改めて感じる力の差
リラゴによって倒された後、カイトはしばらく気を失っていた。目が覚めてカイトが感じたのは、うなじ部分から感じる強烈な痛さだった。
「アガッ! いってぇ……」
軽いめまいと吐き気を覚えつつも、カイトは呼吸を整えて気を紛らわした。
「カイト、大丈夫?」
「呼吸が荒いけど、動ける?」
と、治療をしていたコスタとケアノスがカイトに駆け寄った。カイトは包帯を巻いているコスタとケアノスを見て、驚いた。
「二人もやられたのか」
「ええ。参ったわね。三人でかかれば追い返すことはできると思ってたけど……」
「予想以上に幹部は強いわね」
コスタとケアノスの言葉を聞き、カイトは小さく息を吐いてこう言った。
「俺たちはさっき変な三人組と戦ったんだ。万全な状態じゃないよ」
「確かに、それも敗因の一つね」
ケアノスはそう言いながら、魔力を使って治療を続けた。カイトも魔力を使ってうなじを治療しようとしたのだが、うなじに触れた瞬間に激痛を感じた。
「あっがァァァァァァァァァァ!」
「どうしたのカイト? ちょっと、うなじを見せて」
コスタとケアノスはカイトの後ろに回り、うなじを見た。
「うわぁ……これはひどい。変色してるわ」
「強く殴られたのね。首の骨が折れてなくてよかった」
「そんなにひどいのか?」
「紫に変色してるわ」
「うわ……そりゃひでぇ」
カイトは心の中で、なるべくうなじに触れないようにと決めた。そんな中、カイトは後ろから足音を聞いた。
「誰かくるぞ」
「ええ。数は一人じゃない多数よ」
「プイーエ海賊団の仲間だったらどうする? やりあう?」
「雑魚が相手なら何とか戦えるわ。私とコスタも治療を終えてるし」
「そうだな。まだ体の節々がちょっと痛むけど……俺も何とか戦える」
カイトは立ち上がりながらそう言った。コスタとケアノスはゆっくりと立ち上がり、後ろからくる何者かの到着を待った。それから数分後、カイトたちの目には、見覚えのある姿が映った。
「嘘、メリスだ!」
「メリス? マジかよ、この島にきたのか!」
メリスの姿を見たカイトたちは、安堵の息を吐きながらその場に座り込んだ。しばらくして、メリスとシーポリスの戦士たちがカイトたちの元に到着した。
「皆、大丈夫?」
メリスは傷だらけのカイトたちを見て、すぐにこう聞いた。ケアノスは安堵の笑みを浮かべながら、心配するメリスに答えた。
「何とかね。一応、応急処置はしたから動けるわ」
「よかった。でも、まだ完全に傷は治っていないわね。手当は私たちに任せて」
と言って、メリスはカイトたちの治療を始めた。
治療中、ケアノスはキータマ島で起こったことをメリスたちに話をしていた。治療しながら話を聞いていたメリスは、目を丸くしていた。
「幹部の一人と戦ったのね」
「ああ。名前はリラゴ。ゴリラみたいな女だ」
「武器を使うガーティブとロスと違って、あの女は素手で戦った」
「その攻撃力が半端なかったのよ。それに、防御力もある」
「鍛えてなかったら、俺たちは殺されてたかもな」
カイトたちの話を聞き、メリスは頷いていた。
「幹部と戦って命が残っていたのは奇跡に近いかもね。でも、どうしてカイトたちを始末しなかったのかしら?」
「セアンたちが先に遺跡に向かっているから、後を追いかけて倒すつもりだろう」
カイトはそう言いながら、ゆっくりと立ち上がった。立ち上がったカイトを見たシーポリスの戦士たちは、慌てながら近づいた。
「カイトさん! 治療は終わったとしても、すぐに立ち上がるのは危険ですよ!」
「完全に治療が終わったわけではありません! もうしばらく安静にしないと、危険ですよ!」
シーポリスの戦士の言葉を聞き、カイトはこう言った。
「確かにそうだけど。今はじっとしてられない。リラゴの奴がセアンに追いついたら、勝てるかどうか分からない」
「早く追いつきましょう。そして、皆であのゴリラを倒すのよ」
