必死の総攻撃
コスタはリラゴの力を弱めるため、チカラヌケールと言う毒草が入った煙球を放ち、リラゴの力を弱めることに成功した。だが、リラゴは魔力を開放して動き始めた。
動揺しつつも、武器を構えるカイトたちを見て、リラゴはにやりと笑っていた。
私の魔力を感じて驚いているけど、絶対に私を倒すって意志を感じるね。それと、私があと少しで倒れることも察しているんだろう。
と、リラゴは心の中でこう思っていた。今、リラゴが解放している魔力は体内に残った前魔力である。もし、次の攻撃が失敗すれば自分は負けるとリラゴは考えているのだ。
一方、カイトたちは近付いてくるリラゴを見て、どのタイミングで攻撃を仕掛けられてもいいように武器を構えていた。そんな中、コスタはスナイパーライフルを持ち、リラゴに聞こえないような小声で何かを語った。その後、カイトたちは頷き、コスタは高く飛び上がった。そんな中、メリスはリラゴの笑みを見て、気持ち悪そうにこう言った。
「あと少しで倒れると思うんだけど」
「メリス、あまりあいつがいつ倒れるかどうかなんて考えないこと。攻撃していれば、いつかきっとあいつは倒れるから」
「楽観的ね」
「苦しい時こそ、楽観的なことを考えないと」
「確かにそうね。おっと、くるわよ。コスタの作戦通りにね」
セアンはメリスの言葉を聞き、リラゴが走り出したのを確認した。それとほぼ同時に、カイトも走り出した。
「俺が先手で行く!」
「気を付けて、相手は何をするか分からないから!」
カイトはセアンの言葉を聞き、うなずいた。そして、リラゴに向かって飛びあがり、刀を振り下ろした。
「またその動きかい!」
リラゴは上から襲ってくるカイトの攻撃を左腕で防ぎ、隙だらけのカイトの腹に向かって右ストレートを放とうとした。だが、ライアがリラゴの懐に移動し、ナイフを腹で突き刺した。
「うぐがっ!」
「弱ってるね。さっきなら、この程度の攻撃でダメージを与えられなかったのに!」
「ふっ、余計なお世話だ!」
リラゴはカイトの攻撃を防ぎつつ、近くにいるライアに攻撃を仕掛けた。だが、攻撃を受けると察したライアはすぐに後ろに下がった。その時、リラゴは左腕に痛みを感じた。左腕を見ると、カイトの刀がリラゴの左腕を切り落とそうとしていたのだ。
刃は腕の四分の一のところまでめり込んでいる! このままだとやばい!
リラゴはカイトを蹴り飛ばし、左腕に食い込んだ刀を振るって落とした。その直後、蹴り飛ばされたはずのカイトがリラゴに向かって走っており、落ちた刀を素早く拾ってリラゴに斬りかかった。
「早い!」
カイトの動きの速さを見て、リラゴは思わず驚いた。その直後、カイトは刀を振るってリラゴの腹を一閃した。
「グフゥッ!」
攻撃を受けたリラゴは、攻撃を終えて近くにいるカイトの頭を掴み、床の上に叩きつけた。
「ガハァッ……」
「調子に乗るからだよ」
叩きつけられ、血を吐くカイトを見てリラゴはこう言った。だが、攻撃を受けたはずのカイトは、リラゴを見てにやりと笑っていた。その瞬間、リラゴはまさかと思った。そう思った直後、背後からケアノスとラージュの攻撃がリラゴを襲った。
「グゥッ……自ら囮になるなんてね」
「囮もそうだけど、どうしてもあんたに一発攻撃を入れたくてね」
カイトは血を吐くリラゴに向かってこう言った。倒れそうになるリラゴだったが、倒れる寸前に何とか踏みとどまり、後ろにいるケアノスとラージュに向かってラリアットを仕掛けた。
「ここは私に任せて」
ラージュはケアノスにそう言って前に出て、大剣をリラゴに押し当てた。大剣に激突したリラゴは後ろに下がり、様子を見てラージュに攻撃をしようと考えた。その時、後ろにいたコスタがラージュに向かって弾丸を放った。
「またチカラヌケールかい?」
コスタは再び力を奪うため、チカラヌケールが入った煙幕を放ったとリラゴは考えた。だが、すぐにその考えは間違いだと気付いた。今、リラゴの周囲にはカイトたちがいる。この状況で、チカラヌケールを使うはずがないとリラゴは思ったのだ。
私を倒すためなら、ダメージを与えるために直接攻撃をするはず。なら、チカラヌケールを使うわけがない!
