ロックで響く電
キータマ島の遺跡の守護者、ギンヤシャからメダルを受け取ったセアンたち。だが、プイーエ海賊団が追い付き、戦うことになってしまった。一部船員は撃退したのだが、いつものように腕に自信がある船員が残り、セアンたちに戦いを挑んだ。
セアンはカトラスを手にし、目の前にいる男に斬りかかった。男はセアンの攻撃をかわし、背中にある武器を手にした。
「それじゃあ始めるぜ、ナバナによるエキゾチックなロックンロールを!」
ナバナと名乗った男は、背中の武器、エレキギターを手にして振り回した。
「はぁ? あんた、エレキギターで戦うつもり? 頭のねじが数本ぶっ飛んでるんじゃないの?」
予想外の武器を目にして、呆れてセアンはこう言った。だが、ナバナはエレキギターによる演奏を続けていった。あほらしいと思ったセアンはすぐにこの戦いを終わらせようと動いたのだが、ナバナの元へ向かう前にエレキギターから雷で作られた球体が現れ、宙に浮いた。
「ただのエレキじゃねぇぜ。こいつは音に合わせて自由に魔力を使って攻撃できるエレキだぜ」
ナバナの説明を聞いたセアンは、飛んでくる雷の球体をかわし、ハンドガンを手にした。それを見たナバナは、エレキギターの弦を響かせた。すると、無数の細かい雷の衝撃波がセアンを襲った。
「んなっ!」
ハンドガンを構えて攻撃を仕掛けようとしたセアンだったが、飛んでくる雷の衝撃波を見て、攻撃するより回避することを選んだ。
「避けるつもりかい? 無駄だぜ、俺のロックから逃れることはできないぜぇ!」
ナバナは逃げるセアンを見て、激しくエレキギターの演奏を始めた。
ギンヤシャは耳を両手で塞ぎながら、ため息を吐いていた。
「あー、うるせーなー。俺はロックンロールよりエロい雰囲気の音楽が好きなんだけどよー」
そう言いながら、ギンヤシャはナバナを見た。自分の演奏に浸っているナバナを見て、ギンヤシャは再びため息を吐いた。
「あの野郎、自分の演奏に酔いしれているのか、勝利を確信しているのか分からねーが……ま、あんな奴が勝てるわけねーか」
酔いしれているナバナを見て、ギンヤシャは小さく呟いた。
飛んでくる雷の衝撃波や球体をかわしながら、セアンは反撃のチャンスを狙っていた。
どこかに攻撃を仕掛ける隙があるはず。そこを狙ってあのエレキギターを壊すことができたら、あいつの攻撃を止められる!
セアンはナバナが察しないように、左手にハンドガンを手にした。ナバナはそのことを気付かずに、ひたすらエレキギターを演奏していた。
「へいへいへい! 逃げてばっかりだと俺に勝てねーぜぇ? 俺の演奏に酔って痺れて、くたばっちまえ!」
勝利を確信したかのように、ナバナはこう言った。ナバナは弦を少し引っ張り、音を響かせた。次の瞬間、無数の衝撃波が放たれた。
「ふぅ……絶頂したぜぇ……」
ナバナはいい音を出したと思い、うっとりしていた。セアンはその隙に衝撃波をかわし、ハンドガンでナバナが持つエレキギターに向かって弾丸を放った。ナバナは発砲音を聞き、飛んでくる弾丸に向かってエレキギターを振るった。弾丸はエレキギターに命中したが、エレキギターはセアンが予想しているより硬く、弾丸を弾いてしまった。
「こいつを壊そうとしたのか? 悪いねぇ、俺のエレキギターは弾丸よりも固い物体でできている。そう簡単に壊すことができないぜ!」
「あっそう」
セアンは魔力を開放し、鋭利な風の刃を放った。鉄でできた弾丸が弾かれるのなら、鉄を斬れる鋭利な刃なら、エレキギターを破壊することができるだろうと考えたのだ。
「今度は魔力か……ちーっとやばいな」
ナバナも魔力を開放し、魔力のオーラをエレキギターに纏わせ、飛んでくる風の刃に向かって振るった。魔力によって守られたエレキギターは風の刃に命中し、風の刃を消した。
「魔力がなかったら、やばかったぜ」
