戻ってきた英雄
シチボとのふざけた戦いに勝利したカイトたちは、攻撃を受けてボロボロになったシチボからメダルをもらった。
「これが俺の守メダルだ。お前たちのようなノリのいい奴らに、渡したかったんだ」
「ありがとう。俺ら、ノリがよかったのか?」
「ああ。同じタイミングでこの遺跡に入ってきた連中よりもな。あいつらは殺意を放っていたから、おっかなくて悪い奴らだってすぐに分かった。だから、ここで処分した」
シチボはあごをかきながら、カイトにメダルを渡した。シチボからもらったメダルを見て、カイトはすぐにセアンに渡した。
「これでこの遺跡から戻れる。村の人たちは俺たちが戻ってくるか不安だと思うから、すぐに戻ろう」
「そうね。その前に……カイト、ズボンか何かを……」
ケアノスは顔を赤くして、目を隠しながらこう言った。戦いが終わったため、安堵の気持ちだったカイトは、自身がパンツ姿なのを忘れていた。
「おわっ! そうだった。なぁ、ズボンはないか?」
「ズボンはないが、スカートはある」
「何でだ!」
「趣味だ!」
シチボの返事を聞いたカイトは、呆れてため息を吐いてこう言った。
「仕方ない。魔力でどうにかする」
「頑張ってね、カイト」
コスタはうなだれるカイトの肩をたたき、こう言った。
村の人たちは、カイトたちが無事に戻ってくるかどうか、不安で遺跡の方を見ていた。しばらくすると、見張り台にいた男性が大声でこう言った。
「戻ってきた! あの子たちが戻ってきたぞ!」
この言葉を聞き、村人たちは驚きや歓喜の声を上げながら、カイトたちの帰りを待った。数分後、カイトたちが村に戻ってきた。
「おお! あの遺跡から戻ってくるとは!」
「あの遺跡の中で、何があったのか教えてくれ!」
「あのクソみたいな海賊はどうした? あいつらはどうなったんだ?」
村人たちがカイトたちに近付いて、疑問の声を投げつけた。セアンは笑いながら、村人たちにこう言った。
「とりあえず休ませてください。それから、疑問に答えるから」
セアンの言葉を聞いた村人たちは、そうだなと言いつつ、村の宿屋まで案内した。
村の宿屋に到着したカイトは、すぐに開放していた魔力を収め、急いでズボンを手にした。
「これでようやくパンツ姿から解放される」
「えー? 私はもう少しカイトのパンツ姿を見たかったんだけどなー」
バカなことを言ったセアンに対し、ケアノスは頭を叩いた。ライアは荷物の整理をし、外を見てこう言った。
「今日の夜は皆にいろいろ話すとして、いつ次の島に行くの?」
セアンは少し考え、ライアにこう答えた。
「早くて二日後かなー。いろいろと支度もしたいし、次にどの島に行くか決めないと」
「次の島……キータマ島かシブヤ島かのどちらかね」
ラージュの言葉を聞き、セアンは頷いた。
「ここから近いのはキータマ島。もしかしたら、ブラッディクローの連中が先にこの島にいるかもしれない」
「それは、シブヤ島に向かうとしても、同じことね」
コスタがこう言うと、セアンは頷いた。
「どちらにせよ、ブラッディクローの連中がいるかもしれない。まぁ、私たちにしたらあいつらを潰せるから好都合だけど、とにかく次にどっちに行くか決めよう」
その後、カイトたちは次の目的地について話をした。話し合いの結果、次に向かうのはキータマ島に決まった。
「よし。次の目的が決まったなら、休んでから動こう」
と言って、セアンはカイトを抱きしめつつ、ベッドの上に転がった。いきなりセアンに抱き着かれつつ、ベッドの上で横にされたため、カイトはかなり動揺した。
「せ……セアン! いきなり抱きしめてベッドの上で……」
「さっき、カイトの全裸を見たせいか、まだムラムラするんだよねー。ちょっと抱かせてー」
セアンは暴れるカイトを無理矢理抱きしめ、動きを封じた。恥ずかしさのあまり、カイトはセアンをどかそうとしたのだが、セアンの力はカイトの予想以上よりも強く、なかなかセアンの両腕両足から逃れることはできなかった。