そう確信したリラゴだったが、その予想は大きく外れた。コスタが放ったのは、チカラヌケールが入った煙幕だった。
「何!」
リラゴが驚いた直後、チカラヌケールの煙幕は広がった。リラゴは魔力を開放し、煙幕を払って周囲を見た。そこには、床の上で倒れているカイトたちの姿があった。
「力が抜けて、無様に倒れたってわけかい。その私も……無様なもんだけどね……」
と言って、リラゴは全身の力が抜けることを感じながら、その場に倒れた。それを見たカイトたちは、にやりと笑っていた。
「今だ……セアン、メリス。やってくれ」
カイトは上を見ながら、小さく呟いた。リラゴは上から強い魔力を感じ、上を見上げた。そこには、武器を持ったセアンとメリスが宙に浮いていたのだ。
「ありがとう、皆!」
「これであいつを倒せます!」
リラゴは察した。とどめの一撃はセアンとメリスに任せ、カイトたちが囮になってリラゴを攻撃し、隙を見てコスタがチカラヌケールを再び使い、弱ったところでセアンとメリスが動く作戦だったのだと。
「こんな……安い作戦に引っかかるなんて……」
自身の敗北を察したリラゴは、悔しそうに呟いた。その直後、上にいたセアンとメリスは同時に動き、倒れているリラゴに追い打ちの攻撃を仕掛けた。
ギンヤシャはあくびをしながらこの戦いを見ていた。セアンとメリスの攻撃がリラゴに命中し、周囲に激しい砂煙が舞った。
「おいおい、あまり砂煙とか巻き上げるなよ。目に入ると痛いだろうが」
そうぼやきながら、ギンヤシャは目を両腕で覆って、風を防いだ。しばらくして煙が晴れ、そこには床の上で倒れているリラゴを見つめるセアンとメリスの姿があった。
「これで……倒したのかしら?」
「多分倒したと……思う。思いたい」
セアンはリラゴの近くでしゃがみ、指でリラゴをつついて反応を見た。いくらつついても、リラゴは反応しなかった。
「多分、倒したんだと思うぜ。魔力を感じない」
近くにいたカイトが、セアンにこう言った。メリスも指でリラゴをつつき、反応がないことを確認し、その場に座った。
「終わった。やっと……やっとブラッディクローの幹部の一人を倒したわ……」
メリスはそう言うと、疲れのあまりその場に倒れた。セアンは大きく息を吐き、大の字で横になった。
「あぁ……勝った。何とか勝った」
「お疲れ、皆」
スナイパーライフルを持ったコスタが、倒れているカイトたちの元に歩いてきた。その後、コスタは解毒剤をカイトたちに与えた。
「あの作戦がうまくいくとは思わなかったわ。半分、賭けみたいなものだったし」
「でもま、これであいつを倒せたんだから、すべてオッケーよ」
セアンはコスタを見て、ブイサインを作ってこう言った。
その後、回復したカイトたちは気を失ったリラゴを動けないように縛り、ギンヤシャの方を見た。
「では、お騒がせしました」
「ああ。派手にやったな」
「片付けはした方が……いいですよね」
「お前たちはお前たちの用があんだろ? 片付けなんざ俺一人でできっから、心配すんな。それじゃ、残りのメダル、気を付けて手に入れろよー」
と言って、ギンヤシャは片付け道具を取りに行くため、別室へ向かった。カイトたちは協力してリラゴを背負い、部屋の出入り口から去って行った。
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