と言って、ナバナはエレキギターを構えた。その直後、カトラスを手にしたセアンが目の前に接近した。
「うらァァァァァ!」
セアンは大声を発しながらカトラスを振り回した。ナバナはエレキギターをセアンの動きに合わせて振り回し、攻撃を防いだ。
「噂で聞いたように、君たちは強いな! もっと激しいロックを響かせないと勝てないなぁ!」
ナバナは後ろに下がり、再び演奏を始めた。雷の衝撃波や球体が襲い掛かったが、セアンはカトラスを振るってそれらを消した。
「魔力を使っているようだな。だが、魔力がいつまでもつかな?」
「私の魔力切れを待っていたら、あんたは斬られるよ!」
セアンはナバナに向かって飛びあがり、カトラスを振り下ろした。ナバナはエレキギターを上に掲げ、セアンの攻撃を防いだ。
「エレキギターの裏側で防御したか……」
防御した直後に反撃をすると察したセアンは、すぐに後ろに下がった。その動きを見たナバナはにやりと笑った。
「後ろに下がったのは間違いだねぇ! 直球のロックンロールをその身で浴びろ!」
ナバナは激しくエレキギターを鳴らし、槍のような雷を発した。とんでもない速さで迫る雷の槍を見て、セアンは魔力のバリアを張って攻撃を防いだ。
「グウッ!」
雷の槍を防ぐことはできたのだが、雷の槍の先端はセアンのバリアを突き破った。
「攻撃は終わってないぜ!」
と言って、ナバナは再びエレキギターを鳴らした。音に合わせて、バリアを貫いた雷の槍の周りに、激しい電が発した。
「まさか、槍を強化しているの!」
「ビンゴ! 正解した暁に、感電させてやるぜェェェェェェェェェェ!」
ナバナは叫び声を上げながら、雷の槍を魔力で使って動かした。雷の槍はバリアを破壊し、セアンに向かって飛び出した。
「あんたがその気なら、こっちもその気で行くわよ!」
セアンは強い魔力を開放し、迫ってくる雷の槍に向かってカトラスを振り下ろした。
「そのカトラスで俺の雷の槍を一刀両断するつもりか! 無駄だぜ! 雷の槍は俺の演奏でもっともっと強くなる! お前がどれだけ強かろうが、無意味なんだよォォォォォ!」
「あんたがどれだけその槍を強くしようが、私には勝てないのよォォォォォ!」
セアンとナバナは叫びながら、魔力を開放した。エレキギターの音が激しく響く中、セアンから魔力の衝撃波が次々と飛び出していた。
グッ! まだくたばらねぇのかよ!
ナバナはエレキギターを演奏しながら、雷の槍に立ち向かうセアンを見た。そんな中、セアンの衝撃波がナバナの元まで届き、一本の弦を斬ってしまった。
「しまった!」
この一瞬、演奏を止めてしまっただけで雷の槍は急激に弱くなった。その隙にセアンはかなり強い魔力を開放し、雷の槍を破壊した。
「残念だったわね」
雷の槍を破壊したセアンはにやりと笑ってこう言うと、すぐにナバナの元へ接近した。
「なっ……」
「悪いわねー。あんたの大事なエレキギターの弦を斬っちゃってねー」
この言葉を聞いたナバナは、わざとセアンが魔力の衝撃波でエレキギターの弦を斬ったと察した。この隙を作るために。
「さぁ、覚悟しなさい!」
セアンはナバナの腹に向かって蹴りを放ち、転倒させた。立ち上がろうとしたナバナだったが、セアンはカトラスを振り上げてナバナを宙に上げた。
「このまま滅多切りにしてやるわ!」
セアンは再び魔力を開放し、飛び上がったナバナに向かって飛びあがり、カトラスを振り回した。
「ぐわァァァァァァァァァァ!」
「さぁ! これで終わりよ!」
セアンはカトラスに魔力を込め、血まみれになっているナバナに向かってカトラスを振り下ろした。攻撃を受けたナバナは地面に向かって勢いよくぶっ飛び、地面にめり込んだ。
「が……あぁ……」
大ダメージを受けたナバナは短い悲鳴を上げ、気を失った。
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