ケアノスは立ち上がり、ゆっくりと背伸びをした。コスタは残りの弾丸の数を数え、スナイパーライフルを手にして立ち上がった。
「この程度の傷なら、何とか戦えるわ。メリス、早く遺跡に向かいましょう。セアンたちが不安だわ」
コスタの言葉を聞き、戦意はまだあると感じたメリスは、後ろにいるシーポリスの戦士にこう言った。
「行くわよ皆。目的はこの島の遺跡! 先に向かったセアンたちと合流して、リラゴとその傘下の海賊団を倒す!」
メリスの声を聞いたシーポリスの戦士は、大きくて勇ましい声を発した。
メリスたちと合流したカイトたちは、急いで遺跡に向かっていた。走る中、カイトたちは武器を手にしていた。そのことを気にしたシーポリスの戦士が、カイトにこう聞いた。
「あの、どうして武器を構えているんですか?」
「奴らのことだ。待ち伏せを用意している可能性がある」
「待ち伏せですか……」
シーポリスの戦士がこう言った直後、上から弾丸が飛んできた。カイトは弾丸をかわし、上を見上げた。そこにはプイーエ海賊団の狙撃手がいた。
「狙撃手か。面倒なのがいるな」
「私に任せて」
コスタは高く飛び上がり、弱い魔力で弾丸を作り、それを使ってスナイパーライフルで狙撃した。
「あうぉっ!」
撃たれた狙撃手は、情けない声を上げながら木の上から落ちた。
「おお。走りながらも正確な狙撃。素晴らしい腕ですな」
コスタの狙撃術を見たシーポリスの戦士は、手を叩いて感激した。その直後、前からプイーエ海賊団の船員が姿を現した。
「やはり俺たちの予想通り、ピラータ海賊団の奴らが生きていやがった!」
「シーポリスがいるのは予想外だったが、それでも勝てる相手だ!」
「リラゴさんの勘も鋭い! あいつら、傷を治療して追いかけてきやがったぜ!」
プイーエ海賊団の船員は勇ましい言葉を発しながら、カイトたちに襲い掛かった。だが、剣や槍などの武器を持ったシーポリスの戦士によって、その一部が倒された。
「雑魚の相手は我々にお任せください」
「皆さんは、セアンさんたちとの合流を急いでください!」
「騒動が終わったら、合流しましょう!」
シーポリスの戦士はそう言った後、目の前にいるプイーエ海賊団の船員に向かって走り出した。カイトは自分がプイーエ海賊団と戦おうと思っていたが、メリスがカイトにこう言った。
「彼らに任せましょう。ここに残ったのは多分雑魚。本命はセアンたちの方へ向かったかもしれないわ」
「だけど、大丈夫か?」
「ええ。彼らを信じて!」
メリスの言葉を聞き、カイトは戦いを始めたシーポリスの戦士に向かって、こう叫んだ。
「後で合流しましょう! メダルを持って、必ず戻ってきます!」
あれから、プイーエ海賊団の待ち伏せはなかった。
「待ち伏せはあそこにしかいなかったのね」
「そうね。それなりに人数がいたから、戦力を集中させたのね」
ケアノスとコスタはそう会話をしていた。カイトは前を見て、いつ、早く遺跡へ向かわないとと思っていた。そんな中、カイトたちの目に遺跡の出入り口が映った。
「あれが入り口か!」
カイトの言葉を聞き、コスタたちは遺跡の前を見た。リラゴがいるかもしれないと思ったからだ。だが、入り口の前には誰もいない。
「誰もいないわね」
「待ち伏せはないのね。とにかく中に入りましょう!」
「ああ、セアンたちが不安だ。無事だといいんだけど」
カイトたちは走る速度を落とさず、そのまま遺跡の中へ入り込んだ。
遺跡の中に入ったカイトは、すぐに周囲を見回した。遺跡の中は罠まみれ。今までの遺跡探検で得た経験でこう思っていたが、目の前の光景を見て、カイトたちは思わず足を止めてしまった。
「な……何じゃこりゃ」
カイトたちの前にあったのは、発動済みの質素な罠だった。
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