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シチボの悲しい悲しい昔の話


 作者より読者の皆様へ。今回の話の最初の方はシチボの視点による一人称でお送りします。




 俺は昔、ただの石ころだったんだよ。そこら辺に落ちてるただの石ころさ。他の石ころと違うのは、意志を持っていたんだ。石だけに。なんつって。意志を持っていたからか、俺は自由に動きたい、自由にふざけたいと願いを持っていたんだ。だけど、ただの石ころがそんな夢を持っていても、動くことはできなかった。俺は石。誰かに蹴られ、子供の遊び道具にされ、挙句の果てには川か排水溝に落ちて底で過ごし、流れて他の石にぶつかり、削られまくって跡形もなく消滅するだけの運命だと思っていたんだ。


 そんなある日のことだった。その日は雨雷が酷い日だった。ぶっ壊れたシャワーのように雨は降り、下痢便のように雷が落ちまくっていた。俺はなんて日だって思っていたよ。その時だった、雷が俺の上に落ちたんだ。それがきっかけかどうか……まぁ、それがきっかけだろうな。何故か知らないけど、俺は人になったんだ。


 それからは、いろんなことをしまくったさ。モンスターを倒したり、悪い連中を倒したり、風俗街で三日三晩ぶっ通し遊んだり、ヨガを極めて口から火を出せるようになったりだ。そんなある日、俺は一人の女と出会ったんだ。その女の名はヒデブス。顔はギャグマンガに出てくる酷い顔の女だけど、性格は真っ白なキャンバスのように美しい人だったんだよ。その性格を知って、俺はその女に惚れちまった。


 それから、俺はヒデブスと一緒に過ごした。買い物をするのも、映画に行くのも、風呂に入るのも、トイレに行くのも、銀行強盗するのも一緒だった。その時の俺は幸せだった。彼女がいれば、俺の人生は最高だと思っていた。


 その日は突然やってきた。俺とヒデブスは紛争地、キャオスで火事場泥棒をしていたんだ。金持ちの家を漁っていると、突如兵隊が入ってきたんだ。


「クソッたれ! 革命軍の連中がここを嗅ぎつけやがったか!」


 兵隊が入ったことを察したヒデブスは、金銀プラチナ財宝が入った袋を俺に渡し、近くにあったアサルトライフルを手にしてこう言った。


「私があいつらを始末してくる! あんたはそれを持って逃げな!」


「ダメだ! お前を一人、こんな所に置いて逃げるわけにはいかない! 俺も戦う!」


「バカ言ってんじゃないよ! ここは誰かが一人、犠牲にならないと助からない!」


「だったら俺が犠牲になる! 俺は元、石だ! 意志を持った石ころだ! 体は頑丈、心はガラスハート! あいつらが放つ弾丸を弾き返すことがたぶんできる!」


「あいつらの弾丸は石を貫通するほどの威力がある! あんたの体じゃ、太刀打ちできない!」


「だからって、お前が犠牲になるなんて……」


 俺はこう言うと、ヒデブスは俺の方を見てニコッと笑ったんだ。


「私は不死身だよ。あんな連中に殺されるタマじゃないよ」


 ヒデブスがそう言うと、兵隊の連中が攻撃を仕掛けてきたんだ。俺は持っていたピストルで反撃しようとしたが、ヒデブスは俺を止めた。


「そんなちっこい銃であいつらを始末できるわけがないじゃない! あいつらは高性能のアサルトライフルを持ってるんだよ!」


「だけど」


「早く逃げな! 私があいつらを始末する、後で合流するわよ」


 ヒデブスはそう言うと、兵隊の方に振り返ってアサルトライフルを乱射した。俺はヒデブスの言う通りに、袋を持って逃げた。


 後ろから聞こえるのは銃声と、兵隊たちの悲鳴。ヒデブスが放った弾丸が命中しているようだ。俺は音が聞こえなくなるまで、とにかく走って逃げた。しばらく逃げた俺は、事前に安全地と決めた場所に移動し、呼吸を整えていた。しばらくここで待てば、ヒデブスが戻ってくる。俺はそう思い、ずっと彼女の帰りを待っていた。だが、時が流れても、ヒデブスが俺の元に帰ってくることはなかった。




