その手は見破った！
カイトは心の中で、リラゴがどれだけ強いか把握していた。セアンたち、そしてメリスと合流してリラゴと戦っているが、ダメージを与えてもリラゴは動揺することもせず、それどころか戦いを楽しむような言動をしているからだ。
こいつは本当に頭のねじがぶっ飛んだ、戦闘狂だな。
呆れたように、カイトは心の中でこう呟いた。リラゴは近くにいたカイトに目を付け、右腕を大きく振り上げた。自身に攻撃が迫ることを察したカイトは、刀を使って防御し、その隙にセアンがハンドガンでリラゴの右腕を打ち抜いた。
「うぐぅ！」
痛みが走ったのか、リラゴは悲鳴を上げながら後ろに下がった。その隙に忍び寄っていたラージュが、力を込めて大剣を振るった。
「ぶっ飛びなさい！」
ラージュ渾身の一撃が、リラゴに命中した。攻撃を受けたリラゴは悲鳴を上げながら後ろに下がった。リラゴは魔力を使って治療をしようとしたのだが、ライアとメリスが接近し、攻撃を仕掛けた。
「このままあんたを倒す！」
「隙は与えないわ！」
ライアとメリスの攻撃は素早く、それなりにダメージを負っていたリラゴにとっては見切ることができなかった。
「いい動きだねぇ。だけど、邪魔なんだよ！」
リラゴは大声を発しながら魔力を開放し、近くにいたライアとメリスを吹き飛ばした。その直後、ケアノスがリラゴに接近し、腹に向かってレイピアを突き刺した。
「てァァァァァァァァァァ！」
力、魔力を込めた連撃がリラゴを襲った。鋭いレイピアの刃がリラゴの腹を突いたのだが、それでもリラゴはケアノスに接近した。
「ちょこまかとうざったい攻撃を仕掛けるねぇ。どうせやるなら、ドカーンと一発、大きな攻撃を仕掛けないとね！」
「それじゃあ、お望み通り大きな攻撃を与えてやるわよ」
そう言いながら、大剣を構えたラージュがリラゴに接近し、大剣を振り下ろした。渾身の一撃がリラゴに命中し、リラゴは口と鼻から血を流した。
「結構痛い一撃だと思うけど……」
攻撃を終えたラージュは、ケアノスを連れて後ろに下がった。
カイトたちの連続攻撃を受け、リラゴは心の中から追い詰められた状況を楽しんでいた。だが、自身が何をしにここにきたのかを思い出し、ため息を吐いた。
ここまでダメージを受けたらやばいか。仕方ないか、あれを使おう。
そう思い、リラゴは服の裏側ポケットから、小さな小瓶を取り出した。それを見たカイトは、すぐにそれがイコルパワーだと知り、止めようとした。だがその前に、発砲音が聞こえた。
「なっ……」
発砲音を聞いたリラゴは、ほんの一瞬だけ動きを止めた。コスタが放った弾丸が、リラゴが持っていた小さな小瓶を打ち抜いたのだ。
「な……ああ……」
「イコルパワーなんて使わせないわよ」
コスタはスナイパーライフルを構え、こう言った。これで最後の手段は使えないだろうとカイトは思ったが、リラゴは不敵に笑みを浮かべていた。
「私がイコルパワーを使うことも計算していたんだね。でも、イコルパワーは小さな一滴でも、その分の威力を発揮するんだよ！」
リラゴはそう言うと、指に付着していたほんの少量のイコルパワーを舐めた。その直後、リラゴの筋肉が膨張し、受けていたダメージがあっという間に回復した。
「ふぅ。立った少量でもこれだけの効果があるなんてねぇ」
イコルパワーを使ったリラゴは、立ち上がりこう言った。その様子を見ていたギンヤシャは、目を丸くして驚いていた。
「俺が知らない間に、とんでもない薬が開発されたんだな」
カイトはまたこの展開になってしまったかと思いつつ、刀を構えていた。セアンもため息を吐き、カイトに近付いてこう言った。
「あの状態で攻撃を受けたら、致命傷になるね。気をつけよう」
「ああ。動きも早くなっていると思うから、十分注意しないと」
「おしゃべりする暇は与えないよ！」
