隙を突いて一撃を
セアン、ライアの戦いが終わったことを察したラージュは、安堵の息を吐いていた。その様子を見ていたラージュと戦っている女戦士、リッツは苛立ちを顔に表した。
「はん! 他の二人が倒されて安心しているようだけど、私はそう簡単に倒されはしないよ!」
と言って、リッツは魔力を開放して周囲に火、水、雷、風の球体を作った。それを見たラージュは、驚いた表情をした。
「まさか、全属性の魔力を使えるなんて」
「私はプイーエ海賊団の中でも、天才と言われるほどの魔力使いだよ。さあ、私の攻撃を受けてくたばれ!」
リッツは魔力を操り、各魔力の属性の球体からビームを放った。ラージュは反射的に横に飛んで攻撃をかわしたが、ビームは何度も放たれた。
「ほーらほらほら! 早く逃げないと、風穴が空いちゃうよ!」
逃げるラージュを見ながら、リッツは笑いながらこう言った。ラージュは反撃のため、大剣を構えてリッツの元へ走ろうと思ったのだが、リッツは床の上に魔力で作った球体を発し、ラージュに向かって再びビームを放った。
「グッ!」
下から放たれるビームを見て、ラージュは慌てて逃げ始めた。そのせいで、ラージュとリッツとの距離が開いてしまった。
「残念だねぇ。この距離で、どうやって私に近付くんだろうねぇ?」
と言って、リッツは笑い始めた。
戦いを終えたセアンとライアは、その場に座って休んでいた。
「ラージュが危険だけど……」
「助けに行った方がいいよね、これ」
ライアがこう言うと、ギンヤシャが前に立ってこう言った。
「止めとけ。さっきの戦いで体力も魔力も使いまくっただろうが。疲れた奴が戦いに乱入しても、邪魔になるだけだ」
「確かにそうだけど」
「邪魔になるんだよ。それに、あのねーちゃんは何か考えてやがる。何をするのか分からねーがな」
ギンヤシャの言葉を聞き、ライアはラージュがどう動くか、自分の目で確かめることにした。
リッツは勝利を確信していた。魔力は十分。放っている魔力は弱くとも、ラージュの体を打ち抜くことができる。心臓や脳など、打ち抜けば即死につながる場所を狙って攻撃すれば、この戦いに勝てるだろうと思っていたのだ。
しかし、リッツの予想通りにはならなかった。ラージュはビームをかわし続けているのだ。最初は余裕の笑みを浮かべていたリッツだったが、時間が経つにつれ、その顔は怒りへと変わっていた。
「クソッ! いい加減ビームに撃ち抜かれなさいよ! ちょこまか動くとイライラするじゃない!」
「そんなこと、私の知ったことじゃないわよ」
ラージュはリッツに向かってそういうと、大剣を持って走り出した。接近してくると察したリッツは、扇状に魔力の球体を並べ、一斉にビームを放った。飛んでくるビームに対し、ラージュは飛び上がってビームをかわした。だが、リッツはその行動を狙っていたのだ。
「バカね! 宙に浮かべば、身動きが取れない!」
リッツは宙にいるラージュに狙いを定め、一斉にビームを放った。
「宙にいれば身動きが取れない。確かにそうね。でも、その考えは古すぎるわよ」
ラージュはそう言うと、足元に魔力で作った板を発し、それを足場にして強く踏んで飛び出し、リッツの頭上に飛んだ。
「なっ! 格闘ゲームのような動きを!」
「そうね、確かに格ゲーね!」
驚くリッツに対し、ラージュは大剣を振り下ろして攻撃を仕掛けた。大剣の刃はリッツにあたり、大きく後ろに吹き飛んだ。
「グッ! グフッ!」
攻撃を受けたリッツは立ち上がり、熱く感じる右肩付近を手で触った。手を見ると、血が付着していた。
「よくも私に一撃を……」
「敵に一撃与えちゃダメってルールはないわよ。でも、まだ元気があるなら、もう一発攻撃しないとね」