 ここまでシチボの話を聞いていたカイトたちだったが、あっけらかんで滅茶苦茶な話を聞いたせいで、何てコメントをしたらいいのか分からない表情をしていた。


「あの話……全部嘘だよね」


「ああ。確実に嘘だな」


 セアンとカイトは小声でこう話をしていた。カイトたちが呆然をしていると、シチボはハンカチを取り出して涙を拭いた。


「お前たちに分かるか? 想い人を待っている俺の気持ちが……」


「ま……まぁ、何となく分かる気がする……」


 カイトは呆れながらこう言った。その時、シチボの飛び蹴りがカイトの顔面に命中した。


「嘘じゃボケェェェェェェェェェェェ! 全部うっそでェェェェェす!」


 シチボはカイトたちに向かってバカにするような顔でこう言った。その言葉を聞いたライアは、大声でこう言った。


「ちょっと待ってよ! 今回の話のサブタイトルは悲しい悲しい昔の話って書いてあったよね? 全部嘘ってサブタイトルの意味がないじゃない!」


「そんなの俺の知ったことかァァァァァァァァァァ!」


 そう言いながら、シチボは両手にアサルトライフルを持ってカイトたちに向かって乱射し始めた。カイトとケアノスがバリアを張り、飛んでくる弾丸を防いだ。


「滅茶苦茶だよあの人! あのアサルトライフル、どこから取り出したのさ!」


「考えたらダメよライア。あの人のやることは私たちが知る常識の範囲を越しているわ」


 混乱し始めているライアに対し、ラージュがこう言った。カイトはシチボの攻撃が終わるのを待った後、刀を持って飛び上がった。


「こうなったら一気に終わらせてやる!」


 そう言って、カイトは渾身の力を込めてシチボに斬りかかった。カイトの刀はシチボに命中したのだが、カイトは手ごたえを感じなかった。


「な……何だ今のは?」


 カイトは目の前のシチボを見ると、そこにはハズレと書かれた紙が貼られているシチボの人形があった。しかもそこから、時計の音が聞こえるのだ。気になったカイトは人形を裂き、中を見た。そこには時限爆弾があった。


「嘘」


 カイトがこう言った直後、時限爆弾は大爆発を起こした。


「カイトォォォォォォォォォォ!」


 セアンはカイトの名を叫んだ。爆風はセアンたちの髪をなびかせ、床の破片を飛ばした。煙が晴れると、そこには黒焦げになり、上半身裸になって爆発アフロになったカイトが倒れていた。


「カイト、こんな変な姿になっちゃって……」


 セアンとコスタは急いでカイトの元へ近づいた。カイトは気を失っているが、心臓は動いていた。


「変な姿になってるけど、急いでラージュの元へ戻るわよ」


「早く戻りましょ! でないと、カイトが死んじゃうわ! 早く早く!」


 と、セーラー服を着て、おかっぱのカツラを被ったシチボがセアンとコスタを急かすようにこう言った。イラッとしたセアンとコスタは裏拳をシチボの顔面に命中させ、後ろに吹き飛ばした。


「ひっどーい。ぴっちぴちの女子高生の顔面に裏拳を叩きこむなんて、常識じゃありえなーい」


「その気持ち悪い衣装を脱げ! そしてその気持ち悪い言葉を止めろ!」


 苛立ちが限界に達したコスタは、スナイパーライフルをシチボ向けて乱射した。弾丸はシチボの体を貫いたが、シチボの体に穴が開いただけで、ダメージはなかった。そんな中、シチボは優雅にコーヒーを飲み始めたのだが、穴が開いた箇所からコーヒーが流れた。


「んもー、穴が開いたからコーヒーが飲めないじゃないのー」


「あんた……その口一生動かないようにしてやるわよ……」


 コスタはリロードをしながらこう言った。そんな中、ラージュはセアンが連れてきたカイトの治療をしていた。


「これで大丈夫だと思うけど……あれ、いつの間にか髪型が戻ってる」


 ラージュはカイトの髪を見てこう言った。セアンは怒り狂うコスタと笑いながら弾丸をかわすシチボを見て、どうやってあのふざけた野郎を倒そうか考えていた。だが、その答えを見つけることはできなかった。


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