「むっふふー、覚悟しなよ、カイトー。私たち、まだ未成年とはいえ、一年経ったら大人の仲間入りだよー。フライング気味でチョメチョメしても、罰は当たらないと思うよ」
「今はチョメチョメするより大事なことがあるだろうが!」
カイトの言葉を聞き、セアンは動きを止めた。
「チョメチョメするより大事なことって?」
「ブラッディクローを倒すことだよ。俺も男だ。セアンみたいな子に好かれるのは嫌じゃない。だけど、それは……その……まだブラッディクローがいる。そいつらがまだいる状態でやるのは……もし、やるとしたらあいつらを倒してからだな……」
「カイトってば真面目だねー! そんでもって、スケベだねー!」
カイトの言葉を聞いたセアンは、目を輝かせながらカイトを抱きしめた。再び抱かれることになったカイトは、苦しそうに腕を上げながらコスタたちに助けを求めた。
「誰でもいい……助けてくれ……」
カイトは苦しそうにこう言ったが、コスタたちは動かなかった。もしかしてと思い、カイトはコスタたちの顔を見た。コスタたちの顔は、少し赤くなっていた。
まさか、ブラッディクローを倒したらあれこれするって言葉を真に受けたのか?
カイトはこう思いながら、無理矢理コスタたちに近付いた。コスタたちに話しかけようとしたカイトだったが、その前にコスタがこう言った。
「ねぇカイト……ブラッディクローを倒したら……セアンだけじゃなくて私にも……」
やっぱりそうか。
カイトはそう思いながら、コスタの言葉を聞いた。カイトは自分が言った言葉だから、行動しないと考え、こう言った。
「分かった。皆一緒に愛してやる!」
その言葉を聞いたコスタたちは、嬉しそうな顔になった。その瞬間、扉が開き、宿の主人が顔を見せてこう言った。
「若いから張り切るねぇ。これ、必ず使いなよ」
主人はそう言うと、店の中に何かを入れて扉を閉めた。カイトはそれを手にした。それは、夜の大人の時間の時に使うゴムだった。
「なんつーもんを入れてんだァァァァァァァァァァ!」
宿の中から、カイトの叫び声が聞こえた。
どこかの海にて。ガーティブは自分の船の、自分の部屋にいた。
おかしい、ネクラレンから連絡が入らない。
そう思ったガーティブは、最悪な状況になったと考え、ため息を吐いた。その時、机の上のパソコンから、メールの着信音が響いた。ガーティブはすぐにパソコンを動かし、メールを見た。
嫌だなぁ。また幹部の会議があるのか。面倒だ。
そのメールは、今すぐに幹部による会議が行われると書いてあった。ガーティブはため息を吐きつつ、会議の支度を行った。
「おっ、ガーティブか。今回は支度するのが速かったじゃないか」
と、声を出したのはリラゴだった。カイトはパソコンに取り付けてあるカメラを見ながら、口を開いた。
「タイミングよく、自分の部屋にいましたから。それで、ロスさんはどうしましたか?」
「どうせいつも通り、遅刻してくるよ。そもそも、あいつがメールを見ているかどうか分らんし」
「今回はちゃんと見たから安心しろよ」
声を出しながら、ロスが会議に参加した。予想より早くロスが現れたことを察し、リラゴは驚いた表情をした。
「珍しいね。あんたが速く会議に参加するなんて。いつもは女を抱いているから送れるくせに」
「今の状況で女を抱く余裕はないよ。本当は抱いて抱いて抱きまくりたいけど」
「珍しく真面目に仕事をしてたんですね」
ガーティブの言葉を聞き、ロスはため息を吐いてこう言った。
「真面目にやんないと、あの人に殺されるからね。それで、今回の会議の内容は?」
ロスがこう言うと、リラゴはパソコンのメールボックスを開いて答えた。
「ボスからの連絡だ。ドンパチ島のメダルが、ピラータ海賊団に取られたようだ」
この言葉を聞き、ガーティブはネクラレンから連絡がこない理由を把握した。
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