風と炎の激突
カイトは相手の女の攻撃と自分の攻撃が相殺したことを察すると、すぐに後ろに下がった。相手の女も同じことを考えていたのか、後ろに下がって態勢を整えていた。
「チッ、同じ行動か」
「同じセリフを返すぞ」
カイトはそう言うと、刀を構えた。女は棒を振り回し、カイトを睨んだ。
この坊主、かなり強い。
と、相手の女、チンパは心の中で嬉しそうにこう思った。チンパはリラゴからピラータ海賊団の強さの話を聞いていた。どれだけ強いのだろうとチンパは思い、いつ戦えるかどうかワクワクしていた。
「いい戦いになりそうだよ。もっと私と楽しもうよ」
「悪いが、戦いを楽しむ時間はない。速攻で終わらせる!」
カイトはそう言うと、刀を構えてチンパに接近した。
相手は短期戦で決着を望むのか。なら、私のやり方でこの戦いを長引かせよう。
そう考えたチンパは、後ろの木の中に入った。
「クッ! またちょこまか飛び回るのかよ!」
カイトはこう言うと、木の中を飛び回るチンパを目で追った。すると、木の間から木の枝が飛んできた。カイトは木の枝をかわし、風を発して飛び回るチンパに攻撃を仕掛けた。
また同じ技で攻撃を仕掛けるつもりだね。
後ろを見て、チンパはカイトが放った風の刃が追ってきていることを察した。その後、チンパはカイトの背後に回り、奇襲を仕掛けた。
「そこだな」
カイトはチンパの方を振り返りつつ、刀を振り上げた。攻撃がくるだろうと予測していたチンパは、棒でカイトの攻撃を防御し、後ろに下がりながら火の玉をカイトに向かって放った。カイトは刀で飛んでくる火の玉を払いつつ、後ろに下がったチンパを睨んだ。
「へぇ。いい顔するじゃない」
「余裕を持つのも今のうちだぞ」
「ふーん。結構強気だね。何か策でもあるようだね」
「策がある? 確かにそうだな」
カイトはそう言ってにやりと笑った。何かあると思ったチンパは、後ろを見てカイトの笑みの理由を把握した。カイトが放った風の刃が、チンパに迫っていたからだ。
「それなりに強い魔力を持っているみたいだね」
と言って、チンパは棒を振り回して迫ってくる風の刃をかき消した。その隙に、カイトが刀を持ってチンパに接近したのだ。
「この隙を狙ってたわけね」
「悪いけど、相手が女だからって、俺は加減しないぞ!」
「平等か。それが一番いいよ」
チンパがそう言った直後、カイトは刀を振り下ろした。
コスタは後ろに下がりながら、カイトがチンパに攻撃をしている光景を目にした。
「カイトの方は終わったみたいね」
「それはどうかな?」
と、コスタと戦っている男がそう言った。どういう意味なのだろうとコスタは思ったが、すぐにその言葉の意味を理解した。
カイトは刀を受け止められていることを察し、冷や汗をかいていた。チンパは両手でカイトの攻撃を受け止めていたのだ。
「真剣白刃取り……まさか、そんな技を使うなんて」
「一か八かだったけど、私の賭けが勝ったようだね!」
と言って、チンパは素早くカイトの腹に蹴りを放った。蹴りを受けたカイトは後ろに吹き飛び、刀を手放してしまった。
「グハッ!」
「これで終わりなわけないよね? まだまだ行くわよ!」
チンパは魔力を開放し、無数の火の矢をカイトに向かって放った。カイトは立ち上がるさなか、自分に向かって飛んでくる火の矢を見て、動きを止めていた。
「避けることができないってわけ? 何か策でもあるんじゃないの?」
「戦い慣れてるのか。あんたの言う通りだ、策はある!」
カイトはそう言うと、火の矢が当たる寸前に体を横に回転させて火の矢をかわした。それを何度も繰り返し、攻撃を回避した。
「へぇ、すごいことをするじゃん。それに、どさくさに紛れてその変な剣を回収するなんて」
