炎と情熱は厚く燃え上がる
セアンの方の戦いは終わった。ライアはナイフを振り回しながら察した。ライアと戦っている中年の女性もそのことを察し、悔しそうな声を上げた。
「キィィィィィ! よくもメケラーモを殺したわね!」
「殺したわけじゃないよ。あいつは自爆したんだよ。自分が発した水のせいで滑らせて、奈落の底へ真っ逆さま」
「どちらにしろ、殺したのはあんたの姉だということは変わらないよ!」
「理解しないおばさんだなー、私らは絶対に人は殺さない!」
ライアはそう叫びながら両手のナイフを同時に振るった。中年の女性は右足に炎を発し、ライアの攻撃を防いだ。
「グッ……グググ……」
「重い一撃だねぇ。そろそろ本気を出して戦わないと、やられっちまうねぇ」
中年の女性は後ろに下がり、魔力を解放した。その直後、ライアは異様な熱さを感じた。
「熱い……何、これ?」
「私の魔力は火。そして戦いのスタイルはダンス! ネクラレンの船員は私のことをこう言っているよ、熱き炎のダンサー……シェイムってねぇ!」
シェイムはそう言うと体を回転させながらライアに襲い掛かった。シェイムの動きを見て驚いたライアは咄嗟に防御の態勢を取った。だが、その選択は間違えていた。コマのように回るシェイムの攻撃は威力が高く、動きに合わせて動くシェイムの炎は鋭い剣の刃のようにライアの腕を傷付けた。
「ウグッ!」
「半端な防御じゃ私の炎に斬られるよ!」
「何か……言ってることおかしくない?」
「おかしくないさ。私の炎は相手を燃やし、時に相手を斬る! 何十年も戦い続けたら、こうなるのさ!」
と言って、シェイムは左足のかかと落としでライアを攻撃し、ライアの体勢を崩した。
「まだまだ尻が青いんじゃないかい?」
小さく悲鳴を上げるライアに向かってシェイムはこう言うと、右足でライアを蹴り飛ばした。攻撃を受けたライアは地面を転がったが、しばらくして立ち上がり、口の中の血を出した。
「やるじゃないの、おばさん」
「キィィィィィ! おばさん言うな! 確かに年齢は五十を超えているけど、私はまだまだ若いよ!」
「五十を越えたらおばさんって言うか、おばあさんじゃない? ま、あんた敵だしどうでもいいや」
「どうでもよくないわ! 見た目は三十半ばって周りから言われてるんだよ! 私はまだまだピッチピチだよ!」
「三十半ばって言わせてるんじゃない? 強いからって手下の人に圧をかけるもんじゃないよ。人望なくすよ」
「うるさいガキだねぇ! 腹立った、焼いて裂いて殺してやるよ!」
シェイムは怒号を発しながら魔力を解放した。ライアは口元の血を拭い、挑発に成功したことを心の中で喜んだ。
ライアの挑発を受けたシェイムは、魔力を解放しつつ、派手に動きながらライアに攻撃を仕掛けた。ライアはシェイムの動きを見て、確実に攻撃をかわしていった。
「逃げるだけかい? 私を怒らせておいて逃げるなんてみっともないねぇ」
「みっともないのはおばさんだよ。安い挑発を受けて怒るなんて、精神面がまだまだ幼い証拠だよ。男の人にモテたければ、もう少し大人になることが必要だよ」
「ガキに説教はされたくないねぇ!」
シェイムは叫びながらライアに向かって左足の回し蹴りを放った。ライアは右手のナイフでシェイムの回し蹴りを防御し、左手のナイフでシェイムを攻撃しようとした。
「フンッ!」
攻撃がくると察したシェイムは、魔力を解放してライアを吹き飛ばした。吹き飛ばされたライアは飛ばされてすぐに態勢を整えたが、自身に向かって迫るシェイムを見てナイフを構えた。
「とっととぶっ殺してあげるよォォォォォ!」
「怒るとしわが増えるよー」
ライアの声を聞いたシェイムは、動きを止めた。
「しわが増える? うるさいんだよクソガキがァァァァァァァァァァ!」
