝えたくないのだがな」
「いいじゃーん。私とサマリオの仲だしー」
「お前みたいなのが一番口が軽いから、信頼できないのだがな……」
「えー、そこまで言う? ひどくなーい?」
「ブラッディクローが関係しているんだ。騒動を広げたくない」
「ぶー」
その後、ツリーはサマリオの後をついて歩き始めた。サマリオはツリーの方を見ては、重要な仕事だからと言って同行を拒否したのだが、ツリーは言うことを聞かなかった。仕方ないと思いつつ、サマリオはため息を吐いてこう言った。
「はぁ……ツリー、絶対にこのことを他の戦士に言わないこと。それが条件だ」
「むっふっふー。話が分かるわねー」
と言って、ツリーは笑顔になった。
リラゴは疲れ切った表情で何度も荒く呼吸をしていた。取り調べが始まって数時間が経過している。この数時間で、リラゴはブラッディクローのことをほとんど話してしまったのだ。
「おい、そろそろ終わりにしないか?」
「まだだ。質問は山ほどあるんだ」
戦士は手元の資料をリラゴに見せた。その資料の量は、言葉通りに山のようになっていた。それを見たリラゴは、舌打ちをした。
「勘弁してくれよ。そうだ、トイレに行かせてくれ。そろそろ限界なんだ」
「全部の質問に答えたら行かせてやる」
「女に漏らせって言うのか?」
「取り調べの時は男女平等だ。罪を負った奴に、あれこれ言う資格があると思うな」
と言って、シーポリスの戦士は質問を続けた。
数分後、サマリオとツリーが取調室の前に到着した。部屋の前にいる戦士はサマリオとツリーに気付き、敬礼した。
「サマリオ大佐! お疲れ様です!」
「お疲れ様。今、取り調べはどうなっているんだ?」
「いろいろと情報を聞き出せましたよ! まだ取り調べの途中ですが、あいつらがどこにいるのかとか、どれだけの規模があるのかとかいろいろと知ることができました!」
「でかした。では、私も中に入って取り調べの様子を見る」
「了解しました」
サマリオとツリーは部屋に入り、取り調べの見学を始めた。リラゴを見たツリーは、怯えた表情でサマリオの後ろに下がった。
「うわー、何あのゴリラみたいな女? あれが幹部なの?」
「ああ。セアンたちとメリスが協力して、ようやく倒したんだ。かなりの実力がある」
「こわーい」
ツリーは震えながらこう言った。
そんな中、取り調べは続いていた。シーポリスの戦士はリラゴの方を見て、口を開いた。
「では次が最後の質問だ」
「ようやく最後かよ」
「では……ブラッディクローのボスの名前、正体を教えろ」
この質問を聞き、リラゴは汗をかき始めた。
「それだけは……答えたくないね」
リラゴはそう答えると、サマリオの気配を察して出入り口を見た。サマリオとツリーが見学していることを知り、リラゴの表情は変わった。
「どうした? 何か変なことでも?」
「頼む。ボスの名前だけは絶対に言えない。それだけは勘弁してくれ!」
リラゴは大声でこう言った。だが、シーポリスの戦士はため息を吐いてこう言った。
「無理だ。答えてくれ。これが最後の質問だ、これに答えれば開放できるんだ」
「無理だ! 答えたくない! 答えたら殺される!」
「今、この部屋には我々しかいない。部外者が入るのは不可能だ」
シーポリスの戦士はそう言ってリラゴを落ち着かせようとした。それでも、リラゴの興奮は収まることはなかった。
「頼む……私を助けてくれ!」
「だったら早くボスの名前を言え! ボスの名前は?」
「そ……それは……」
その時だった。突如リラゴの頭が爆発した。爆発の後、頭部を失ったリラゴの体は後ろに倒れ、我に戻ったシーポリスの戦士の悲鳴が轟いた。
「な……何じゃこりゃ!」
「分からない……どうして、頭が爆発したんだ?」
「今すぐ上に連絡しろ!」
シーポリスの戦士たちが慌て始める中、サマリオは目と口を大きく開けて驚き、動くことができなかった。
「な……何でこんな……」
「ねぇねぇ、何があったの?」
サマリオの後ろに隠れていたツリーは、サマリオにこう聞いた。その言葉を聞いたサマリオは我に戻り、ツリーにこう答えた。
「大変なことが起きた。リラゴが何者かに殺された」
「殺された?」
「どのようにして殺されたのかの説明は省くが、大変なことになった。上がこのことを知れば、すぐに動くだろう。私たちもこのことを上に伝えるから、すぐに動くぞ」
「う……うん。だけど、私も行っていいの? 私はずっとサマリオの後ろにいたから、何も分からないわよ」
「この状況を伝えればいい。リラゴの最期は私が言うから、心配するな」
サマリオはそう言うと、ツリーと一緒に取り調べ室から出て行った。
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