ラージュは大剣を構え、ジグザグに走り出した。リッツはよろつきながらも再び魔力を開放し、魔力の球体を作ってビームを放った。だが、攻撃を受けたせいで、狙いが定まらなかった。
「さっきより攻撃の精度が落ちたんじゃない?」
「うるさい!」
ラージュの言葉に対し、リッツは大声で怒鳴った。その後、ラージュは再びリッツに接近し、攻撃を仕掛けた。
「このっ!」
迫る大剣の刃を見て、リッツは魔力でバリアを作った。
「あら、防御されちゃったわね。でも、この程度のバリアなら、無理矢理攻撃すれば簡単に壊れるわね!」
そう言って、ラージュは力任せに大剣を振り下ろし、リッツのバリアを壊した。
「なっ……あぁ……」
「さーてと、そろそろこの戦いに幕を下ろしましょう」
呆然とするリッツを見て、ラージュはにやりと笑ってこう言った。その言葉を聞いたリッツは我に戻り、急いで反撃の支度をした。だが、その前にラージュの大剣がリッツに命中した。
「ゴフォッ!」
強烈な痛みがリッツを襲った。その後、攻撃の勢いでリッツは後ろに吹き飛び、壁に激突した。
「おいおい、あまり壁に叩きつけるなよ。元に戻すのに時間がかかるんだよ」
発生する砂煙と、周囲に散らばる壁の破片を見て、ギンヤシャがこう言った。
壁にめり込んだリッツは立ち上がるも、体中に走る痛みのせいで、立ち上がっても体を動かすことができなかった。
まずい……このままだと……勝てない。
ラージュに勝てないと察したリッツは、残る魔力を使って動けるまで傷を治療し、逃げて仲間かリラゴと合流しようと考えた。だが、ラージュがリッツを逃がすことはなかった。
「逃がすと思う?」
大剣を持ったラージュが、リッツの前に立った。リッツは思わず悲鳴を上げ、後ろに下がった。それに対し、ラージュはリッツを追いかけるように歩いた。
「戦いを始めたのはあなたたちじゃない。逃げるのはなしよ」
そう言うと、ラージュは魔力を開放して大剣を振り下ろし、リッツに一閃を与えた。攻撃を受けて気を失いそうになるリッツだったが、ラージュは力を込めてリッツに追撃を放った。
「ぎゃァァァァァァァァァァ!」
追撃を受けたリッツは、悲鳴を上げながら壁に激突し、完全に気を失った。
戦いを終えたセアンたちは、背伸びをしてリラックスしていた。
「すごい戦い方だな。もし、俺が戦ったら、負けてたかもな」
と、セアンたちの戦いを見ていたギンヤシャが、笑いながらこう言った。
「えー? ソンウクもそうだけど、シチボも結構強かったよ。あんたも強いんじゃない?」
「俺はあの二人より強くねーよ。俺にできるのは、剣を振り回すことだけだ」
と言って、ギンヤシャは腰にある剣を見せた。
「剣を振り回すねぇ。そう言っておきながら、結構いい腕なんじゃないの?」
「他の奴が見たらどう判断するか分からねーけどな。でもま、俺はメダルの守護者の中でも、下の下の実力かもしれねーな」
「自信がないのね」
「過剰な自信は持たないことにしてるんだよ」
ラージュの言葉に対し、ギンヤシャは笑いながらこう言った。そんな中、セアンたちは強い魔力を感じ、出入り口の方を見た。そこには、リラゴの姿があった。
「どうやらここが、メダルがある部屋のようだけど……先客がいたね」
リラゴがこう言うと、セアンたちは武器を持ってリラゴを睨んだ。初めて会ったのだが、リラゴから威圧、そして悪意を感じ、こいつは敵だと判断した。
「あんた、何者?」
「あん? あぁ、お前らがピラータ海賊団か。私たちの邪魔をする、目障りな存在!」
「目障りな存在? じゃああんたは、ブラッディクローの!」
ライアの言葉を聞き、リラゴはにやりと笑ってこう言った。
「その通り。私はブラッディクローの関係者。私はリラゴ! ブラッディクローの幹部だよ!」
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