残るメダルはあと一枚
カイトたちがリラゴと戦っている中、遺跡から脱出したプイーエ海賊団の船員たちは、目の前の光景を見て驚いていた。
「そんな……俺たちの船が……」
「跡形もなく消えた」
遺跡の中にいたせいで、プイーエ海賊団の船員たちはシーポリスによって、自分たちの海賊船が沈められたことを知らなかった。そのため、停泊してあったはずの海賊船がないことを知り、驚愕した。そんな中、後ろからシーポリスの戦士たちが現れ、あっという間にプイーエ海賊団の船員たちを拘束した。
数時間後、遺跡から脱出したカイトたちは、ヴィーナスハンドに戻っていた。
「あぁ……疲れた」
「たくさん怪我もしたし、しばらくは休んだ方がいいかもしれないわね」
「セアンの言う通り、今回ばかりはちょっと疲れたわ」
カイトとセアンとコスタは話をしながら、その場で倒れた。ケアノスは倒れたカイトたちを見て、ため息を吐いた。
「ここで限界なのね」
「ああ……結構無理してここまで歩いてきたから……」
「そりゃそうね」
ケアノスはそう言うと、息を漏らしてその場に座った。ライアとラージュ、メリスもその場に倒れた。それからしばらくの間、カイトたちは疲れのあまり動くことができなかった。
「ども。メリスさんいますか?」
と、シーポリスの戦士がメリスを迎えにきたのだが、倒れているカイトたちを見て驚いた。
「うわァァァァァァァァァァ! だ……大丈夫ですか!」
「大丈夫。疲れて動けないだけ」
メリスの返事を聞き、シーポリスの戦士は安堵の息を吐き、急いで救護班を呼んだ。
その後、カイトたちはその場で治療を受けることになった。救護班の一人がカイトの手当てをしながら、少々呆れたようにこう言った。
「これだけ大きなダメージを負ってここまで動くなんて、あんたバケモンだよ。普通の人なら痛みのあまり気を失ってるよ」
「迷惑かけて本当にすみません」
「これが私の仕事だからね。はい、治療はおしまい。今はとにかく休むことだね」
救護班の人はカイトにそう言うと、メリスの方を向いてこう言った。
「メリスさん、サマリオさんにあのことを伝えておきますか?」
「ブラッディクロー幹部の一人、リラゴを倒して捕まえたことね。お願いします」
「今は大量の睡眠薬を飲ませてぐっすり眠っているけど、起きて暴れたら私たちじゃあどうしようもできないからね」
救護班の人はすぐに別の戦士にこのことを伝え、ラージュに治療後のことを話した。
「すぐに動きたいと思うけど、今は休みなさい。傷は治したけど、動いたら開くと思うから」
「分かりました。しばらく休むことにします」
「それじゃ、私は行くからね」
と言って、救護班の人は仲間と一緒に去って行った。治療を終えたライアは背伸びをし、セアンに近付いた。
「で、いつ出発するの?」
「三日後には傷も治っていると思うけど……まぁ、傷が完全に治ってからだね。今回、ブラッディクロー幹部の一人を倒したんだ。他の幹部も動くと思う」
セアンの言葉を聞き、カイトはウイークを殺したロッソのこと、そして凄腕の剣士のガーティブのことを思い出した。
そうか、あと二人いるんだ。あいつらも倒さないとな。
カイトはそう思い、拳を強く握った。
その後、カイトたちの自由な時間が始まった。カイトは背伸びをし、ヴィーナスハンドの外に出て日光浴をしていた。
「ふぃ……少し疲れたな、今回ばかりは」
カイトはそう呟きながら、リラゴとの戦いを思い出していた。その時だった。
「皆、シーポリスの船がこっちに近付いてくるわよ。戦艦だから、サマリオがくるかもしれないわ」
コスタの言葉を聞き、カイトたちは一斉に海の方を見た。そこには、キータマ島に近付いてくるシーポリスの戦艦があった。しばらくして、戦艦は港に停泊し、中からサマリオが姿を現した。
「敬礼!」