リラゴは叫びながら、カイトとセアンに接近し、大きくなった右腕で攻撃を仕掛けた。カイトは刀を振るってリラゴの右腕を攻撃したのだが、刀の刃はリラゴの腕の途中で止まってしまった。
「ぐっ！ 固くなってる！」
「そりゃーそうだよ。イコルパワーのおかげで、私の筋肉は固くなったんだからねぇ！」
そう言って、リラゴは右腕を振り回した。しばらくリラゴが右腕を振り回していると、カイトの刀は腕から抜け、刀を手にしていたカイトも遠くへ投げられた。
「カイト！」
「彼氏の心配をする暇があるなら、自分の心配もした方がいいんじゃないかぁい？」
セアンは自身の近くにリラゴがいることを察し、すぐにバリアを張った。その直後、リラゴの左ストレートがセアンに向かって放たれた。バリアのおかげで防御できたが、リラゴの攻撃でバリアにひびが入った。
「うわー、それなりに魔力を使ってバリアを張ったのに」
「そんなバリアで私の攻撃を受け止められると思うんじゃないわよ！」
リラゴの次の攻撃がくる。そう察したセアンはひび割れたバリアを自分で割り、バリアの破片を使ってリラゴに攻撃を仕掛けた。
「グッ！ こんなの！」
リラゴは飛んでくるバリアの破片を左手で払った後、後ろに下がったセアンを攻撃しようと動いた。だが、コスタが放った弾丸がリラゴの左肩に命中した。
「弾丸ねぇ。これで、私が止められると思うのかねぇ？」
リラゴは左肩にめり込んでいる弾丸を見てこう言ったが、コスタは小声でこう言った。
「止めるから、弾丸を撃った！」
その直後、左肩にめり込んだ弾丸が破裂し、リラゴの周囲に煙が発生した。
「うげっ！ ごほっ！ クソッ、これが狙いだったのか！」
リラゴは煙を払いながら、攻撃されないように歩いていた。
煙で視界を奪われた。この隙に、攻撃される！
と、リラゴは心の中でこう思っていた。だが、リラゴの予想に反し、カイトたちは攻撃を仕掛けてこなかった。煙が晴れた後、リラゴは一か所に集まっているカイトたちを見て、にやりと笑った。
「へぇ、さっきの煙は私の目を封じて、一度集まるために使っただけなんだねぇ。皆一か所に集まってどうするつもりだい？ まとめて私の手で、あの世へ逝きたいってわけか？」
「つまらない冗談を言うのはおススメしないわ。あんたはもう、私たちに勝てないわよ」
セアンの言葉を聞き、リラゴは怒りの声を上げた。その瞬間、リラゴの両腕が突如力を失い、下に垂れた。
「なっ……何だと！ 腕に力が入らない！」
いきなり力を失い、リラゴは驚き叫んだ。この時、リラゴは察した。コスタが発した煙幕には、力が抜ける作用があると。目隠しではなく、力を奪うためにあの弾丸を使ったのだと。
「クソ……」
「筋トレも大事だけど、他のことを知ることも大事よ。チカラヌケールなんて毒草の名前、あなた知らないでしょ？」
「私が教えたのよ」
と、コスタとラージュがこう言った。リラゴは歯を食いしばりながら、体中の魔力を一気に開放した。
「うわっ！ あいつ、まだあれだけの魔力を持ってたの？」
「ブラッディクロー幹部よ。これだけ強くても不思議じゃない」
ライアはリラゴの魔力を感じて驚き、ケアノスはリラゴの強さに圧倒されながらも、呼吸を整えて攻撃に備えた。
「ふざけたことをするねぇ！ こんなチンケな手段で私が追い込まれるなんて思わなかったよ！ 最高だよあんたら、ここまで私を追い込んだんだ！ だから！ あんたらは私の全力の攻撃であの世へ送る！」
と言って、リラゴはカイトたちに向かって走り出した。
「チカラヌケールの効果で、力が落ちたはずなのに」
「気合と根性と魔力でどうにかしているのよ。動揺している場合じゃないわ、反撃するわよ！」
セアンはメリスにこう言った後、迫ってくるリラゴを睨んだ。
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