カイトは手放してしまった刀を手にし、立ち上がって構えた。チンパは棒を手にし、カイトに向かって走り出した。
「今度は私が仕掛けてあげるわよ!」
「上等だ!」
迫ってくるチンパに対し、カイトは大声でこう言った。その後、チンパは棒を振り下ろしてカイトに攻撃を仕掛けた。カイトは攻撃を防御し、刀を振るってチンパの棒を弾き、左手から風の矢を放った。
「グッ!」
後ろに下がったチンパは、放たれた風の矢を叩き落とすため、棒を振るった。棒の先端に命中した風の矢は跡形もなく消滅したのだが、チンパが風の矢に気を取られている隙に、カイトは強い魔力を開放して巨大な風の刃を放っていた。
「ぶっ飛びやがれェェェェェ!」
カイトの叫び声と同時に、巨大な風の刃がチンパに迫り、命中した。
「キャァァァァァァァァァァ!」
攻撃を受けたチンパは吹き飛び、木の中に入ってしまった。吹き飛んだ時、鋭利な木の枝がチンパの腕や足に刺さったり、かすったりしたため、多数の切り傷を作ってしまった。大きな木に激突したチンパは、深くため息を吐いて魔力を開放し、治療を始めた。
こりゃーまいった。これだけ強いとは思ってもいなかった。楽しいけど、確実に倒さないと。
そう思ったチンパだったが、カイトは刀を持ってチンパに接近していた。
「へぇ、治療中のレディに接近して、攻撃を仕掛けるつもりなのね」
「さっき、俺が言った言葉を忘れたのか? 俺は相手が女だからって、容赦はしないって」
カイトはそう言って、刀を振るった。
やられた。
チンパは目をつぶってこう思った。だが、時が少し流れてもチンパは痛みを感じなかった。目を開けてカイトの顔を見ると、焦っているように見えた。
「私は運がいいみたいだね。上の木に剣が当たって、引っかかったみたいだね」
「グッ!」
チンパの言葉を聞き、カイトはしまったと思うような顔をした。その直後、チンパは巨大な火の弾をカイトの腹に向かって放った。
激しい爆発の後、カイトは後ろに吹き飛んだ。攻撃を受ける前に魔力を開放して体の防御力を高めていたが、それでもダメージを負ってしまった。
「クッ……服がボロボロじゃねーか」
カイトは腹の部分が丸見えになり、黒焦げになった服を見てこう言った。その直後、上からチンパが棒を構えて落ちてきて、カイトに上乗りになった。
「運がないわね。これで、私の勝ちね」
そう言うと、チンパはにやりと笑った。だが、カイトはため息を吐いてこう言った。
「勝ったと思ったのか? 悪いな、この戦いは俺の勝ちだ」
カイトはそう言うと、左手をチンパに向け、指先から風の矢を発した。カイトが攻撃を行う元気があることを察しできなかったチンパは、風の矢をかわすことはできなかった。攻撃を受けたチンパは後ろに倒れ、苦しそうな声を発した。
「ガァ……うがァァァァァ……」
「その様子だと、さっき放った矢が腹を貫いたようだな。これで、あんたは動けない」
「う……その通りだよ……」
「ちょっと失礼」
そう言うと、カイトはチンパの服やズボンのポケットを探り始めた。驚いた声を上げたチンパだったが、それに構わずカイトはポケットを調べ続けた。
「やっぱりあったな。イコルパワー」
カイトはイコルパワーが入っている小さくて頑丈な瓶を見つけ、それを地面にたたきつけるように投げた。地面に激突した瓶は音を発しながら割れ、中に入っていたイコルパワーが地面に流れた。
「あーあ……私の最終兵器も使えなくなっちゃった。もう、戦えないわ」
「それじゃ、俺の勝ちってわけだな」
カイトはそう言うと、持っていた結束バンドでチンパの手足を縛り、身動きができないようにした。戦いを終えた後、カイトはその場で座り、コスタとケアノスの戦いが終わるのを待った。
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