ヴィーナスハンドの隣に停泊していたシーポリスの船にいる戦士たちは、一斉にサマリオに敬礼した。サマリオは戦士たちを見て一礼し、ヴィーナスハンドに向かって高くジャンプした。
「やぁ皆、久しぶりだね」
「サマリオさん」
寝ていたカイトは立ち上がり、サマリオに頭を下げた。サマリオがきたことを察したセアンたちは一斉に姿を現した。
「サマリオー。リラゴを引き取りにきたのね」
「ああ。本当にご苦労だったね。幹部の一人を倒すとは、大手柄だよ」
サマリオはそう言いながら、カイトたちの傷を見た。
「酷い傷だ。激しい戦いだったようだね」
「ええ。本当に強かったわ、私とカイトとコスタの三人で最初は戦ったけど、やられたわ」
ケアノスの言葉を聞き、サマリオは驚いた表情をした。
「そうだったのか。二年間の修行で力を付けても、やられたのか」
「その後は、みんなで協力して倒したけどね。それでもきつかったよ」
セアンは笑いながらこう言った。ケアノスは呆れたような表情をし、セアンに近付いた。
「笑いながら言わないの。あの時は、本当に死にかけたんだから」
「でもま、倒したからいいじゃない」
「それより、早くあいつを連れてって。目を覚ましたら暴れると思うからさ」
「そうね、ライアの言う通り。確か、シーポリスの船にいるわね。あいつが連れていた海賊団の連中もいるわ」
「分かった。では護送を急ごう」
セアンたちとサマリオの会話は終わり、サマリオとその部下は急いでリラゴたちをシーポリスの軍艦に連れ込んだ。
「では皆、また会おう」
サマリオはカイトたちにそう言うと、頭を下げた。その時、あることに気付いたラージュは、メリスにこう聞いた。
「ねぇ、サマリオと一緒に行かなくていいの?」
「大丈夫。実は、メダルを集める任務を受けているから、しばらくみんなと一緒に行動するわ」
「そうなのね!」
セアンはそう言いながら、メリスに抱き着いた。サマリオは騒ぎ始めるセアンたちを見ながら微笑み、軍艦に乗り込んだ。
その日の夜、カイトは自室で眠っていた。女子たちは女子会と言って、騒いでいた。
こりゃーさすがに眠れないな。
カイトは起き上がり、あくびをしながらセアンたちがいるキッチンへ向かった。
「皆、今日は疲れたんだからそろそろ休もうぜ」
「ふぇ!」
突如、メリスの悲鳴が響いた。メリスの声を聞いてカイトは前を見た。そして驚いた。なぜかメリスの服を脱がそうとするセアン、そして半裸に近い状態のセアンたち。こんな光景を見たカイトは、驚きのあまり目を覚ましてしまった。
「おわっ! 何やってんだ皆!」
「何って……メリスにエロい衣装を着させようとしてね」
「カイト! いやぁッ!」
恥ずかしさのあまり、メリスはカイトに向かって飛び膝蹴りを放った。攻撃を受けたカイトは吹き飛び、その衝撃でラージュの胸に顔を沈めてしまった。
「あらカイト、私の胸のおかげで助かったわね」
ラージュはそう言いながら、カイトを胸に沈めた。それを見たセアンは声を上げ、カイトに近付いた。
「ちょっとー! ラージュのおっぱいより私のおっぱいに顔を沈めなさいよー!」
「今のはわざとじゃないから仕方ないわよねー」
それから、セアンとラージュによるカイトの取り合いが始まった。その様子を見ていたライアは爆笑し、コスタとケアノスはメリスに服を渡していた。
「もう、いつもこんなに騒がしいの?」
「たまにね。今日はブラッディクロー幹部の一人を倒したから、皆テンションが上がっているのよ。カイトは疲れて眠ってたけど」
コスタはメリスにこう説明した。そんな中、メリスはコスタに服を渡した。
「これ……私の服じゃない」
「あれ?」
コスタはメリスから渡された服を見て、目を丸くして驚いた。それは、際どい衣装のバニースーツだった。
「ごめん。こっちだった」
と言って、コスタはメリスの服を渡した。
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