「しわが増えるって言っただけで怒るなんて……歳を取ったら怒りっぽくなるのは本当らしいね」
呆れたようにライアはこう言った。そんな中、シェイムが上空からライアに襲い掛かった。
「死ねェェェェェェェェェェ!」
シェイムは叫びながらライアに向かって飛び蹴りを放った。ライアはシェイムの飛び蹴りに合わせて、ナイフを構えて飛び上がった。ナイフの刃はシェイムに命中し、深く傷付けた。
「んがっ!」
攻撃を受けたシェイムは情けない声を出し、体勢を崩して地面に落ちた。ライアは空中で魔力を解放し、ナイフを振るって衝撃波を放った。
「ぐ……クソッ!」
起き上がったシェイムは、ライアが放った衝撃波を対処しようと考えた。だが、考えをまとめることができず、衝撃波を受けた。
「これで終わり……な、わけないよね」
衝撃波のせいで発生した砂煙を見ながら、ライアは呟いた。その直後、シェイムは魔力を解放して砂煙を吹き飛ばした。呆れた表情をするライアを見て、シェイムは怒りの形相を作った。
「こぉんのガキがァァァァァ! 年上を愚弄するもんじゃないよ!」
「愚かなのはあんたの方じゃない? 年上だからって偉いもんじゃあるまいし。そろそろ降参してよ。私、まだ本気を出して戦ってないからさー。もし、本気を出したら……おばさんがあっという間にやられるよ」
この言葉を聞いたシェイムの怒りは再び爆発した。
「このガキがァァァァァ! この身が朽ち果てても、絶対に殺してあげるよ!」
「無駄なのに」
シェイムは叫び声を上げながらライアに襲い掛かった。シェイムは全身から炎を発し、再びライアに襲い掛かった。無数の拳と蹴りがライアを襲ったが、ライアはその攻撃の動きを読み、全てかわしていた。
「クソッ! どうして当たらない!」
「ぱっと見で分かる動きだからね。単純すぎるよ、動きが」
ライアはそう言うと、後ろに下がってナイフを構えた。シェイムは後ろに下がったライアを睨み、走って追いかけた。
「逃げるんじゃないよ、クソガキィィィィィ!」
「下手に接近しない方がいいのに」
ライアはそう言うと、接近したシェイムに向かってナイフを振るった。攻撃することしか考えていなかったシェイムは、ライアの攻撃をかわすことができなかった。
「が……はぁっ……」
攻撃を受けたシェイムは、攻撃の反動で宙に舞い、しばらくして地面に倒れた。
終わった。
ライアは呼吸をしながらそう思った。渾身の一撃を込めた攻撃は、シェイムに命中して大きなダメージを与えたのだ。もう動かないだろうとライアは思ったが、シェイムは体中を震わせながら立ち上がった。
「まだやるつもり?」
ライアは呆れたようにこう言ったが、シェイムは言葉を返さなかった。ライアはナイフを再び構えてシェイムを睨み、どう動くか様子を見た。
「勝った気で……いるんじゃないよ……クソガキ! 戦いはまだ……終わっちゃいないよ!」
シェイムはそう叫んでライアに向かって走り出した。その時だった。シェイムの足元からスイッチが押される音が響いたのだ。その音を聞いたシェイムは動きを止め、ライアは何かが起こると察して周囲を見回した。すると、シェイムの横から巨大な拳のオブジェが飛んできて、シェイムに命中した。
「ンベッガ!」
シェイムは情けない声を上げながら、巨大な拳のオブジェと共にどこかへ行った。しばらくして、何かが激しく衝突する音が響いた。その音を聞いて、ライアは察した。シェイムに命中した巨大な拳のオブジェはそのままどこかへ飛んで行き、壁に激突したこと。そして、シェイムはオブジェと壁に挟まれて命を落としたことを。
「情けない最期だったね……」
ライアは魔力を収めつつ、ナイフをしまった。それからしばらくして、セアンがライアの元へ駆け寄った。
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